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魔物の大量増殖は、勇者のせいだ!

後半手直ししてないです。

後で変なところが見つかり次第、こっそり直します。

四話までがプロローグとなります。

 ミカエルさんが村で準備をしていた偵察班の残りを呼びに行ってから、幾らか時が過ぎてから勇者が話しかけてきた。


 「ヒカリンはあれだね、ミカエルって人が好きなんだね」


 「はい?なな、なんですとぉー!?」


 「だってぇー、どう見てもさっきのヒカリンはミカエルさんの事が好きーってオーラ出してたよー?」


 「いやいやいや、ないないない。あの人は唯一普通に接してくれるから大切ではあるけど!」


 ミカエルさんは確かに可愛いよ?


 髪は腰にまで届きそうなくらい長く、瞳の色と同じ綺麗な金色で、いつも花のような香りを漂わせていて……欠点というか、惜しい点で胸が少し無いことぐらいで後は完璧な人だ。


 完璧でも、やっぱり俺みたいな見た目のやつが隣にいて良い訳が無い。


 俺が隣にいるだけでミカエルさんの完璧な状態が崩れるのだ。


 そして、黒髪黒目と言えば魔王もそんな色をしているとか聞いたことがあるが、やっぱり魔王と一緒でも何も嬉しくない。


 むしろ最悪だと思う。


 そんな俺が、ミカエルさんの隣に居ていいだろうか……否!


 ダメに決まってる。


 ミカエルさんは困らせてはいけない。


 ミカエルさんは天然が入ってるから、困らせるととんでもないポンコツと化す。


 あのポンコツ状態のミカエルさんは見ていて辛いものがある。


 まあ、それもミカエルさんの可愛い点だが……



 あれ、俺って結構ミカエルさんのこと好きかも?



 いやいやいや、絶対にそんな事は無い!


 あってはならない、絶対に!


 とにかく!


 「俺がミカエルさんを好きになるなんて絶対に許されないことです!」


 勇者への怒りも込めた一言を、勢いよく言い終えると後ろの草むらでガサっと音がした。


 かなり大きい動物のようだけど……


 よく目を凝らして見ると、そこには涙をこらえるような悲痛を顕にした顔のミカエルさんが立っていた。


 「あ、えと。そういう意味じゃないですよ……ミカエルサン?」


 そう言うと、ミカエルさんはジェスチャーでそれ以上は言わなくても良い、と言うように手のひらをこちらに向けてきた。


 そして事の原因である勇者は……必死に笑いをこらえていた。


 「いや、分かっている。ヒカリが私のことを好きにならないことぐらいな?」


 すると、勇者は遂に我慢しきれなくなったのかゲラゲラと声を出して笑い始めた。


 「笑うな!元を辿ればお前のせいだぞ。ミカエルさん、違いますって。俺なんかがミカエルを好きになったらミカエルさんに迷惑がかかるからと思いまして……という訳です……」


 途中から気付いたけどさ、これ誤解を解くってことは自分がミカエルさんを好きになりたいって言ってるみたいになるぞ。


 そのせいで最後の方は声が出なかったし……


 さて、どうするか。


 すると、ヒカリが悩み出したタイミングを見計らっていたかのように勇者が喋り始める。


 まて、今のお前が話したら余計にどんな誤解が生まれるか分からねぇ!


