転生おしゃか
目を開けると、そこは薄ぼんやりとした世界だった。
辛うじて、誰かがコチラを覗き込んでいるのだけが分かる。
「――! ――――!」
その誰かが突然叫んだ。
おそらく、人を呼んだのだと思う。
「あー、うーあー」
試しに声を発してみるが、それが言葉になる事は無かった。
仕方なく、重たい腕をなんとか伸ばして天井に指をさしてみる。
「――!――――!」
「――!」
いつの間にか声が増えていた。
低いの声と高いの声が一つずつ。
おそらく両親のものだと思われるその声に反応して、俺は再び声を発してみる。
「えー、あーえぇ」
やはり言葉にはならなかったが、その行動が功を奏したのか俺の身体が突然の浮遊感に包まれる。
どうやら、女性の方に抱き上げられた様だ。
女性の心音とユラユラとした心地のよい揺れを感じていると、次第に睡魔が襲ってくる。
やっぱり赤ん坊の体というのは何かと不便なんだなぁ……とそんな事を思いながら、俺はゆっくりとその睡魔に身を委ねていった。
◆◆◆◆◆
「残念ながら、キミは死んでしまった」
どこまでも真っ暗闇な空間で、蝋燭を持った黒いローブ姿のソイツはそう宣告する。
この暗闇でなんで蝋燭1つだけなんだとか、そもそもここはどこなんだとか、そんな事を聞く余裕すら今の俺には無かった。
そうか……俺、死んだのか……
「突然の事でショックが大きいかもしれない。しかし、そんなキミに一つ提案をしたい」
「提案……? いや、そもそもオマエは一体何者なんだよ? 神様かなんかなのか?」
そう聞くと、ソイツは口角を大きく吊り上げニヤリと笑った……様に見えた。
「あんなのと一緒にしないでもらいたいね。私はただの死神だよ」
「死神ぃ?」
目の前の死神と名乗ったソイツの姿をよく見てみる。顔はフードで半分隠れていてよく見えないし、持っている物も鎌などではなく燭台のみ。
死神っぽく見える部分を強いて挙げるのであれば、ソイツの着ている黒いローブだけだった。
「つーか、オマエが死神って事は……俺を殺したのは――!」
「おいおい、そんな物騒な真似をするはずがないだろう? 私は死んだキミの魂を此方に連れてきただけさ」
「…………そうか」
「それに、キミの死因は溺れた犬を助けようと川に飛び込んだからだ。そこに私は一切関与していないよ?」
言われて思い出す。
そうだ……確か俺は、登校中に橋の上から見えた溺れている犬を助けるために――――
「それで、提案の話なんだけれどね?」
「ああ、そうだった。死んだ俺なんかに何を提案しようって言うんだよ?」
死神は何が楽しいのかまたもニヤリと笑みを浮かべながら言った。
「キミ、異世界転生とか興味ないかい?」
転生。つまりは生まれ変わり。それも異世界ときた。
異世界転生と言えば、昨今のライトノベルやマンガなんかの創作でよく見かけるアレだ。
転生の特典としてチート級の能力を手に入れたり、なんか変にチョロいヒロイン達を落としてハーレムを築いたりするヤツ。
それに興味がないか、だと?
そんなの…………
「あるに決まってんだろっ!」
力強く叫ぶ。
誰だってそういう世界に憧れるはずだ。
しかも、既に元の世界では死んでしまっているのだから、殊更にそう思う。
「それは良かった。では、キミを異世界に転生させてあげよう」
「……ちょっと待った。俺の行く異世界がどんな世界なのかって聞いてもいいか?」
俺は死神にそう尋ねる。
異世界は異世界でも、ディストピアやデスゲームみたいな世界だと流石に困る。
というか、生き残れる自信が無い……いや、不死身の能力とかがあればわりといけるか?
とりあえず、どんな世界観なのか少しでも情報が欲しい。
「ふむ、それでは説明しようか。キミが行く世界は剣や魔法を扱う貴族社会の王国。王道的なファンタジー世界だね。1000年前に封印された魔王の復活が迫っており、勇者や聖女の誕生が待たれている……そんな世界観だ」
「俺の生まれは? まさか孤児スタートとかじゃないよな?」
「ああ、その点は心配しなくてもいい。キミは王国でも有数の魔力量を持つ伯爵家の生まれだ。領地内の館で産声を上げる事だろう」
「なるほどな……」
「齢15になると、王都の貴族学校に3年間通う事になる。そこに聖女も現れるはずさ。まあ、どう動くかは全てキミ次第だけれどね」
「つまり、その聖女様とやらがメインヒロインって事か」
まるでゲームの設定の様だと感じつつ、異世界転生なんてそんな物かと諦念する。
「さて、そこでキミには此方をプレゼントしよう!」
そう言って死神は菱形の青い石を取り出した。
そして、それを俺の掌の上に置く。
「その石はキミの願いを叶え、どんな能力でも一つだけ授けてくれる。簡潔に言ってしまえば、『転生特典』と呼ばれるものだね」
なんだって!? 今、どんな能力でも手に入れられるって言ったよな!?
