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妖精の愛し仔が笑う時

作者: 文月 譲葉

婚約破棄もの・ヒロインざまぁ系を目指したかった。えぇ、目指したかったんですが無理でした。

流行りに乗ってみたかったんや。後悔はしている。でも反省はしてない。すっきりしました。←


誤字脱字の指摘とか、感想とか評価もらえると喜びます。どうぞお気軽にエサを与えてください。


「お前との婚約を破棄するっ!!」


 どこか勝ち誇っているようにも見える顔で、私の『元』婚約者殿が言う。その隣には見慣れぬ女性。この場所に来るまでに出会った方々が3か月ほど前に転校してきた『男に媚びを売ってばかりいる男爵令嬢』が私の婚約者を篭絡したと言っていたのだが、彼女がその男爵令嬢なのだろうか?

 婚約破棄を突き付けてきた彼はこの国の第2王子。そして私はその婚約者である候爵令嬢。ま、表向きは婚約者だけど、実際は彼が私の婚約者候補だ。それを知っているのは、私と国王陛下、私の両親だけ。つまりは、第2王子……アーノルド様も知らない訳で。知ってたらこんな暴挙は出来ないだろうし。でもおかげで自由になれるわ!


「おい!聞いてるのか!?」


 アーノルド様が声を荒げた。


「あぁ。申し訳ありません。(嬉しさの余り)聞いておりませんでしたわ。それで破棄とのご判断に至った理由をお聞かせ願えますかしら?」


 アイリスは間髪入れずに答えた。


「ふんっ―――!!シラを切るつもりか!お前がマリーに数々の嫌がらせをしていたことはわかっている!」


「まぁ……そうでしたの?それで私との婚約を破棄したいと……」


 どうしよう。ここで馬鹿正直にマリー様とやらに会うのはこれが初めてだと言ってやるべきなのだろうか。……うん。嘘を吐くのは駄目よね。婚約破棄は嬉しいけど冤罪なんて嫌だもの!


 アイリスは敢えて困り顔で続ける。


「申し上げにくいのですが……アーノルド様の仰る『マリー様』とは一体どなたのことなのでしょうか?」


「何をっ!?」


 アーノルドが言葉を返そうとするが、それをぶった切ってアイリスは続ける。


「私、この学園に入学した時からずっとテストのある期間と陛下と学園側から要請があった時以外、学園には来ておりませんの。ですのでアーノルド様の仰っている『マリー様』とやらにはお会いしたことがありませんわ。……あぁ。そこにいらっしゃる方が『マリー様』なのかしら?」


 アイリスはアーノルドを見据え、言いたいことはこれで全てだと言わんばかりに朗々と言い切った。最後にはチラリと彼の傍に居る少女(マリー)に視線を送る。


「なっ……」


 アーノルドはアイリスの言葉に絶句し、隣に佇むマリーを見やる。マリーの顔は真っ白を通り越し真っ青だ。唇を戦慄かせ叫んだ。


「嘘よっ!!!悪役の癖に学園に来てないなんてありえないわっ!!!あんたは当て馬なの!悪役なのよ!!あたしが幸せになる為の踏み台なのよっ!!大人しく退場しなさいよ!!」


 豹変した彼女から精神的には勿論、物理的にも距離をとったアーノルド。アイリスはそんな彼等の様子を冷めた目で見ながら口を開いた。


「貴方方の事情はどうでも良いのですが、私も予定が詰まっておりますので失礼しますね」


 無情に言い放った。そしてそのまま転移魔法を発動しその場から立ち去ったのだった。

 残されたアーノルド、そしてマリー。マリーは目を血走らせている。正直怖い。ドン引きする。そんなマリーを見たアーノルドは顔を引き攣らせ、後退りした。


***


 転移魔法を使ってその場を立ち去ったアイリスは王宮に来ていた。


「陛下。遅くなって申し訳ありません」


 そう言って優雅に臣下の礼をとるも、許しを待たずして顔を上げ言い放った。


「私、先程馬鹿王子(アーノルド様)に婚約破棄を突き付けられましたの。マリー様とおっしゃる方と添い遂げたいらしいですわ。あの方が私の婚約者候補の筆頭であったのは存じておりますが、一体いつ候補筆頭から婚約者になったのでしょうか?私、婚約を了承しておりませんわ。そもそもです。私この国に愛着などありませんのよ?留まっているのだってこの国の近くに私の愛する『国』があるからに過ぎませんわ。けれど、今回の事は私がこの国と交わした約定に反する事です」