 「ぷぷっ、ヒカリンはねミカエルさんのことがメチャクチャ好きなんだってさ。その事について聞いたらさっきの照れ隠しだよ。笑えるよね、ぷぷっ」


 「あ、てめ……言っちゃったし……」


 すると、先程までの顔が嘘だったかのように顔を真っ赤に染め上げるとそのまま下を向いてしまった。


 ここで、昔話何かに出てくる主人公ならこう思うだろう。


 そんなに怒る程俺に好かれるのが嫌だったのかな、と。


 だが、俺はこれでも心だけはエルフの一般男性並の頭はあるはずだと思っている。


 故にさっきの反応は照れ隠しだと分かった。


 逆にそれが照れ隠しじゃなかったら、俺は一体どうなってしまうのか想像もつかないが……


 それにそんなことを考えるよりも今は優先すべきことがある。


 目の前の森についてだ。


 異変を感じたからと言って勇者は現れたが、未だに変化一つ見られない。


 ミカエルさんに着いてきていたのか、ほかの班員もニヤニヤとこちらを見ている。


 こんな状態で森へ入ったら全滅だってありえるぞ。


 「勇者、まずお前は黙れ」


 最初の一撃は、さっきからペチャクチャとうるさい勇者に向けて発することにした。


 「ねぇ、酷くない?俺ってば仮にも勇者なんだよ?この国を救おうとしてるんだよ?」


 「酷くない!お前に好き勝手させてるとこっちの人間としての質が無くなる。そして、国も救う?俺はそんなこと頼んでもいないし、普通違う世界から来てすぐに、関係の無い国を救おうとするやついないし、仮にお前みたいなのがいても、そいつは信用出来ない。だから黙れ」


 「せ、正論だけどー。勇者って言ったらアレじゃんよー、世界を救ってちやほやされてこその勇者じゃんかー」


 「そして、レフト三兄弟。お前らが一番ありえない。偵察前に何をゲラゲラと笑ってるんだ」


 レフト三兄弟と聞いた勇者は何やら考え出すが、またゲラゲラと笑い出すと、三兄弟が下から順番に口を開く。


 「んなっ、リーダー。そりゃないよー、リーダーが素直になれないからこんなことになってんじゃないですかー」


 「そっすよー。いや、ほんとないっす。さっさと本音ぶちまければいいだけじゃんすかー」


 「そうだな、ヒカリ。お前が悪いな、素直じゃないのは時には輝いて見えるが、常にそんなじゃお前の魅力が台無しだ」


 だから、呑気すぎるって言ってんだろ?


 そして、一番上の兄が話終えると同時にミカエルさんが遠慮気味に口を開いた。


 「皆、ヒカリが悪い訳じゃない、そうではない、今の状況はヒカリの言葉でショック……を受けた、わ、わた、私がわる……うっ、うわあああー」


 すると、小さく何やら呟きながらミカエルが森の方へと駆け始めた。


 「ちょ、一人で森になんて突っ走らないでください、ミカエルさーん!」


 俺が慌てて追いかけると同時に、レフト三兄弟も続く。


 その後を追うようにして勇者が、やれやれと言いながら着いてくる。


 だが、ここで言わせてもらおう。


 誰のせいだと思ってんの!?


 「ミカエルさん、待ってください!それ以上入れば魔物が出るエリアです。落ち着いてください!」


 だが、ミカエルは慌てつつもブツブツと呟くという器用なことをしながら段々と森へ入っていく。


 このままではダメだと思ったヒカリはここである賭けに出た。


 「止まれ、ミカエル!そのまま回れ、右!」


 『言霊の術〈ことだまのかご〉』という術を使ってミカエルさんに向けて指示を出す。


 言霊の加護は大量の魔力と引換に対象となる人物を一瞬だけ操れるという優れた術だが、当然ながら自分より強いものには効果を発しない。


 ミカエルさんはエルフの中でも断然強い方だが、ヒカリの実力には敵わない。


 エルフと言えば魔法が得意な種族なのだが、ヒカリは魔力視を持っていおかげで、どんな魔法をどこに向けて放とうとしてもバレてしまい、たちまち対処されてしまう。


 しかも、ヒカリは魔力を伴う魔法なら『全て』一度見ただけでその魔法を使うことが出来てしまうのだ。


 そんなヒカリよりも、ミカエルさんが強い訳がなく言霊の加護によってあっさりと従ってしまう。


 困惑した表情をこちらに向けたミカエルさんは、何とか口を開いて微かで聞き取りづらいくらいが、声を絞りだして言った。


 「ヒカリ……お前は私に何をした?」


 ヒカリは言霊の加護をまだ使ったことが無かった。


 故にミカエルさんが分かるはずもなく、困惑している。


 「ミカエルさんが一人で勝手に森へなんて突っ走るのが悪いんです。幾らか強かろうと森で一人は危険です。本当ならミカエルさんはどこかの家に嫁いでる年なんですから自分の身ぐらい大切にしてください」


