迷宮 強敵
「これから目的地に向かう」
集合場所に全員合流して間をおいた後、ダグラスがそう仕切る。
何でもこれからいく場所は、職業に勇者がないと入れない隠し部屋に向かうらしい。
そこには強力なボスが待ち構えていて、それを倒すと攻略者に恩恵を与えられるそうだ。
移動中に魔物が現れたが兵士が即座に倒し先を急いだ。しかし何もしなくてもいいと余裕が現れはじめたクラスメイトは友達とペチャクチャ喋りだし、緊張感などが無くなっていた。
目の前に剣を持った人が、巨人に立ち向かう光景が描かれた壁画がある。
その横にある石板には、
―光もたらす力持ちし者が現れし時、異界への扉開かれん―
この言葉の意味は神の恩恵を授かる者が現れた時に、隠し部屋への扉が現れるという意味らしい。何故このような場所にあるのかが疑問に思うが考えるだけ無駄になる。
勇者は本当に神の恩恵なのか分からないし、そもそも神が存在するかさえ怪しいのだ。
「さて神谷、ここに立って紙に書いてある文章を読んでくれ」
ダグラスにメモ用紙のような物を渡され壁画の中心に立つ神谷。ある程度聞かされていたのか戸惑うことなく言われた通りに行動する。
「ふぅ...『我、神の恩恵を授かりし者、我、力を求めし者、我、試練を与えし者達に告げる、汝、我に試練への道を開かれよ』」
語句を唱え始めると、段々と壁画が発光しだし、読み終える頃には壁画全体に光の亀裂が入り、左右え壁画が別れ動き出す。
壁画の扉が開くと真っ直ぐの長い通路があり、奥に小さな光が見え、その光景に大半の人が気圧される。
「目的地はこの先だ!気を引きしめろ!」
ダグラスに渇を入れられきびきびと動き出す兵士とクラスメイト。
その通路の先へとゆっくりと進み始める。
拓けた空間にたどり着いた。そこはまるで闘技場のような広さで処刑場みたいな雰囲気を醸し出している場所だった。
クラスメイト達は、空気に呑まれ固まり、兵士たちは持ち前の武器を握りしめていた。
「あっ、あれ!」
闘技場の中心に辿り着こうかというときにそれは起きた。場にいる誰かが指を指しその先に視線を向ける。
空中には黒い塊が生成され、それがゆっくりゆっくりと、部屋の中心に舞い降りていた。
それは心臓のように鼓動し、生きていた。
この気味の悪い現象にダグラスは愚か、全員が全員固まっていた。
固まっていた数秒の内に黒い塊に変化が起きた。
塊を中心に雷が起き、骨が産み出され、肉がその骨から溢れ出すように出現し、しだいに巨大な人形になっていた。
「ゴカァァアアア!!!!!!」
巨大な魔物が叫ぶ。ドーム状の部屋の中で叫ばれたそれは反響し、人の心を折るのには充分だった。
――――――――――――――
【名前】未設定
【分類】ティーターン
【討伐ランク】SSS
【スキル】
耐久Lv9 魔咆Lv8 威圧Lv5 咆哮Lv5.....
「グラァァアアアアア!!!!」
「なっ!?」
鑑定されたのに気付いたのかスキルを強制的に解除された。
しかし重要な場所は見れました。
討伐ランクSSS、いまの私達が対峙すればすぐさま全滅を免れない魔物です。
そんな化け物を前にダグラスは急いで全員に撤退を呼び掛け、後ろに引かせようとしています。
しかし敵は待ってはくれない、ティーターンは此方に地響きを立てながら突っ込んできた。クラスメイト達は一目散に逃げ出し、スキルに気をとられ若干遅れた私も後に続こうとするがあることに気付く。
入り口が閉まり始めていていたのだ。
「くそっ!おい、お前ら急げ!!取り残されるぞっ!」
私も駆け抜けようとして、
何もない空間に弾かれた。
「っ!?」
―なにがおきた
ガシャンっと扉が閉まった。
しかし見えた、見つけた。私をはめたやつを。
あの薄ら笑い、そしてそのスキル。
【結界術】
対象を中心に強力な結界を作り出す。その結界は術者以外に視認不能で様々な用途があるので重宝される。
あの休憩所で私を労ったやつだ。
警戒はしてたのにここでやらかした。
―いつ、どこで、だれと敵対した....
「ゴガァァア」
「っち!」
降り下ろされた拳を咄嗟に避け、頭を庇いながら後ろに飛ぶ。私に当たらず地面に当たったそれは無数の瓦礫を作り出し轟音が鳴り響く。
「考えるのは後でいいか、今はお前だ」
ティーターンの拳が地面に埋まった隙に短刀をとりだし巨人の脇を通り抜け脇腹を切りつける。傷口は浅いが、短刀の効果が発動する。
「ゴァア」
まるで効いてないと言わんばかりの表情でこちらを嘲笑うティーターン。
重力の二倍。それはたった一太刀では効果は薄いが数度切りつければ絶大な効果を表す能力だ。さっきのような隙をついた一撃はもう出来そうにないので、覚悟を決める。
「ふっ!」
息を整え、自分の出せる最大の速度でティーターンに突っ込み、切りつけようとするが、腕を振り払うだけでいなされてしまった。しかし、
「これで二太刀」
ティーターンの動きが少し鈍くなったのが分かる。命がけだが、短刀スキル【一閃】を使い、腕を少し切りつけた。
これが奴に勝てる唯一の方法。
今の私には、奴を殺す手段はないし、そもそも傷を与えることすら難しいのだ。正直言ってこの武器があって始めて感謝したかもしれない。
そう油断したのがいけなかったかもしれない。ティーターンに変化が現れた。奴は口を開け、黒い球を作り出した。
「何を始めるつもりだ」
なにが起きているのかが分からない。やはり強者との対人戦を経験しておけばよかった。異世界にきてまだ一週間、実力確認の為にきた迷宮ではさすがに情報が足りなすぎた。
その黒い球は徐々に大きくなり、
爆発した。
その衝撃に意識を失いそうになるが、歯を食いしばり何とか意識を保ちながら奴を鑑定する。
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【名前】未設定
【分類】ティーターン
【状態】瀕死
【スキル】
起死回生LvMax
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さっきまで表示されていたスキルは全て消え、新たに表示されたスキルをみて驚愕を露にする。
【起死回生】
瀕死状態から一度だけ蘇る。
LvMaxの場合のみ無制限に蘇ることができる。
―つまりあれは自爆なのか―
急な浮遊感と共に落下していくのを感じながら意識はそこで途絶えた。
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『対象の生存を確認できません。部屋が再生され魔物が中央にいる事から、対象は奈落に落ちたと思われます』
黒いローブを被る人物の元に、念話が届き結果が報告される。
「ご苦労様です。引き続き勇者達の監視にあたってください」
『了解です』
念話が終わったので黒ローブは目の前にいる大臣に結果を報告する。
「やはり落ちたか」
「ええ、成功です。あの鬼畜部屋はやはり使えますね」
大臣はその報告をうけ顔を綻ばせる。なぜなら自分に害をなすかもしれない不確定要素があっさりと消えたのだから。
「あそこにいる魔物は何だったのかな。」
「自爆型ティーターンですよ。彼処は部屋に人を閉じ込め対象を確認してから自爆をする魔物です。しかも自爆型特有の起死回生をLvMaxで持っているので何度でも蘇るので使い道は色々ありますね」
大臣と黒ローブはある程度言葉を交わし、最後にしめる。
「「我らの未来に栄光あれ」」