 アイリスは感情の籠らぬ瞳を王にむけた。淡々と告げられる第2王子の所業に王は頭を抱える。


「すまない、アイリス嬢。あれは婚約者候補から外そ……」


 王はアイリスに頭を下げる。しかしアイリスはそれすらもアーノルドにしたように途中でぶった切る。


「結構ですわ、陛下。約定により王国に留まる期間はこれで終了と致します。『国』に帰らせて頂きますね」


 そう言うアイリスは、今まで見せてきた微笑みと言っても良いのか怪しいほど微かな微笑(わら)いが嘘であったかのように、晴れ晴れと笑った。丁度その瞬間、アーノルドが部屋に駆け込んできた。初めて見るアイリスの嬉しそうな笑顔に目を見張る。


「それでは皆様、どうかお元気で」


 金茶色の髪に鳶色の瞳。アイリスが彼等を振り返る瞬間にそれらは黒へと色を変える。アイリスは自身の色の変化などには目もくれずにこやかに告げると、転移魔法を使いその場から消え去ったのであった。



***


「夜の愛し仔……」


 残されたアーノルド達は呆然とするしかなかった。魔法を使えぬよう封魔結界が張られている場での転移魔法。黒を持つアイリスはただの人間では無理な芸当をやってみせたのだから。アーノルドは己の愚行を漸く理解したのであった。


***


 アイリスがグランツェル王国から離れて数年後のこと。グランツェル王国から少し離れた国、フェルノマータ公国ではアリスと呼ばれる黒目黒髪の冒険者が活躍していると噂されている。まことしやかに囁かれるそれを、アーノルド達が知るのはまた別のお話。。。


登場人物


アイリス・フォード侯爵令嬢

悪役令嬢認定(不本意)された転生者。

前世で生きた世界はゲームがあった現代日本ではなく、今世同様ファンタジーな世界だった。

淡い金茶色の髪に鳶色の瞳をした美少女。でも本来は黒目黒髪の『夜の愛し仔(妖精から愛されたモノで存在しているだけで周りも祝福や加護が得られる)』と呼ばれる妖精に近い亜人。

元は孤児で侯爵家に養子として引き取られる。婚約者候補として国の要人やその子息が数名挙げられていた。第2王子はその中で第1候補だっただけで、彼女は不本意。むしろさっさと妖精の里に帰りたい。ふざけんなよ国王、とか思ってた。


アーノルド・レイル・グランツェル

主人公の住むグランツェル王国の第2王子。

濃い金色の髪に青色の瞳。(つまり金髪碧眼。王道だよね!)

見た目は良いが少々おバカさん。直情型とでも言いますか・・・

今回は逆ハー狙いの転生ヒロイン・マリーに骨抜きになった結果婚約破棄しようとした。駄菓子菓子。婚約者筆頭であっただけで婚約者ではない。


マリー・マクウェル子爵令嬢

栗色の髪に明るい緑色の瞳。ヒロイン(設定)らしく小動物的なかわいらしさがある容姿。(よくあるピンク色の髪と悩んだけど実際(作者が)目撃した時の衝撃が今も忘れられないので今回はやめた)

前世は現代日本の喪女。転生ヒロイン。この世界が乙女ゲームと似ていた為乙女ゲームの世界に転生したと勘違いした。実際は乙女ゲームに似ているだけの世界に転生している。

逆ハー狙い。でも1番のお気に入りは第2王子アーノルドだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ざまぁが全くない為に、結局『勘違いだったんだ』と、婚約者(候補) とマリーの二人は嬉しいだろうし、せっかくのチャンスが!と王様は ガッカリしただけで終わってしまったと思います。 ある意味、主…
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