プロローグ
私は人が嫌いだ。
何を考えているのか分からない。
他人を貶して、なにが楽しいのか分からない。
まあ、一番嫌いな理由が人は自分勝手で、自分の事になると何をしでかすか分からないからだ。
始まりは私が中学一年の頃だ、ある日私は学校の職員室に呼び出された。
始めはなぜ呼び出されたのか分からなかった。だが職員室に入った瞬間異様な雰囲気に包まれた。職員室の先生達は、まるでクズを見るような視線を私に向けた。
なおさらなぜ呼ばれたのか分からなかったが、その中心にいる人物を見て納得した。
またこいつが何かしたのかと思った。そいつはクラスでグループを作って、特定の人物にいじめをしていたやつだ。しかも教師にばれないようにいじめをして、その教師の前じゃ素直な良い子を演じてとてもたちが悪いやつだった。
とりあえずなぜ呼ばれたのか分からないから、担任のもとに聞きにいった。そしたら担任からいきなり怒鳴られた、
「星野、山田が教えてくれたぞ、俺に隠れて田中をいじめているのか。」
意味が分からなかった、私は咄嗟に否定したが、
「まだしらを切るつもりか、俺の目は誤魔化されないぞ。それに山田が嘘をつくわけないだろう。山田と一緒にクラスに確認しにいったが、クラス全員がお前が苛めてたと言ってたぞ。」
は?その言葉に、一瞬戸惑ったが納得した。
つまり次のいじめの標的になるのが怖かったのか、それに山田と一緒にって言ってたし、後ろから凄い目で睨まれたんですかね。ただ、クラス全員という言葉に、私は否定する気力が無くなった。
クラス全員という事は少なくとも親友だと思ってた人達は簡単に私を見捨てたと言うことだ。アニメ風に言うのならば、“所詮その程度の友情だったのだよ”だったがまさにその通りだと思った。
それに否定してもこの担任は話を聞かないだろうと思ったからだ。多分、否定しても「まだ嘘をつくか、」とか「いい加減しつこいぞ」とか言われるのが目に見えた。
そのあとの事はただ、教師数人による数時間にわたる説教を聞き流し田中の家に謝りにいくことになった。その時担任に「田中にきちんとあやまれ!」と言われたのでしかたなく謝った。
だが田中に不思議がられ誤解が解けた。
そこで担任が顔を真っ青にして、田中の家の前で僕に向かって土下座をした。少し長時間立たされた腹いせに今、どんな気持ちですかって聞きたくなったが辞めた。
次の日学校に通ってみるが、教室の雰囲気とてもギクシャクしていたし私も嫌だったので、父に頼んで転校させてもらった。
今度は友人を沢山作ろうと思った。その為色々なことを努力した。なるべく良い友人を作ろうと思って。だが、そんな日々も唐突に終わった。
何が起こったのかというと、父さんが働いてた会社の上司が仕事で失敗して、取引先で問題になったそうだ。その責任をその時部下だった父さんに擦り付けられたらしい。だがその事が問題でリストラされた。
そしてそのリストラされた帰り道で、父さんが電車の前に飛び込み自殺をした。
私はその時、中学の修学旅行に行っており詳しくは知らなかったが、後から聞いた話だがその上司は父さんがその会社で働き初めてからお世話になっていた先輩で、馬が合ったのかいつも仲良くしていて私が小さいの頃に良く遊んで貰っていた人だった。
その事はとてもショックだったが、せめて誤解が解けたらよかったのに。
だが、葬式で父さんの同僚の話を聞いてしまった。
「今回のリストラ、部長気付いたらしいぜ」
「え、なにを」
「だから星野のリストラの原因、」
「え、じゃあなんでリストラされたの」
「なんでも経費削減って社長から厳しく言われてたらしいぜ、それに田口のとこの親父との取り引きがあるからその息子を責任問題にするより社員の方が都合がいいとかの話だぜ。」
「うぁ、星野可哀想~。」
「だよな~」
訳がわからなかった。母さんもこの話をたまたま聞いていたのか、目から色が消えていた。だが私の事に気づいて、すぐに元に戻ったが、あの表情は今でも忘れられない。
そこから頑張って元の生活に戻ろうとしたが、戻れなかった。戻ろうと頑張ったが、周りが戻らなかった。
