いえ、呼び出しです。オーマイガー世知辛い
「仲直り出来たんだ! 良かったね良平君!」
「あぁ~! 本当に良かった!」
次の日、俺は鷹志に昨晩の出来事を自慢げに話した。
「見ろよ~このクッキー!」
「それがさっき言っていたクッキーだね」
袋に1枚だけ入ったクッキーを鞄から取り出し自慢げに見せる。
もしかして僕の為に1枚と取っておいてくれたの? と検討違いも甚だしい馬鹿なことを言ってきたので、「うんなわけあるかー!」と再び鞄の中に仕舞った。
「このクッキーは俺の宝物だからな! 誰にも譲らん!」
「発言だけ聞くと小学生みたいだね……」
「妹の愛の結晶! 永遠に!」
「いや、食べないと腐っちゃうよ……」
「あっ! 先生が来たね!」
担任教師の登場で会話が終わる。間の悪い、俺はまだ話足りないというのに
「HRの報告は以上です。それと新谷君、後で職員室に来るように」
「えっ?」
「良平君もしかして……」
「オーマイガー……」
◇◇◇
HR終了後、職員室。担任教師、山崎 立夏先生が困り果てた顔で待ち受けていました。
「来ましたね」
「早速ですが本題です」
「昨日の昼休みに女生徒に性的乱暴を働いたのは本当ですか?」
やはりその件か……。どうしよう、事実ではあるが、あれは言わば不慮の事故であって故意ではない。どう言い訳したものか、いっそのこと正直に言うか? だが信じてもらえるだろうか。
「はい……本当です」
「そうですか……本当でしたか……」
「でも、あれは不慮の事故でして決して!」と言ったところまでで遮られる。
「ともかく君は特に問題の多い生徒ですから気を付けてください!」
「俺、そんなに問題を起こしてますかね……」
「教室で度々奇行を行っていますよね?」
そういえば妹愛が溢れて教室で少しハッスルし過ぎた時があった気がする。
「気を付けます……」
「分かって頂けたら結構です。今日は注意だけですので、もう教室に戻っていいですよ」
「はい……、失礼します」
今後教室では妹ークは自重しなければ……と不貞腐れながら職員室を後にする。
「世知辛い……」
◇◇◇
良平が去った後の職員室。
「はぁ~、これ以上問題を起こすと庇い切れませんよ……」
「どうかしましたか、先生?」
私が頭を悩ましていると、風紀委員で頑張ってもらっている沢城 雪菜さんが声を掛けてきました。今のを聞かれていたのかしら? だとしたら教師として少し情けない……。
「いえ、少し考えごとをしていただけです」
「さっきの彼のことですか?」
「……もしかして聞いていましたか」
「すみません。不穏な単語が聞こえてきたものですから、思わず」
やはり聞かれていましたか……。さて、どうしましょうか?取り敢えず口止めはしとかないと。
「このことは内緒にしてもらえますか? これ以上問題にしたくないので……」
「それは構いません。その代わり私に彼の指導をさせてくださいませんか?」
「指導……ですか?」
「はい。女生徒に乱暴を働くなんて風紀委員として見過ごせません!」
「構いませんでしょうか?」
代わりになどと言ってきましたよ……脅迫ですか!
ですが好都合かもしれませんね。このまま彼女に任せてみて様子を見るとしましょう。
「それは構いませんが……いいんですか?」
「はい、問題ありません」
「それでは……お願いします」
「任せてください! 必ず彼を更生させてみせます!」
「それでは失礼します」
彼には少し悪いことをしましたが、これも平穏の教師生活のためです。
「頼みましたよ……沢城さん」
やる気に満ちた顔で職員室を出ていく彼女の背中にそっと呟くのでした。




