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家に帰って、異世界料理を食う

 ぐ~。

 腹が減った。

 武宮はそんなことを考えながら、4階建てのマンションの階段を上がっていく。エレベーター? そんな便利なものはない。

 働きたての18歳が借りられる部屋なんて、たかが知れているのだ。微妙なめんどくささを感じつつ、最上階の4階の隅にある、扉の前まで歩いた。

 合鍵を使って、扉を開ける。


「ただいま~」

「おかえり、すーくん」


 エプロン姿の女の子――五十嵐 桃が出迎える。部屋着で白いウサギの絵が描かれたピンク色の長袖のトップスに、膝の辺りまで伸びた青のショートパンツだ。セミショートヘアの、桃色の髪。アイドルのようなぱっしりとした相貌に、整った可愛らしい顔立ち。かつて男のクラスメイト達に注目された、グラマラスなスタイル。かなりの美人さんだ。なにがとは言わないが、大きくなった。

 前世は30歳の男、今世はまだ18歳の若い体というだけあって、家に帰って美人な女の子がいるのは、かなり悩ましい状況だ。

 一方で、長く一緒に過ごしすぎたせいか、恋人同士になろうという考えは、ものすごい気恥ずかしさがあった。

 それに前世の境遇もあり、毎日美味しいご飯を食べて、定時に帰れればそれでいいと思っている。

 これ以上の幸せを得るのは、今はまだ、不相応のような気がしていた。


「ごはんにする? お風呂にする? そ・れ・と・も――」

「ごはんで」

「もう、すーくんったら! まだ最後まで言ってないよ?」

「もうお腹ペコペコなんだ……ううっ……」


 ぐ~。

 お腹の虫が悲しげに鳴いてしまう。

 ふふふ、と五十嵐が笑みを浮かべた。


「すーくん、食いしん坊だもんね~」

「手洗ってくる」

「うがいもするんだよ」

「ん~」

「変な寄り道は……してないよね?」

「んっ、話した通りだよ、本屋へ寄っただけ」

「そうだよね~。すーくんは私に絶対、嘘つかないもん」

「そうだな」


 手洗いうがいと、定番のルーティンをこなした後、リビングへと向かう。

 この部屋に引っ越して、2日目。

 冒険者としても、社会人としても、駆け出しであった。


「おおっ」


 鼻を刺激する良い匂い。

 木製のハイテーブルの上には、美味しそうな、ホカホカの親子丼が用意されていた。サラダボウルに入ったキャベツとキュウリ、ツナの入ったサラダも添えられている。


「美味そう」


 武宮はウキウキとした気分で椅子に座った。

 ただ、親子丼の方は一般的なイメージの抱く「親子丼」とは少し違う見た目であった。

 卵の色は黄色ではなく、赤みがかったオレンジ色だ。肉の色も赤黒く、イルカ肉に近い見た目をしている。

 これは現代社会に現れた異世界「フィールド」で倒したモンスターを素材にした、異世界料理なのだ。

 少々見た目が異質になりがちだが、味・安全・はしっかりとしている。栄養が高いものも多く、異世界料理は国から摂取を推薦されているほど良質なものだ。


「今日私達が狩ったコカトリスの親子丼だよ~。コカトリスの卵は、鶏の卵よりもさらに栄養たっぷりで、とっても体に良いみたいだから、たくさん食べてね~」

「食べる、食べる。いただきます!」

「うんっ。召し上がれ!」


 武宮は箸でパクパクと親子丼を食べていく。トロトロの卵と、歯ごたえのある肉が美味かった。空腹に味が染み渡っていく。


「美味い」


 と、上機嫌そうに食べていると。

 パシャ、パシャ。

 五十嵐が携帯を構え、武宮を撮影していた。


「んっ、また写真か?」

「うん。ごめんね、食事中に携帯操作するなんてマナー悪いよね。でも、すーくんの食べているところは可愛いから、どうしても撮りたくて」

「それ、晩御飯のたびに、やっているよな。よく飽きないな」

「飽きないよ~。あと10枚ぐらい撮るね。ふふふ、ほっぺにごはん粒つけているの、可愛い~」

「えっ、マジか」


 武宮はごはん粒を素早く自身の指でとり、食べていく。五十嵐は「むう」とやや残念そうに唸りながら、携帯を置き、食事を始めたのであった。


「もぐもぐ……それにしても、すーくん。なにか変化ない?」

「変化? どういうこと? 別に、美味しいなって、それだけ」

「……条件があるのかな? どのタイミングで変化するんだろ?」

「??? なに言ってんだ」

「私ね、ユニークスキルに目覚めたの」

「マジか。強い?」


 ユニークスキル……広く取得されたスキルとはまた別の、限られた者だけが習得する特別な能力。1人だけしか確認されないものや、2人だけにしか確認されていないものがあったりと、かなりレアなものだ。そのため、取得条件も未確認であることが多い。

 当たりもあれば、微妙なものや、ハズレもある。

 だが、五十嵐は内容の詳細も言わず、結論を言った。


「きっとこれがあれば、すーくんをとっても強い冒険者に出来ると思うの」

「俺を?」

「とりあえず、ごはんをたべきってみて。きっと発動するはず」

「ふーん」


 よくわからないが、五十嵐が作ってくれた夕食を食べていく。

 サラダ、親子丼共に完食し、一息つくと……脳内に、システム音が通知を知らせてきた。


『――本日1食目の、料理ボーナスを獲得しました。ステータスポイントが+20加算されます』

『――グルメリストにコカトリスが追加されました。初喫食ボーナス、HPが+5、俊敏が+5加算されます』


「……これのことか?」

「変化あった?」


 五十嵐が食器を片付け、洗いながら問いかけてくる。武宮はこくりと頷いて、ステータス画面を開いた。


 武宮 昴 18歳 男

 レベル5

 HP 270(+5)

 MP 6

 攻撃力 85

 防御力 60

 俊敏 25(+5)

 魔力 6

 精神力 36


 ステータスポイント 20


 スキル: 斧術LV1

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