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プロローグ~蛇足~

飛ばしてもいいけど……

わかんなくなる可能性のほうが高いっす。

byフレディー(笑)

 私は『神崎 心乃枝』女みたいな名前とかよく言われる。


 そう、この世界では……


 この世界に来る時は異世界召喚だって直感的に分かった。異世界召喚とは分かっていたが、まさか性別まで変わってるとは思わなかった。

 

 見た目は、髪が染めた様な金色で目は黒く体格は一般男子高校生のそれと対して変わらなかった。

 

 『お前は、勇者の加護を持たせるのに丁度良い魂だからな、身体もそれに合うようにしたんだ』

 

 それに……これ、どこからとも無く声が降ってくるのだ。

 

 本人は勇者の加護なんて言ってるけど私はそう思わない。

 

 オタクで根暗な私はライトノベルをたくさん読んで知っているのだ。

 

 このような意思のある能力は何時か牙を剥くと。

 

 けれど、現状ではどうすることも出来なかった。

 

 それに、現状ではこいつの言う『お告げ』って言うやつは正しいように思える。

 

 今日だってある村の近くの森で異変があった。

 

 エルフですら感知できないような異変だ。

 

 よく気付いた。と評されてもいいはずだ。

 

 だけど、どういう事か目の前の少年は私に森から逃げろと言う。

 

 まるで私が悪いというかのように。

 

 この少年は何かを知っているのだ。

 

 そう直感した。

 

 森から出てしばらくすると、森の中にいた魔物の気配が全て吹き飛んで消えてしまった。

 

 「勇者よ、お前はそこで待っていろ」

 

 ミカエルは、私なんかよりも逞しく、同じ女とも思えないような目でこちらを睨んできた。

 

 まあ、私は『元、女』だけどね。

 

 睨まれて数秒が経つとミカエルは勢い良く森へ駆け出した。

 

 ミカエルとヒカリは森に入る前の騒動で、恋仲(?)になった……なったはずだ。きっとそう。

 

 この世界のプロポーズがどんなものか知らないが、さっきのヒカリは格好良かった。

 

 元、女の私でも惚れるほどに。

 

 そう、私は惚れた。

 

 ヒカリに惚れた。

 

 だから私はこの場に残っては未練も一緒に残すハメになる。

 

 「わたし……じゃない。俺はここで仲間達の元に戻るとするよ。よろしく言っといてなライト兄弟。ふふっ」

 

 そう微笑んでレフト三兄弟に挨拶して私は仲間のところへ戻ることになった。

 

 『さっきの場所での戦闘はお前の経験値の為だったのだ。また違う場所でやり直しだな』

 

 物騒な声が頭に響いた。

 

 「経験値ね……これまた物騒だな〜ヒカリ、無事だといいな」

 

 そう呟き一人で勇者コノエは仲間の待つ都市へと向かったのだった。







 私はヒカリとユノの母親『ミノリ』です。


 夫の『コウキ』はユノを私が産んでから一年もしないで神の元へ行ってしまいました。


 ヒカリだけ家族内で見ても、種族内で見ても異端だったので周りからは大層嫌われていました。


 そんなヒカリの唯一の救いが夫のコウキなのです。


 そう、森で亡くなるまでは……




 森の偵察での事件だったそうです。


 『テンセイシャ』と名乗る戦士と一緒に森へ向かった夫はどこか悲しげな顔をしていたのを今でも覚えています。


 夫は『テンセイシャ』と名乗る戦士の知り合いだったらしく「懐かしい」「こんな所で会えるとは」などと楽しそうに言ってました。


 でも、楽しそうな姿を見れたのはその日が最後でした。


 「私のせいです。私は奴を許しません、何時かきっと仇を討ちます」


 そうテンセイシャさんは言った。


 最初彼が家にやってきた時は何のことだか分かりませんでした。


 彼の後ろには何かを引きずるように大きな袋がありました。


 「その、袋は……何ですか?」


 答えは分かった。


 彼の言葉と、この状況を見れば嫌でも分かる。


 分かってしまう。


 だが、聞かずにはいられなかった。


 「これは……コウキの亡骸です。かなり大きな魔物に襲われて一瞬でした」


 「一瞬って、コウキは、私の夫はこの村一の最強の戦士ですよ?それが一瞬って・・・・・・」


 「私も信じたくありません、だが、これは事実です。奴には意志が、確かに意思がありました」


 「意志がある魔物なんて……」


 「あいつはきっと今後成長して魔王、魔物の王となる可能性が高いです。その前に私が仕留めます。きっと仇は討ちます」


 「コウキが、本当に死んだなんて……」


 私には子供が居る。


 今も二人は家の中で待っているだろう。


 そんな時に父親がいなくなってしまった二人に泣いてる姿なんて見せられない。


 私が、私自身も強くならないと。


 「分かりました。しかしコウキの墓は子供たちには教えないで下さい。特にヒカリには、絶対にヒカリにバレてはいけません。ヒカリは、ヒカリにとってコウキはヒーローですから」


 「あなたは、とてもお強いですね。私なんかよりもずっと立派だ。分かりました、ヒカリ君には特に内緒でコウキの墓を作ります」


 「ありがとうございます」




 それから十二年、ヒカリが遂に旅へ出ることになった。


 何年か前からそんな素振りはあったが、実際に行動に移したのはこれが初めてだ。


 それも私は許した。


 ヒカリには強くなってほしい。


 それこそ、旅をして死なずに無事に入ればその力も手に入ると思っての許可だった。


 しかし、ユノまでまさか旅に出たいと言い出すとは思わなかった。


 ヒカリがミカエルさんに取られるのがよっぽど嫌だったらしい。


 まあ、ヒカリには魔力視もあるしユノを任せても大丈夫だろう。


 わたしは……少し寂しいけど何十年も帰って来ないなんてことはないだろう。


 ユノに手紙を持たせて二人は旅に出た。


 「また、無事に二人揃って帰ってきてね」


 ミノリは誰もいなくなった家の中で一人寂しく呟いた。


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