いえ、俺です。天使が悪魔にジョブチェンジ
「・・・どうしてこうなった」
最高ベリーナイスガイな脳をフル回転して考えてみる。
「・・・やっぱり親父が悪いんじゃね」
「そうね、その親父さんが悪いわ!」
「ですよね! やっぱり・・・って、え?」
隣を振り向けばニコニコしたお姉さんがブランコを漕いでいるではないか
「あの・・・聞いちゃってました」
「ええ。聞いちゃまずかったかしら」
「いえ、そのまずいってことはないですけど、恥ずかしいというか・・・」
やっべー、見ず知らずのお姉さんと会話しちゃってるぅうう
というか、いつの間に隣にいたんですかこのお姉さんは?!
「あらあら、うふふ」
若干のほほ~んとした感じでこちらを見つめてくる。
ヤバいこれが恋か? 恋なのか? 遂に始まっちゃうのか?
「ああ、あの!? お、お間替えは」
や、やっべー、噛んじゃったよ! お間替えってなんだ? 模様替えかよ! 何聞いてんだよ!?
もう駄目だおしまいだ! とりあえず親父を恨もう・・・そうしよう
「ふふ、私はね、 桜っていいます。よろしくね良平君」
つ、通じていただと!? 何だ! この人は天使なのか!? いや天使に違いない!?
「よろしくお願いします。ぐへへ」
「うふふ、面白い子ね」
若干、顔がお見苦しい感じになっているだろうが天使なら許してくれるに違いない。
そういえば、天使といえば、マイエンジェルこと櫻子はどうしているだろうか?
親父に襲われてはいないだろうか? ・・・・心配になってきた。
今すぐ助けにいかなければ! だが、どうしよう。家に入る手段がない・・・
「どうかしたの?」
おおっと、困っている俺の相談を聞いてくれるというのか!
この人は神か! 神なのか!? 天使を通り越して神々しく見えるぞ!!
「いえ、家にいる妹が親父に襲われてないか心配になってきちゃいまして」
「・・・どういうことかしら?」
おーっと、天使のようなご尊顔がどんどん崩れていくぞー、どういう事だー?
神々しいオーラがだんだん黒みを帯びているぞー。見間違えかー?
「行くわよ、良平君」
「え、え! 行くって、どこへ!?」
「良平君のお家よ・・・。うふふふふ」
こ、怖い、黒いオーラしか見えなくなったぞー。そもそもオーラってなんだ?
・・・・・どうしようお家帰りたい。
「だからこれから行くのよ・・・うふふふふ」
心が読まれたっ!? こ、怖い、この人は超能力者なのか!?
「怖がらなくていいのよ、ほら行きましょう」
◇◇◇
首根っこを掴まれ、無理やり家までの道案内をさせられた。
俺はもちろん道中ずっと抵抗した。
しかしあの悪魔の微笑みが、俺の首根っこと心を掴んで離さなかった
「ここが家ですよ・・・はぁ~」
家の前に到着、しかし俺の顔は冴えない。
けして不貞腐れているわけでない、ただ自分って何だろうと考えているだけだ。
あえて言おう。俺は高校生だ。もう16歳なんです。
なのにこの扱い・・・何?
「俺は捨てられた猫か何かかっー!!!」
「大きな声を出したら、ご近所に迷惑でしょ? うふふふ」
「ひぃぃーっ!!」
「違うでしょ? ニャーと鳴きなさい。うふふ♡」
どうやら、俺は猫扱いらしい。
悔しいので、ニャーと鳴くかわりに「うわ~ん」と泣いた
「なんだなんだぁ~、家の前で騒がしいなぁー」
「助けてくれよ~親父ぃ~」
「おいおい、そんなに泣いちゃって~。ちゃんと反省したみたいだな」
へっ! 良い顔して見下しやがって、見てろよ~今からこの悪魔がお前に裁きを下すからな!
って、あれ? 痛い、首が物理的に痛い、ちょ、桜さん! 相手はあっち! あっち!
