もずめ:プロローグ
小説を閲覧いただきありがとうございます。
感想、評価、ブクマ等いただけましたら、作者は大変喜びます。
どうぞよろしくお願いします。
とある世界『アース』。その世界に存在する蒼き惑星『チキュウ』。
そして、そのチキュウに存在する数多の国の1つである東の島国『ヒモト』。
その国では、ある夢のような技術が開発された。
その名も『異世界転移<アナザーワールドテレポート>』。
漫画やライトノベル、アニメなどで、人智を超えた存在が振るう神秘の力。
あるいは異世界側に存在する魔力の高い者によって引き起こされる技術。
それが科学の力によって、現代の人の手に渡ったのである。
20年前のある日、突如ヒモトの都市に現れた未知の物質。
半年かけて調査した結果、この世界の物質ではないと判断された。
それはヒモトを……いや、世界を驚愕させた事実である。
長年夢物語とされてきた異世界の存在が現実味を帯びた瞬間だった。
そこから人々は長い年月をかけて未知の物質である
異石<アナザーストーン>を研究し続けた結果、新しいエネルギー、
技術、人に隠された能力などが開発されていった。
こうして世界の文化レベルは何段階もスキップして、飛躍的に上昇する。
さらに月日を重ねて、人類はついに別の世界へと渡る力を手に入れたのだ。
それから最初の異世界転移チームが異世界へと旅立ち、無事生還。
持ち帰ったものや技術がまた世界を驚かせることになる。
これはそんな画期的技術の開発、そして異世界転移という世界的事件から、
8年が過ぎてからの物語である。
***
8年後の春。
ここはとある有名な高等学校の体育館である。
体育館には紅白のおめでたい幕が飾られている。
ぴかぴかに磨かれたパイプ椅子とそれに座るたくさんの来賓の方々。
どこからどうみても華やかな入学式風景だった。
……その人物が壇上に上がるまでは。
新入生のクラスの担任の1人だというその教師は、壇上に上がって、
簡潔にあいさつを済ませる。
「リヒター・マインラート。よろしくね」
ここまでは良かった。
この程度であれば、せいぜい不愛想な人程度で済むのだから。
それから教師は新入生に対して、このあとの予定について、
つらつらとノンストップで話す。質問や疑問を発言をする猶予すら与えない。
その内容を理解出来た者は、はたしてどれほどいただろうか。
そして最後の最後でこの教師はとんでもない爆弾発言を投下する。
「ということで、さっそくだけど迷宮に行ってもらうよ。
早く入学レベルになってくれないと、使い物にならないからね。
僕グズは嫌いなんだよねー」
新入生はリヒターと名乗る教師の言葉に唖然とするしかなかった。
もちろん来賓からも、何事だとざわめきが止まない。
在校生ならびに教師一同だけは、諦めの溜息と憐みの眼差しを
新入生へと向けている。
「じゃあ、行ってらっしゃい!」
リヒターがにこやかに笑いながら指パッチンをすると、
新入生の姿がその場から消えた。
悲鳴を上げる暇もなく、地面にぽっかりとあいた黒い穴へと落されたのである。