 言い終えるとまたしてもミカエルさんの顔が真っ赤に染め上がった。


 「ヒ、ヒカリ……私なんか大切にするな。お前はもっといい女性に出会える。そして、その時こそ、その人のことを大切にするべきだ。私なんかを大切にするな。あと、私が聞きたいのはそんな事じゃなく、私に何をしたのか。という事だ」


 「あ、必死過ぎて言い忘れてた。言霊の加護って言って機能完成した術の能力だよ。魔力を込めると一部の人に命令を聞かせることが出来るって言う効果があるんだ。ただ、勇者には聞かないだろうけどね」


 「まぁーあぁーねぇー、なんと言ってもチート持ちの勇者だからねー」


 「お前こそチートって理解してんじゃねぇかよ!」


 「おやおや、ヒカリンもキツイこと言うようになったね」


 ここで、大事なことだから二度目だが言わせてもらおう。


 誰のせいだと思ってんの!?


 まあ、二回とも心の中でしか言ってないけど。


 「それで、ヒカリはその術を使って何をしようとしてたんだ?術を作ったってことは使う予定があったって事だろ?」


 そう、ミカエルさんの言う通りだ。


 俺はこれを使って、明日から隠居するでなく、旅に出ようと思っていたのだ。


 ミカエルさんに旅に出るなんて言ったら絶対に俺のに付いてこられただろうしね。


 だから明日の朝まで隠しておくつもりだったのだが……


 バレたものはしょうがない。


 どうせ家族には説明しようと思ってたし、この際だからやっぱりミカエルさんにも言っておくべきか。


 「実は、俺は今日で任期を終えるじゃないですか」


 「まあ、そうだな。それがどうしたんだ……まさか、それで私に何かしようと企んでいたのか!?」


 おぉーっと!?


 いきなり変な誤解されたぞ?


 自分の身体を守るように腕を回して俺から一歩二歩とゆっくり遠ざかっていく。


 「ちょ、違いますってミカエルさん!?ミカエルさんの事は確かにす、好きかも知れませんが絶対にそんなことしませんよ!」


 「そうだよ、ミカリン。ヒカリンがそんなことするように見える?さっきまでミカリンの話で顔真っ赤にするくらいだったのに、そんな度胸あったらもうとっくにミカリンはヒカリンの餌食だよ」


 「そ、それも確かにそうだな。ヒカリの力には敵わないからな」


 「そうです、やる度胸もありません……これはこれであれだけど……はぁ、もうこの際だから言う所まで言っちゃいますね」


 外野でレフト三兄弟が何やら「遂にですかー」「やっとっすか」「まあ、やっと、だな」とか言ってるがこいつらの事は居ないものとして考えよう。


 特に勇者は「ヒューヒュー」とかすんげぇうるさいけど、とにかく我慢だ。


 「実を言いますと、さっき勇者も言った通り俺はミカエルさんのことが好きです。それも異性としてミカエルさんのことが好きです」

 言い切ると急に外野が静かになったので恥ずかしくなったヒカリはそのまま続ける。


 「隠してた理由も意味も分かってると思いますけど、俺はエルフ族の中でも一番誰よりも異端です。見た目も加護を受けれない体質も、考え方も。何もかも異端です。だから俺なんかがミカエルさんを好きになってはいけないと思って隠してきました。でも、明日からは隠す必要がないのでここで全部言わせてもらいます」


 「ヒカリ……隠しておく必要が無くなるってどういうこと」


 「言葉の通りです。俺は明日、村を出て旅に出ようと思います。俺なんかがエルフの村にいたらこの村の評価は落ちます。だから村から出ます。散々酷い目にあってきたけどやっぱりこの村も俺の大切なものの一つなんです。だから明日、村を出ます。さっきの言霊の加護はその際に付いてくるとか言いそうなミカエルさんに命令しようと思って作ったものなんです。ミカエルさんは……俺にとって大切な人だから、俺と一緒は良くないと思ったんです」