「ふふふ、誰が悪魔かしら・・? うふふふ」
やっぱ、心読まれてるぅぅうー!! ごめんなさい。ごめんなさい!
分かればいいのよ? と言わんばかりに首の痛みから解放される。
「って、あれ? 良平。お前母さんを迎えに行ってくれていたのか?」
「え?」
何を言ってんだこの親父って顔をしながら桜さんの方へ視線を移すと
「言ってなかったかしら?」と言わんばかりの顔でこちらを笑っている
「どゆこと?」
ぽかーんとしていると桜さん? ニャー間違えた、ニュー母親? の手が親父に伸びる
「ギャアァアアーッ!!いきなり何をするんだ桜さんぅぅ」
「龍平さん? 櫻子ちゃんを襲ったって本当ですか?」
「何の話だっ!!ぁあああ」
おお!見事なアイアンクロー! 表情といい、醸し出すオーラといい、まさしく悪魔の所業
さしずめデーモンハンドってとこだぜっ! それにしても痛そうだなー。
そんな光景をボケーっと見ているとおやおや、ドアの向こうから誰かの近づく音が聞こえるぞ!
「騒がしいですよ。いい加減にしてください」
親父の顔面を捕らえる腕の下をくぐるようにマイエンジェル櫻子ちゃん登場!
さながら、魔界の門から召喚された堕天使か何かかな?
「おお、櫻子! 無事だったか?」
「気安く話しかけないでください。気持ち悪い」
おぉっと、割と真面目に心配してたんだけどなー。ははは
まあ、親父の顔が気持ち悪いって言ったんだろ。変形しかけてるし、ありゃキモイ
「ギブ! ギブ! 桜さん! ギブアッープぅぅ!!」
「うふふ、仕方ないですね」
「はぁ、はぁ・・・死ぬかと思ったって・・・」
「うふふ、本気だった死んでましたよ」
えっ? あれで本気じゃないの? あれ以上があるの? マジかっ!
・・・・・怒らせないようにしよう! 俺はまだ死にたくない
「お母さん、今までどこをほっつき歩いていたんです?」
「ごめんね~櫻子ちゃん。ほらお母さん方向音痴だから迷っちゃって~」
「だから、あの時一緒に行こうって言ったんです。それなのに・・・」
「ごめんね~、でもこうして良平君にも会えたから結果オーライ? じゃない」
「・・・・まあ、いつもの事なので、気にはしませんけど」
察するにどうやら、迷子の桜さんをたまたま俺が救出しちゃったわけか!
なるほど、つまり、これは櫻子の好感度は爆上がりなのでは?
「いやいや、当然のことをしたまでですよ!」
「本当に助かったわ~」
「はぁ?」
おや、なぜ「はぁ?」などと悪態を吐いているだい? マイシス櫻子よ
もしや親父の歯が抜けかけていることを言っているのかな
さっきのアイアンクローは確かにすごかったしな! きっとそうに違いない
「いえ、違いますけど。貴方が気持ち悪いことばかり言っているので」
「この親子は心を読むプロなのか!? 読唇術の使い手なのか!?」
「読唇術って口の動きを見るから心を読むとか関係ないですよね?」
「あと、さっきから思っていること全て口に出てますよ。気持ち悪いです」
「・・・マジで?」
「マジです」
即レスかいっ!
おかしいな、口に出してないと思うんだけどな~。ホントは心読んでんじゃね?
「あらあら、もう仲良しさんなのね」
「はい! もちろん!」
「違いますっ!!」
あっれー、おかしいな~ここハモると思ったんだけどなー
「だから口に出てますってば! ホント気持ち悪い」
「はぁっー。もういいです。」
「ところで、そこで転がっている龍平さんは放置したままでいいんですか?」
「ああ、いいよ。明日粗大ごみの日だからついでに捨てとこう」
「・・・・そうですか」
「ちょっとこの息子たちひどすぎないか!!?」
「うふふふ」
隔して俺の新しい家族が全員揃ったのだが、はてさて、どうなるのだか
「とりあえず家に入りませんか? 寒いです」