僕からの言い訳
さて、僕は謝らなければならないことがある。今回僕が考えたのは、ヒッチとブースカットを怯えさせることにあった。アンバスカルの城で遊ぶのは危ないんだぞ、なんて、教訓めいたことをやろうとしたわけではない。肝試しをやる側に立つなら、一度はやられる側に立っておいた方が、本番に役立つと思ったからだ。
だから、僕は、妹が寝息を立てるとすぐに、テドオアさんの家へ向かった。彼は、僕たちより一回り以上歳が上だけど、とても気さくで、僕たちのくだらない遊びによく付き合ってくれていた。だから、今回の悪戯に付き合って欲しいと頼んだわけだ。
結果は、即答、オーケー。
テドオアさんは、任せてくれと言わんばかりだった。僕は、すぐに人身売買の話をテドオアさんにして、それをネタにしようと言ってくれた。僕はそのまま家に帰って、実際どんな演出をしてくれるのか知らなかった、これは本当だ。
後は、アンナが推理したとおり。僕は、テドオアさんがどんな準備をしてくれたのか、どきどきしながら、アンバスカルの城に向かったわけだ。
けれど、それとは全く別の視点で、僕は、もう一つ悪戯を思いついた。
僕は、アンバスカルの城に入った瞬間から、城に入ったのが、僕と、アンナと、ヒッチとブースカットの四人であったにもかかわらず、あたかも、五人いたかのように、表現してみせた。ヒッチは四つのランプを点け、僕は右手にランプをずっと持っていた。僕がランプを前に掲げるならば、僕の前には四つのランプが揺れることになる。
ただ、それだと説明がつかないことが一つだけある。
ヒッチが、王子の部屋だろう、と表した部屋での出来事だ。あれは、僕が意図したことではない。純粋に、あそこで起きたことをそのまま表現した。だから、突然ランプの明かりが消えたのも、そして月明かりの中で見た、僕の正面にあった影も、僕には何なのか分からない。もしかしたら、本当に王子の亡霊だったとでもいうのだろうか?
そう思ってしまったからこそ、僕は返事をしなかったんだ。
ただ、それがいい機会にもなったので、僕はそれ以降左手でランプを持つことにした。簡単で、とってもずるいやり方だったと思う。あたかも、そこで一人消失してしまったかのように演出して見せたわけだ。
だけど、
最後城から出たあと、
ヒッチとブースカットはアンナの手を見て、
急に怯え始めた。
あれはどうしてだろう?