 「ヒカリ……そこまで想ってもらえることはとても、とても嬉しい。だが、だからこそ私の気持ちにも気付いて欲しかった。ヒカリと一緒に入れないなら、私は死んだ方がマシだと、そうまで思うことを。だから、ヒカリ。私もお前の旅に連れてってくれ。幸い、私に家族はいないしほぼ自由の身だ。だからもう一度言う。私もヒカリの旅に連れて行ってくれないかな」


 言葉が出ない。


 ミカエルさんはおれのことを大切に思っていたのは分かっていた。


 でも、ミカエルさんに家族はいない。だから、俺なんかでも大切にしてるもんだと思っていた。だが、これでは俺の思いと何ら変わりないじゃないか。


 「ミ、ミカエルさんが付いてきたい気持ちは分かりました。分かったけど、俺と一緒じゃ、苦労するだけだ……今ここで置いてかれて辛くなるよりも、俺と来た方がよっぽど辛い目にあうと思う。だから、だから……俺と一緒に居たいなんて思わないでくれよ」


 すると傍観者として黙って横にたっていた勇者が口を開いた。


 「ヒカリン、それは……確かにヒカリンと一緒にいたらミカリンは辛いかもしれない。だけどな、ヒカリンと居れないのは、そっちの方がよっぽど嫌だとミカリンも思ってるはずだ。直接聞いてみろ、あと、俺たちのこと忘れ過ぎだ」


 「ミカエル、勇者の言うことは本当、なのか……俺なんかと一緒の方が嫌じゃないって本気で思うのか?」


 「ヒカリ……私を見くびるな。私はヒカリと離れるなら、死んだ方がマシだと言ったはずだ。それでも分からないならこうすればいいか」


 そう言うと、ミカエルはゆっくりと近付いて来た。


 気付けばもう目の前、動けば顔が当たる位置にいる。


 「ヒカリ、嫌なら避けろ」


 そう言い残すと残り数センチの距離を縮めて来る。


 あと一センチもない。


 そして、遂に彼女の唇が俺の唇にゼロ距離となった。


 時が止まったように感じた。


 ミカエルさんの柔らかな唇が俺の唇に当たってしっかりと感触を残してくる。


 何秒たっただろうか、何分なんてことはないがその間、俺は呼吸すら忘れてその感触を脳裏に刻み、彼女の顔を見つめることしか出来なかった。


 「わ、私の気持ちが分かったか。これでも置いていくというならそうしてくれ。でも、私は付いていきたい」


 今の一瞬で俺の脳内にはミカエルさんのことしか無くなっていた。


 ミカエルさん抜きで旅をする?


 そんなの嫌だ。


 ミカエルさんを二度と見ることは出来ないかもしれない?


 そんなのもっと嫌だ。


 ミカエルさんが俺以外の男に惚れる……絶対に!嫌だ!!!


