ゴーストを食え! 前編
いつも通り受付でステータスを提示し、ゲートへ向かう。その道中、五十嵐が疑問を口にした。
「すーくん、不審に思われないね。尖った配分で、すごいステータスだと思うけど」
ステータス提示は、伏せればスキルが見えない。そして提示義務があるのも、基礎ステータスとレベル、名前、年齢までだ。
しかし今や、武宮の攻撃力の合計値は231、俊敏の合計値も170とレベル6にしてはかなりの高水準だ。
この2項目だけ、随分と高いですね、ぐらいは言われても良いはずなのだが、それすらもない。
「ユニークスキル「愛の手料理」で上がっている(+○○)の部分は表示切替が出来るんだ。万が一目立つとめんどくさいし、とりあえずは隠そうかなって」
武宮としては、今世は定時に帰り、メシ食って、腹いっぱいになって寝られればそれで幸せだ。
一旦、目立つような行動は避ける、という方針である。
「そういえば、スーパーアーマーみたいなバフは、元の値参照になっちゃうのかな……」
「まあ、それはこれから試してみよう」
「うん」
ゲートを潜り、フィールドへ。草原へと出る。武宮はさっそく、自身へスーパーアーマーをかけた。
うっすらと、体へ薄い青い光が張られる。
消費MPは40。MPが42→2へ一気に減ってしまう。
時間経過でMPは回復するが、少し燃費が悪すぎる。料理ボーナスをMPへ振ってもいいかもしれない、と武宮は考えた。
そしてスーパーアーマーの数字をメニューで確認……。
スーパーアーマー HP71
「えーっと。これは、合計値を参照しているな」
「おっ! やったね、すーくん」
「ああ。元の値なら、ちょっと残念だったからな……」
そして2人は武器を取り出し、狩りを開始した。
コカトリス、ゴブリン……昨日狩ったモンスターと戦っていく。レベルが上がり、武宮のステータスも上がったおかげで、より倒しやすくなった。そして、それらを1口食べる。とりあえず、料理ボーナスを5つ獲得した。武宮はメニューを開き、ステータスを振った。
「……MP40、攻撃力60でいくか」
そしてその40のMPで、五十嵐へスーパーアーマーをかけた。
「あっ。ありがとう……大好き……」
「ま、まあ、まだレベル低いスキルだから、それほど期待は出来ないけどな」
1人しか対象に出来ない上、クールタイムが60秒。しかもMPが基本、足りていない。
まだ実用レベルではないだろう。
「よし。食べたことないやつ来い……みんな食ってやる」
ダンジョンのある森の方へ歩きつつ、狩りを続ける。
☆
森の中へ入ると、丸々と太った二足歩行のネズミが現れた。目つきが鋭く、脂肪に膨らんだ灰色の肌を揺らしながら、こちらへ突撃してくる。数は4体。しかし見た目通りその動きは遅かった。
「チ゛ュゥゥゥゥ!!!」
さらにくぐもり気味の、奇妙な鳴き声。
攻撃も鈍いため、被ダメなしで特に苦戦せず、撃破した。
4体とも瞳の色が異なり、緑、青、黄、赤の4色である。
通称、ビッグラットシリーズと呼ばれるこのモンスター。あんまり強くないのに、レベル効率も悪くないので、初心者へレベリングとしておススメされる。ただ、ビッグラットシリーズは食材としては微妙で、また、調合などクリエイトの材料としても使い道が乏しいようで、死体がたった500円とかなり安い。
「これも食べるの、すーくん……?」
「食えるんだし、まあ、ステータスのためだ」
五十嵐はまたしてもやや嫌そうにしながら、4体のビッグラットを焼き、肉を武宮へ与えた。
味のないガムを食べている気分だった。
『――グルメリストにビッググリーンラットが追加されました。初喫食ボーナス、HP+5、防御が+5加算されます』
『――グルメリストにビッグブルーラットが追加されました。初喫食ボーナス、HP+5、防御が+5加算されます』
『――グルメリストにビッグイエローラットが追加されました。初喫食ボーナス、HP+5、防御が+5加算されます』
『――グルメリストにビッグレッドラットが追加されました。初喫食ボーナス、HP+5、防御が+5加算されます』
「初喫食ボーナスも、1つ1つは小さくても、積み上がると大きいな」
五十嵐が武宮の画面を覗き込む。
「すーくん。今日から初喫食ボーナスと料理ボーナスをまとめてみない? 1日でどれだけ上がったのか、把握してみるの」
「お、それいいな。やってみるか」
メニューのメモ機能を使って、五十嵐が武宮の初喫食&料理ボーナスの合計値を集計していく。
そんなことをしつつ、安定した狩りでどんどん突き進んでいく。
やがて日が落ちはじめ、辺りは暗くなった。
「視界が悪くなるな……」
「待ってて。ライトストーンを使うから」
アイテムボックスから、購入した石を五十嵐が取り出す。
そして「ライトストーン」と呼ばれる、白く丸い見た目の、石のアイテムを使用した。
石は使い切り。パリンと割れると、五十嵐の周囲が明るくなった。
白い光ではっきり見えるのは、およそ10メートル。それ以上遠くは暗闇ではっきりとは見えないため、過信は禁物だ。
「さて。ゴーストは出るか……」
そんなことを呟きつつ、移動していた時であった。
突如、五十嵐が富田の隣へ剣を振った。
スキル「察知能力LV1」が――ゴーストの奇襲を知らせたのである。
「ぶぉぉぉぉ~~~……」
五十嵐の攻撃によって、炎が燃え盛るような音と共にゴーストが怯む。
白く長いローブによって包まれている、不気味な黒い影の塊。ふわふわと宙を舞い、ローブの裾からは盾のように大きな黒い両手が2つ。爪も鎌のように鋭く長く、ゴーストの名に相応しい奇怪な見た目であった。




