草原へ
アイテムボックスの制限内で、スライムの死体を協会へと売却した。スライムは食材、調合スキルが作る薬の材料になる。
ゴールデンスライムが2万円、シルバースライムが3000円。他のスライム達が500円と儲けは控えめであった。あれだけ苦労したゴールデンスライムとシルバースライムがこんなにも安い。やはり、レアといえど所詮は序盤のザコモンスターなのだ。
夕食を食べ終え、部屋のソファに座りつつ、武宮はカップに入ったバニラアイスをモゴモゴ食べていた。テレビをぼんやりと見る五十嵐の横顔を見て、ふとあることを口にする。
「なぁ。桃のステータス、見せてくれ」
「ん? うん」
五十嵐 桃 18歳 女
レベル5
HP 300
MP 80
攻撃力 77
防御力 75
俊敏 61
魔力 81
精神力 70
スキル 剣術LV1 回復魔法LV1 察知能力LV1 気配遮断LV3 攻撃魔法LV1 愛の手料理EX
(やっぱり、桃は強いなぁ)
ハイレベルなオールラウンダーで、武宮のステータスをほとんどの項目で抜いている。
協会でステータスを提示する時も、五十嵐のステータス値はよく褒められる。それほど数字の伸びが良いのだ。
スキルも豊富だ。前衛も後衛もこなせる。おまけに周囲の状況を瞬時に把握出来る察知能力に、不意打ちなどに活用出来る気配遮断がある。
「あれ。気配遮断、レベル上がった? 前、2だったよね」
「うん」(すーくんが昨日、寄り道した時に。こっそり見てたんだよ……)
もちろん、フィールド外のスキルの無断使用は犯罪である。恋するちょっとヤンデレな乙女は暴走するもののようだ。
「そっか。んー、まだ桃には追いつけないか」
「でも、明日には最低でもさらに100もステータスアップだよね? しかもまだ食べていないモンスターいっぱいだし、私なんてすぐ追い抜けちゃうよ」
よし、と武宮は声を上げた。
「明日は、森を抜けて草原で狩りしよう。レベルも上げつつ、新しいモンスターを食べてやる」
「うん、賛成! いっぱい狩って、お腹いっぱいにごはん食べようね」
☆
翌日。再び協会へと向かって、ゲートを潜り抜けた。
ゲートが転送する場所は一定の場所ではなく、最後に帰還した場所へ自動的に送られる。
なので、2人は昨日の森へと再び現れた。
ステータスの恩恵ゴリ押しでハイスピードに走り、森を抜ける。
「おっ。さっそく、ゴブリンがいるな」
丘の上。無防備に日向ぼっこをしているゴブリンが4体いた。
やや数は多いが、ゴブリンはレベル4以上はあれば無難に狩れる敵だ。
「ゴブリンも4色くらいいるよね」
五十嵐の言葉に、武宮はこくりと頷く。
今、視界に映るゴブリンは緑色だが、他に赤、青、紫と4種類だ。
「よし。やるか」
「……ねぇ。ゴブリン、食べるの?」
「え? ああ、もちろんだ。ゴブリンは見かけのわりに、結構重い攻撃してくるし、攻撃力あがるかもな!」
「そ、そっか。まぁ、いいけど……」
異世界料理は当初、見た目のエグさなどから、人類にはあまりウケが良くなかったが、フィールドへの扉「ゲート」が現れてから50年以上が経過している。
現在の人類は、モンスター料理が一般的な食事として広く普及している。
しかしそれでも、食べるのに抵抗のあるモンスターというのがいる。
五十嵐としてはゴブリンがそれに該当するのだが、どうも武宮は気にしないようだ。
「よし。いくぞ!」
武宮が2体、五十嵐が2体ゴブリンを相手するように、前へと出る。
ゴブリンは小柄で、彼らの足腰程度の背丈しかない。だが、右手に持っている棍棒は中々に強力。動きも小回りが利くため、油断は出来ない相手だ。
しかし……。
「ぐきゃぁ!?」
「あれ」
武宮の斧で、ゴブリンは一撃で沈んだ。
2体ともその調子だったので、拍子抜けである。
(そうか。桃のユニークスキルで、攻撃力上げまくったから……)
五十嵐の方は攻撃魔法「ファイアボール」を駆使しつつ、ゴブリンを華麗に倒していた。
「早いね、すーくん」
「ああ。やっぱ、攻撃力を上げて正解だ。一撃必殺で爽快」
「う、うん……すーくんって、ロマン砲とか、そういうの好きだもんね……」
五十嵐は左手で小さなファイアボールを形成し、1体のゴブリンの体を焼く。焼けたお腹の肉をナイフで切り取り、濃い緑色となったゴブリンの肉、武宮へ渡す。
「ど、どうぞ……」
「??? なんで、嫌そうなんだ。いただきます」
モグモグ。
ぐにゅっとした、けれど歯ごたえのある、たくさん噛んだガムみたいな食感であった。味付けはしていなので、ほとんど味はしない。
ごくん。
『――グルメリストにグリーンゴブリンが追加されました。初喫食ボーナス、HP+5、攻撃力+5加算されます』
「よし! これでさらに攻撃力が上がったぞ!」
「よ、よかったね……」(まずそう……)
そしてその調子で続けて、ゴブリンを狩り続けた。
『――グルメリストにレッドゴブリンが追加されました。初喫食ボーナス、HP+5、攻撃力+5加算されます』
『――グルメリストにブルーゴブリンが追加されました。初喫食ボーナス、HP+5、攻撃力+5加算されます』
『――グルメリストにパープルゴブリンが追加されました。初喫食ボーナス、HP+5、攻撃力+5加算されます』
「あっ、ワイルドポニーがいる。可愛い~」
ゴブリンをむしゃむしゃしていると、五十嵐がワイルドポニーを見つける。草原で草を食べている所であった。
茶褐色の毛並み。成人女性の胸元ぐらいの、小柄な大きさの馬だ。見た目は可愛いが、その早い足で人間を積極的に襲う、凶悪な性格のモンスターである。
案の定、ワイルドポニーはこちらへ近づくと、怒った様子でこちらへ突進してきた。
武宮と五十嵐が、横へ跳躍して突進を回避。
すれ違いざまに、武宮が斧を一閃した。
「ヒィィ!?」
高い悲鳴を上げ、これまた一撃で沈む。
見た目は可愛らしいポニーのため、愛着があるのか五十嵐が「ごめんね~」と言いながら焼いた馬肉をさっと作り、武宮へ与えた。
『――グルメリストにワイルドポニーが追加されました。初喫食ボーナス、俊敏+10加算されます』
『――本日5食目の、料理ボーナスを獲得しました。ステータスポイントが+20加算されます』
「よし。ステータスポイントも100貰えたし、あとはレベル上げかな」
武宮の言葉に、五十嵐がこくり頷いた。
「すーくん。ツインコカトリス、狙ってみる?」
「ツインコカトリス?」
「この辺りに出る、レアモンスター。コカトリス倒し続けると、出るんだって。ちょっと強いみたいだけど、ゴールデンスライムみたいに、スキルポイント貰えるかも」
「わかった。じゃあ、狙ってみるか」
次なる目標はコカトリス狩りからの、ツインコカトリスだ。




