ゴーストを食え! 後編
「っ、いつの間に……!」
「姿を消すスキルで、近づいてたんだよ」
「ホラーかよ、普通に怖いっての! あと、桃は下がって!」
「うん」
武宮が追撃のため、前へと出る。
五十嵐が後方で攻撃魔法を唱えた。
「おらぁ!」
武宮は斧を一閃。ゴーストは素早い動きで攻撃を横へスライドして回避し、右手を素早く前へ真っ直ぐ突き出した。
長い爪。武宮が体を伏せると、頭上にゴーストの右腕が通過。カウンターで斧振り上げるも、ゴーストが後方へ飛んでまたしても回避される。
「――ファイアボール!」
五十嵐の魔法。炎の大きな弾丸がゴースト目掛け飛んでいく。武宮の攻撃の回避に夢中であったため、炎はゴーストを直撃した。
ファイアボール 消費MP 7
詠唱時間は2秒。クールタイム5秒。炎の弾を放つ。
ぼおおおおっ!!! と赤い熱がゴーストの体の中央から燃え上がる。ゴーストは悶えるように、その場で体を震わせた。
「よし……!」
武宮がその隙をついて、前へ踏み出す。
しかしその瞬間――ゴーストの姿が消えた。
再び、姿を消すスキルを発動させたのだ。
それでも、炎が上がったところへ一閃。しかし斧に手応えはなかった。
「くそ、どこに……」
「すーくん、後ろ!」
五十嵐の声と同時に、斧を背後へ振る。
しかしゴーストの方が一歩早かった。
突き出された右手の爪に、胸が一瞬貫かれる。スーパーアーマーは一撃で破られていた。肩代わり出来なかった分は、そのまま武宮へのダメージとなる。
HP 368/375
「っ、くそ……!」
斧を警戒して、姿を現したゴーストが後ろへ下がる。
推薦レベル10だが、武宮達は2人だけの少数パーティー。
推薦レベルは上振れで感じた。
武宮の俊敏はユニークスキル「愛の手料理」補正によって、15以上に相当する値になっている。
それでも動きは互角か、ゴーストがそれ以上。
なによりも、いちいち姿を消すのが厄介であった。そこで大きなアドバンテージをとられて、戦いづらい。
さらに、ゴーストの体が一瞬だけ、緑色に輝く。
武宮が舌打ちをした。
「基本攻撃には、HP吸収効果付与か……これだけの攻撃力で吸収持ちは、結構ヤバいな」
五十嵐が声を上げる。
「その分、ゴーストは耐久がそんなに高くないから。なんとか一度足止めして、すーくんの攻撃が当たれば、すぐにやられるはずだよ!」
「ああ! わかっている!」
考えがないわけではない。
武宮は再びゴーストの元へと突っ込む。ゴーストは武宮の攻撃力を警戒するように、回避に専念して、慎重な立ち回りをしている。
「ファイアボール!」
ゴーストは五十嵐の放った魔法も、間一髪であったが回避。
そして――再び、その姿を消した。
武宮は前へ飛び出しながら、左手をまっすぐに伸ばす。
「逃がすか! トレースアーツ、起動――ポイズンブレス!」
左手を中心に、緑色の魔法陣が広がる。
ポイズンブレスはツインコカトリスが使っていた技だ。
二本の顔から放たれるブレスは、そこそこの広範囲へ渡って毒効果を撒く。姿を消したゴーストへ命中、毒が付与される。
協会の資料には書かれていた――ゴーストは被ダメ、あるいは攻撃をする時に、姿を消すスキルが解除されると。
よって、ポイズンブレスの攻撃に当たったゴーストは、姿を現した。
武宮はそこへ目掛けて再び飛び込み、斧を振り下ろす。
「うらぁ!」
どすん、と重たい一撃がゴーストを襲う。
「ごぉぉぉぉっ!!!」
ゴーストは悲鳴のような音を上げ、ばふ、と黒い影が消えた。白く長いローブだけが、その場に残る。耐久の低いゴーストでは、高い攻撃力から放たれる武宮の一撃に、耐えられなかったようだ。
そしてシステム音が、レベルアップを告げる。
『――武宮 昴のレベルが7へアップしました。HP+50、MP+1、攻撃力+17、防御力+10、俊敏+6、魔力+1、精神力+8』
『――五十嵐 桃のレベルが7へアップしました。HP+63、MP+12、攻撃力+16、防御力+16、俊敏+14、魔力+17、精神力+15』
『――五十嵐 桃の剣術のスキルLVが2へ上がりました』
「うし! レベルが上がったか」
ただ一つ、気になることがあった。
(桃は相変わらず優秀だから、スキルレベルもどんどん上がるけど、俺は初喫食ボーナス以外では上がらないよな。そういう制限なのだろうか……仮にそうだとしたら、レアモンスター狙わないとキツいな。あるいは、試したことはないがボスモンスターに期待か……)
