ツインコカトリス
コカトリスは鶏をそのままポニーぐらいまで大きくしたような見た目のモンスターで、巣に産み落とされた卵は、卵料理として大人気だ。コカトリス本体の肉も、現実の鶏肉と似た良好なもので、中々の値段で取引される。
レベル帯的にも、今の武宮達で問題なく倒せる上、レベルアップも狙える。
ただし、それなりに危険性もあり、コカトリスが吐くブレスには毒効果が付与される。
五十嵐の回復魔法には毒を治せるものがあるものの、やはり食らうと厄介なものであることには変わりがない。
レアモンスター、ツインコカトリスはそんなコカトリスを狩り続けると出てくる……とされる、特殊なモンスターだ。名前の通りで、首が2本あるのが特徴である。そのため、毒を吐く息ももれなく2倍の量と効果範囲だ。
コカトリスよりも良質な肉や羽毛が採取出来るらしく、さらに取引価格は上がる。
「いた……よし、いくか」
「うん。頑張ろうね、すーくん」
遭遇したのは、コカトリス2体。翼を広げ、素早い動きで突進してきた。
毒を食らわないように、出来るだけ正面へ回らないようにして、動きつつ攻撃を加える。コカトリスは大きく息を吸わないと毒の息を吐かないので、ポジションを移動させながら攻撃すれば、安全に対応出来るモンスターだ。
1体1体を心掛けつつ、2体を撃破。
アイテムボックスへコカトリスの死体を収納し、次なる獲物を探した。
安全のため、3体以上の時はスルーする。
もっとも、武宮は前のスキルポイントで状態異常耐性を獲得したので、もしかするとコカトリスの毒を食らうことはないかもしれないが、複数体いっぺんに倒すメリットはそれほど多くないと判断し、念のため回避する。
そしてゴールデンスライムの時とは違い、夕方頃。少し早めに、その時が訪れた。
「コケ~~~~ッ!!!」
近くに、2本の頭を生やしたツインコカトリスが発生。盛り上がった岩陰に隠れながら、様子を伺った。
「とりあえず、周囲に他のモンスターはなし……」
「すーくん。私が気配遮断で先手をとってくるね」
「わかった。でも、無理はするなよ」
「あ……じゃあ、頑張ってのチューをください……ちゅ~~」
「いってらっしゃい」
「もうっ! いってきますっっっ!!!」
ぷんすか怒りながら、気配遮断をしてツインコカトリスへ近づく。
背後をとり、その背中を剣で切る。
しかしステータスが高いため、ツインコカトリスが怒った声を上げながらも、すぐさま背後を振り返り、その鋭い嘴を前へ突き出した。
五十嵐は後ろへ素早く跳躍し、攻撃を回避。
武宮も岩陰から飛び出した。
と、ここでツインコカトリスは武宮の方へと飛び掛かっていく。間合いが詰まり、ツインコカトリスが素早く嘴を振り下ろす。斧の斧刃部分で、攻撃を受け止めた。しかしその間にもう一つの首は息吸い込み、毒の吐息が武宮へ降りかかる。
「すーくん!」
五十嵐が切りかかると、ツインコカトリスは素早い動きで後ろへ跳躍。
かなり俊敏な動きだ。五十嵐、武宮よりも俊敏の数値が高いことがわかる速さである。
「大丈夫だ。状態異常耐性スキルのおかげか、なにも感じなかった。そんなことよりも――」
ツインコカトリスが前へ飛び出す。五十嵐と武宮はそれぞれ逆方向に跳躍し、回避した。
「これは格上かもしれない……! 桃、俺がなんとか食い止めるから、攻撃魔法を使うんだ!」
「うん!」
五十嵐が距離をとって魔法を詠唱しようとする。だが、ツインコカトリスは目ざとくそちらの方へ移動し、五十嵐を攻撃した。剣でなんとか物理攻撃をガードするも、武宮同様、もう1つの首から放たれた毒の吐息を浴びてしまう。
「ううっ!」
「こっちだ!」
追いついた武宮が斧を振るう。ツインコカトリスはそれを回避し、距離をとった。武宮がツインコカトリスの元へと突っ込む。だが、素早い動きから放たれた前蹴りが、武宮の腹へと食い込む。
「ぐふっ!?」
ずざざざ、と地面を転がり回る。
ツインコカトリスは詠唱中の五十嵐へと突撃。解毒するための術がキャンセルされ、五十嵐もまた足によって蹴り飛ばされた。
「動きに追いつけない……!」
その後も何度か攻防を繰り返したが、根本的なステータス差を感じる。
結構、ダメージも受けてしまった。
特に毒を付与された五十嵐がまずい。
武宮 HP 160/285 五十嵐 HP 140/300
だが、今の武宮はステータスポイントのおかげで、攻撃力は高い状態。
なんとか当てられる状態へ持っていければ、突破口はある気がした。
「そうだ……! まだ、ステータスポイントを振っていない」
メニューを開き、今日獲得した100ポイントを「俊敏」へ全て振る。
「いくぞっ!」
先ほどとは全く違う、五十嵐をも上回る素早い動き。
意表を突かれたツインコカトリスは、間合いを詰めて来た武宮の一撃を、もろに浴びた。
「クケェ!?」
ざしゅっ、と重い一撃がツインコカトリスの胸元を襲う。
怯んだところへ、さらに振り上げた斧で一閃した。
ツインコカトリスが悲鳴を上げ、後ろへふらつく。
「まだだ!!!」
逃しはしない。さらに前へと出て、もう一撃、斧を振り降ろした。
今度の攻撃はツインコカトリスにとって致命傷となり、大ダメージの痛みに長い2つの首を上へ向けた後、ばたん、とその体を地面へ倒した。
「やった、やったぁ! 私のすーくんは、やっぱりすごぉい!!!」
「おわっ!?」
いきなり抱きついてきた五十嵐に、武宮は顔を赤くした。