父方の祖父たちに会うたびに小言を言われ、家の近所にある母さんの友達からは煙たがれた。
母さんは、耐えきれなくなったのだろう。私が中3に上がる時期に母さんは浴槽で自殺した。
この日から、一週間ぐらいずっと家に引きこもった。
何で、何で自殺したんだよ、何で私を置いていったの、とずっと考えていたが、さすがにこのまま休み続けるのはまずいと思い、週明けから学校に行った。
だが、教室に入った瞬間何時も通っていた学校じゃないような気がした。まず、友達が話しかけてくる事がなくなった。いや、正確には距離を置かれるようになった。元友人、先生から色々な視線で見られた。同情する視線や哀れむような視線、はたまた見守るような視線を向けられた。
何故そのような視線を向ける、そんな視線を向けられるのなら寧ろ居ないものとして扱ってくれた方が楽だ、と日に日に思うようになった。
私はこの日を境に人が嫌いになり、仲の良かった友人と関わることを止めた。いや、人と関わりを持つのがバカらしくなったのだ。それに気付いたいたとき、私の中にある何かが壊れた。
それから県外に一度引っ越して、高校一年まで誰とも喋らなくなった。
―――――――
今日も朝食を食べて洗面台に行き、しばらく切ってなくて肩まで長くなった後ろ髪をゴムで纏め、引き出しからマスクを取りだし学校に行く準備をする。確りとアパートの鍵を閉め、アパートの階段を降りる。
そこで、路地で会話していたおばさん達や近所にあるごみ捨て場にゴミを捨てていた人から、可哀想な目で見られていたり、会話のネタにされる。こんなことなら引っ越した意味が無いじゃないか、と思いながら。
なるべく無視しながら学校に着くと何時ものように、下駄箱からシューズを取りだし教室へ向かう。
教室に入ると視線が集まるが、すぐに散っていく。
私のこのクラスでの立ち位置は、親がそうしてるんだから私達もそういう態度で示そうとかはた迷惑な理由が原因で、話し掛けはしないが少し気にしておこうという感じで今の立ち位置が成立している。
いつもの事なので気にすることなく窓際の一番後ろの席に座る、すると前の席の人から話しかけられる。
「おはよう星野、」
彼は北山透、今年からの知り合いでほとんど返事を返さないのに、このクラスで唯一話しかけてくる人物だ。
「おはよう」
マスク越しでぼそぼそ言っているが、あまり気にならないようだ。
「そういえば昨日さ...」
最近は色々な話題を持ってきて、よく話しかけてくるので適当に相づちをうって話を聞き流す。
聞きながら思うのだが、良く話題が尽きないなと思う。確か前はアニメの話だった気がするのだが日を跨ぐと、また別の話題を持ってくる。
そんなに話したいのなら私なんかに構ってないで、何時もつるんでる人たちと話してきたらいいのに。
「皆さんもうホームルーム始まってますよ、早く席についてください。」
担任が教卓で皆に呼び掛け、席に座る様に促す。
あれ、チャイムなってたかな。
気になったので、時計を見ると確かに時間が過ぎていた。その事に気づいたのか、がやがやしていた人たち不思議がりながらも自分の席に座り始める。
「じゃあまたあとで」
そう言うと北山は、自分の椅子に座り直して前を向く。
はぁ休憩中は静かに本読みたいのに、何でこの人はよく話し掛けてくるのだろう。
そんな下らない事考えて要ると、教室の天井と床にに発光した変な模様みたいなものが描かれているのに気付いた。
その模様は、段々と光を帯びながら教室全体に広がる。
「なんだこれ!?」
クラスの誰かが、その事に気づいたのかみんなに聞こえるように叫んだ。
一人が叫んだので、このクラスにいる人達が何事かと周囲を見渡して、異常な事態に気付いたようなので騒がしくなった。
「落ち着いてください、早く外に!」
担任が叫び、生徒たちが一斉に扉に群がる。
一人の生徒が扉をあけようとするが、
「先生、扉が開きません!」
そう言いながらガチャガチャと扉を開けようとしている。
「うそだろ!」
「そんなぁ」
そうこうしている内に模様が、更に発光し始め光が消えたそこには誰もいなかった。