「お疲れ様、すーくん。ごめんね、私、あんまり役に立てなかった」
「そんなことないだろ。助かったよ」
「ポイズンブレス、口から出すわけじゃないんだね。すーくんの口から出たら、ちょっと可愛くて面白かったのに」
「ごめん。色々となにを言っているんだ?」
五十嵐が回復魔法を唱え、わずかに下がった武宮のHPを回復。
そしてその後、ゴーストの死体へと近づき、ローブにナイフを当てた。
見た目はローブだが、生き物でいう肉体のようなもの。
ロープは魚の身のように、すうう、と切れた。
「はい。どうぞ、すーくん。あーん」
「……あーん」
顔を赤くしながら、はいあーん、スタイルで食べる。味はほんのりと甘く、イカに近い食感と味であった。食べているのはゴーストだが、歯ごたえもあってクセがなく、食べやすい。
『――グルメリストにゴーストが追加されました。初喫食ボーナス、MP+5、俊敏+5、魔力+5加算されます』
『ゴーストの「ステルス」がスロットに追加されました』
「お! スキル貰えたぞ!」
武宮が喜々として、ステルスの説明文を開く。
ステルス 消費MP50
自分の姿を消すことが出来る。ただし、物音や気配を消すことは出来ない。攻撃をする時、攻撃を受けた時は効果が解除される。効果時間は20秒。クールタイムは5秒。
(クールタイム5秒か……MP問題さえなければ、こまめに打てるな)
攻撃をする時に解除されるとはいえ、戦っている相手の姿がしょっちゅう消えるのは、強力なトリッキー戦法になるだろう。
ちなみに、気配遮断スキルとの違いは以下の通りだ。
気配遮断
・一度相手に意識・視界を向けられてしまうと、発動してもほぼ意味はない。
・ただし、意識・視界に入っていない相手には強く、気配・物音・姿共に消すことが出来る。
・探知能力と同レベル以下だと見破られる。(例・探知能力LV10と気配遮断LV10だと、見破られる。探知能力LV9と気配遮断LV10だと、気配遮断が成功する)
ステルス
・一度相手に意識・視界を向けられても、発動すれば姿を消せる。
・ただし物音・気配は消せず、なおかつ攻撃、被ダメで解除されてしまう。
・探知能力には弱く、LV1でも見破られる。
まとめると奇襲性は気配遮断、汎用性はステルスが優れるといったところだろう。
「強そうだね~。気配遮断の私と同時に奇襲攻撃とかも、しかけられそうだね」
「お、たしかに。より狩りが楽になりそうだな」
五十嵐の言う通り、取って損はないスキルだったようだ。
「あとは……ナイトスライムが出たら、ついでに食べたいな」
武宮の言葉に、五十嵐はこくりと頷いた。夜限定で出てくるスライムが、ナイトスライムだ。通常のスライム達との色違いで、性能に差はない。
初喫食ボーナス狙いで、森をもう少し歩く。
すると狙い通り、ナイトスライムが現れた。ぼよよん、ぼよよん、と弾みながら移動をしている。武宮はそこへ猛スピードで近づき、斧で一閃した。
「おりゃ」
ナイトスライムは一撃でやられ、ぐて~、と伸びる。五十嵐がスライムを切り、こちらもはい、あーん、形式で食べた。
『――グルメリストにナイトスライムが追加されました。初喫食ボーナス、MP+5、精神力が+5加算されます』
「おし。今日は、こんなもんにしないか? ……腹が減ってきた」
ぐ~、と武宮のお腹の虫が鳴く。
今世ではかなり食いしん坊だ。初喫食ボーナス、料理ボーナス狙いでモンスターをつまみ食いしているが、武宮の胃袋にとっては、なんの足しにもならない。
「ふふふ、じゃあ、帰ろっか」
「ああ。もう夜遅いし、外で食べていくか」
「そうだね。だから……今夜は」
五十嵐は後ろ手を組んで、顔を赤くしながら言った。
「デート……だね」
本日の初喫食+料理ボーナス 合計値
H20 M50 攻60 防20 俊5 魔5 精5
武宮 昴 18歳 男
レベル7
HP 370(+55)
MP 8(+85)
攻撃力 118(+190)
防御力 80(+40)
俊敏 36(+145)
魔力 8(+30)
精神力 52(+50)
スキル 斧術LV1 状態異常耐性LV1 スーパーアーマーLV1 トレースアーツEX
五十嵐 桃 18歳 女
レベル7
HP 424
MP 103
攻撃力 108
防御力 106
俊敏 88
魔力 114
精神力 99
スキル 剣術LV2 回復魔法LV2 探知能力LV1 気配遮断LV3 攻撃魔法LV1 愛の手料理EX




