迷宮 到達
その声の主は、両手をあげて歩いてくるダグラスだった。
「って、あれ?星野君じゃないですか」
「なぜこんなに早く此処にいるのですか?」
ダグラスの後ろからついてきた担任と委員長のもので担任は二本の短剣を、委員長は一振り刀を抜き身にの状態でやって来た。
「え、星野なのか?」
壁に蹴り飛ばした神谷が私の事を見て、声をあげる。
「で、何のようですか」
「いやぁ、俺達は突っ走っていった勇者について来ただけだし」
「すいませんダグラスさん。でも星野、何で僕を蹴り飛ばしたんだ。」
この馬鹿は何を言っているのだろうか。
私は呆れた視線を向け、ダグラスはため息を吐いていた。
「君が私に斬りかかって来たからでしょうが。」
「そんな、僕は逃げていたオークに斬りかかっていた筈だ!」
なんだこいつは、私の事をオークとでも言うつもりか。
「それはないな」
「え、」
「オークの死体を見てみろ、首が綺麗に斬られているだろうが」
「え、あ、本当だ。」
「これは、素早く横一文字に斬らないと絶対にこんな死体にならない。これは、お前が殺っただろ星野」
まだ死体が残ってて良かったなあ、このことで変な疑い掛けられたらめんどくさい。
「そうですよ、この通路を歩いていたらオークが武器を構えて突っ込んできたので倒して魔石がドロップするのを待っていたら、オークが来た道からバタバタと足音と叫び声が聞こえたので警戒していたら、神谷が斬りかかって来たので蹴り飛ばしたんです。」
こいつは攻撃するとき、敵を認識しないのだろうか。
神谷は何故か納得いかないと言いたげな顔をしている。
「まあいいか。それより星野、お前随分強くなっているが何したんだ。」
神谷のことは何を言っても意味がないと悟ったのだろう、ダグラスは急に話を振ってくる。
「何したも何も、ただ魔物を狩っていただけですよ」
私は特に表情を動かさずに答える。
ダグラスは少し考え込んだ後、そうか。と言い神谷の方へ向かっていった。
「てやぁぁっ!!」
キンキンと火花を散らしながら響く剣戟。目の前で繰り広げられるそれは少し緊張感のあるものであった。
少しだけ。
私は、ダグラスと一緒に勇者チームの19層攻略しながらその戦いを後ろから観戦している。
今の敵はゴブリンソードという剣技に特化したゴブリンだ。
まあ剣技特化と言ってもタイミングを合わせれば簡単に打ち返せる程度の力量しか持たない魔物だ。
これがゴブリンナイトなら話は変わったが勇者ならレベル1でも力押しで倒せる雑魚、それなのに打ち合って要るのはダグラスの指示で、勇者の実力を少しでも上げるための訓練だ。
しかし内容は最悪だ。
別に失敗しているのではない、ただ攻撃する度に煩いんだ。
打ち合う度に叫び声を上げ意味のない技名まで叫ぶ始末、私は早く終われと思いながら目を瞑り、ダグラスは目頭を押さえていた。
結局終わったのはあれから一時間後、勇者以外の二人がゴブリンを回復させたり、付与をしていたので長くなった。
ダグラスめ、あの二人に指示を出さずともお前が訓練してやれば良かっただろう。
おかげで無駄な時間を過ごした。
その原因であるダグラスを無言で睨むが何処吹く風と無視しされた。
「よし19層の残りの魔物は星野、お前が倒せ」
ゴブリンソードのドロップを回収した後、ダグラスの前に集まる勇者達の前でそう言われた。
「ちょっと待ってくださいダグラスさん。何故星野だけ訓練しないんですか」
それもそのはず勇者達はさっきまで訓練していたのだ。
神谷は剣技の向上を、霧島さんは回復力の確認を、先生は付与の種類及び上昇率の確認をしていた。
そんな中で訓練などをサボっていた私だけいきなり訓練も無しに挑ませるのだ、自分中心の神谷に劣等感がうまれ文句が出るのは当たり前だった。
「なぜもなにも、すでにこいつは自分の戦い方を編み出している。そこに俺がとやかく言う必要はないだろう」
ダグラスはそこまで言うと魔物がいる方向に歩いていった。
神谷は俯きながらも追いかけ私と残り二人も追いかけてた。
「グギャアア」
階段手前にある部屋に入って目に入ったのが、少し装備の質が上がったソードゴブリンだった。
しかし19層、最後の魔物なのに取り巻きが一人も居ないのは味気ない。
ダグラスによると0が付く階層の魔物はその階層に出てきた魔物の強化版、もしくは進化した魔物らしい。
しかし今いる場所はボス部屋でもない部屋にいる魔物。しかもまだ低階層なので複数体で魔物が現れる事はない。
「グギャ、ギャ」
考え込む私にソードゴブリンは狙いを定め剣を構え此方に突っ込んでくる。
そのまま剣を降り下ろそうとするが私の短刀に弾き飛ばされゴブリンの動きが止まり,その隙を逃さずゴブリンに足払いをかけ、転倒させる。
倒れたゴブリンの胸元を踏みつけ短刀で首を切り裂き、ゴブリンは悲鳴を上げ動かなくなった。
...やっぱり人形相手だと格闘術も有効かな
ダグラス達が歩み寄って来るなか私はそんなことを考えていた。
20層の入り口には冒険者?が殆ど居なかった。
クラスメイトがちらほら要るが、殆どが休憩していて私達を見て驚くか少し笑っている奴等がいた。
まあ、ダグラスに強いと言われた私が勇者のパーティーに要るのだ。やっぱり一人で攻略出来なくなった的な感じで笑っているのだろう。
別にそれくらいの事で腹を立てるつもりはないが、それ以降そいつらを視界に入れるのを止めた。
「さあこれから目的地に移動する」
読み返すと矛盾があったので編集しました。