 「俺は、ミカエル、君を置いてくことは出来ない。今の一瞬で思い知らされた。君が付いてきてくれると言うなら、是非。俺と一緒に旅してください」


 「ヒカリ、もちろんだ」


 直後、外野で黙っていた四人が一斉に拍手やら奇声やらを発した。


 「ミカリン、やったな。君の努力の成果だ。あと、ヒカリン。君は……なんか最後だけ勢い良過ぎないか?」


 「う、うるさい。俺は元々こんな性格してたの!俺は異端だから遠慮してたんですぅー!」


 すると今度はレフト三兄弟から声をかけられた。


 「良くできましたね」


 「俺っちも早く彼女欲しいっす」


 「まあ、勢い良すぎた気もしないが、良くやったな」


 「偵察前にこんなことになるなんて全く思わなかったな。じゃあ、さっさと偵察済ませて旅支度しないとな」


 「ああ、そうだな。まさか私も旅をすることになるとは思ってもいなかったから準備が大変だな」


 「そうですね、さっさと偵察済ましちゃいましょう!」


 「そしたら夜はさよならアンドおめでとうパーティーしないとっすね」


 「パーティーの準備はこっちに任せて二人はさっさと旅支度だな」


 すると勇者一人だけ辛そうに言葉をかけてくる。


 「みんな、その行為、その言葉。丸々死亡フラグって言うんだぞ。大変なことにならないといいんだが、まだ俺の加護はこの森の異変を感じているぞ」


 「しぼーふらぐ?まあいいや。勇者もそう言ってる事だし、気を引き締めて行くぞ」


 「了解した」


 「はーい」


 「りょーかいっすー」


 「それもそうだな、気を引き締めて行くぞ」


 そんな中、勇者一人だけはやはり気が落ちていた。


 みんな、死亡フラグ建てすぎ……と。


 「じゃあ、森に入るから魔力視を発動しますか」


 そう言ってヒカリ、ミカエル、レフト三兄弟、勇者の順で森へ入った。


 すると勇者が入ってきた途端。


 森の魔力に変化が起きた。


 「おい、魔力視で見る限りやばい量の魔力が森の中央に集まり始めたぞ」


 「私も森の加護で異変を感じた。これは……かなり酷いぞ」


 「俺は元から感じてるものと変わらないな」


 そう言う勇者の方を見ると、勇者の体から金色の魔力が森へ吸い込まれるのが見えた。


 それに勇者の足元に黒い魔法陣が浮かび上がっていた。


 普通、高度な魔法でもない限り魔法陣は誰の目にも見えるようになっている。


 だから、ヒカリはミカエルに魔法陣が見えているか見えていないかを確認した。


 「勇者の体から金色の魔力が森に漏れてる、それに足元には見たことない黒い魔法陣も見える……まさか、それがこの異変の原因じゃないだろうな。ミカエル、君にはあの魔法陣が見えるか?」


 「いや、魔法陣が、見えない。そんなに強い魔法陣なのか。んなっ!?まさかそんなワケ……本当に勇者から魔力が漏れていると?だとしたらこの異変も勇者のせいと言うことに……」


 「ミカエル、嘘偽りなく事実だ。だが、こんなことを誰かに言った所で誰も信じてはくれないぞ。何度も国を危険から救った勇者が、実は危険になった原因だった。なんて誰が信じると思う?下手したらそれで、打首なんてことも有り得るぞ」


 「だが、それだからってどうしろと言うんだ」


 考える。


 策がない訳でもない。


 やろうと思えばいくらでもできる。


 だが、それで、ミカエル達を救えるか分からない。


 「勇者、お前はこの森から出ろ!これは命令だ」


 言霊の加護を発動させる。


 だが、勇者には通じない。


 当然ながらヒカリが勇者よりも強い訳がなかった。


 だが、勇者もヒカリの必死さが伝わったのか、走って森からでる。


 相変わらず魔力視で見る景色の中には勇者から魔力が森へと流れ込んでいる。


 だが、予想通り森から出た途端魔力漏れは無くなった。


 推測するに、勇者の加護と言われるものが、危険を感じると見せかけてこの森に魔力を流そうとしていたのだろう。


 勇者の加護には何か危険なものがあるに違いない。


 そう思ったヒカリだが、今は森の対処の方が先だった。


 「レフト三兄弟も森から出るんだ。この中で戦うには的に有利すぎる」


 「でも、ヒカリ!」


 「いいから行くっすよ」


 「そうだ、あまりこの森に長居するのは危険だ」


 三人も無事に森から抜け出せた。


 後を追うようにミカエルとヒカリも進むが、例の魔力によって発生したと思われる魔物に取り囲まれてしまった。


 容姿はどれも決まっておらず、ただ一つ真っ黒ということだけが統一されていた。


 「ミカエル、君だけでも森から出て!」


 そう言いながらヒカリは魔力視で会得した重力魔法でミカエルを森の外へとだす。


 ここで、ヒカリは自分の魔力の大部分を消費してしまったらしく、軽く木にもたれかかった。


 「さあ、魔物ども。地獄の戦いを始めようか」




 こうして、ヒカリのこの森での最後の仕事が始まった――


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