つまり、俺の好きな様に特典を選べると?
なんだよ……すげぇ太っ腹じゃん!!
「ああ、但し。願いの数を増やそうとするのだけは禁止だ。それを願うと石は砕け、必然的に特典なしで転生する事になるからね」
「いや、別にそんなズルしようとか思わねぇけどさ。でも、何でそんな仕様なんだ?」
「大昔に、願いの数を無限にして数多の世界を荒らし回った転生者が居てね。それ以来、願いを増やす系のものは全面的に禁止されたのさ」
「うっわ、はた迷惑な奴がいたもんだなぁ……」
さて、そうなるとどんな特典にしようか?
一つだけとはいえ、どんな物でも手に入れられるとなると選択肢が多過ぎて迷ってしまう。
魔法ががある世界だし、いっそ魔力量を無限とかにしてみるか? ……いや、それだと俺が魔王の生まれ変わりだ〜とか勘違いされるかもしれない。
特殊な武器を……っていうのもどこか味気ない気がする。
それとも知識系の方が良いか? 最初から魔法や異世界そのものについての知識があるのは色々と役に立つだろうし……
それから数十分程悩み続け、遂に俺は転生特典を決定した。
「願いは、全ての魔法適性をMAXにして欲しい!」
俺が石を握りしめてそう言うと、青く眩い光が放たれる。
そして、その光が収まると、手の中にあった筈の青い菱形の石はどこかへ消え去ってしまっていた。
「おめでとう! キミの願いは確かに叶えられた。しかし、まさか魔法適性を上げるとは思わなかったよ」
「魔力量を上げたり、特殊な武器を持ってたりすると、変に疑われたり誤魔化したりするのが面倒くさいからな」
「なるほど。その点、適性の方なら特に問題にはなりにくいと踏んだわけだね?」
死神の言葉に頷く。
適性だけなら覚える魔法を吟味して戦うことができるし、変に疑われる可能性は低い筈だ。
それに、使ってみたい魔法があったのに適性がなくて扱えないってなるとショックだしな。
「では、後ろのゲートを通りたまえ。それで転生する事ができる」
そう言われて後ろを振り向くと、そこにはいつの間にか真っ白なゲートがあった。
ここを通り抜ければ転生ができる。
つまり、チートハーレムでウッハウハな新しい人生が待っているという事だ。
俺はゴクリと喉を鳴らし、歩みを進める。
「キミの新たな人生に祝福を!」
死神のその言葉を受け、俺はゲートへと足を踏み入れた。
「…………ああ、完全に言い忘れていたのだが、赤ん坊からのスタートだよ」
そういう大切な事は先に言ってくれ!!
◆◆◆◆◆
そんなこんなで、俺は無事に転生する事ができた。
シャーキア王国のルタ・アマツガとして。
いやー、やっぱり赤ちゃんスタートはキツいって……
中身が元高校生男子というのもあり、母親や乳母から母乳を貰うのや、オシメを変えてもらうのに若干抵抗があった。
まあ、赤ちゃんである俺が羞恥心で抵抗をした所で無意味なのだが……
そんな黒歴史を乗り越え、1歳となった今日この頃。
やっと少しずつ言葉を話せる様になってきた。
「ほ〜ら、ルタちゃ〜ん。お母様ですよ〜」
「……お…おああ、あま?」
「っ!? あ、アナタ! 今この子お母様って!」
「おおっ! 凄いじゃないか! では、ルタ。私の事はお父様と。お・と・う・さ・ま、だよ?」
「お……おおう、あま?」
「おお、なんてことだ。この子は天才かもしれないな!」
わりと親バカらしい両親とそんなやり取りを交わしつつ、俺は言葉を覚えていく。
流石にまだ立って歩く事は出来ないが、ハイハイで移動することだって出来る様になった。
……まあ、夫婦仲が良好なのは単純に嬉しい。
変に不倫や家庭内暴力を心配する必要がないからな。
それに、この両親なら子供にキツく当たったり、道具扱いするなんて事もないだろう。
とりあえず、今の目標は歩ける様になる事だ。
ハイハイだけではあまり遠くまでの移動は出来ないし、誰かしらに捕まってしまう事が多々あった。
折角、全適性最大なんていうチート特典を持っているのに、これでは魔法の練習をするどころか本を探して読むことすらままならない。
という事で、先ずは掴まり立ちから始めていこうと思います!
◇◇◇◇◇
あれから2年。
ついに3歳へと成長した俺は、館内の図書室へと毎日足を運び、魔法の本を読み漁っている。
アマツガ伯爵家の蔵書は深く、古今東西のありとあらゆる魔法に関する書物が置かれていた。
一般的な属性魔法から、回復や浄化系の聖魔法。更には毒魔法や石化魔法といったデバフ系の魔法も存在している事が分かった。
とりあえず、一通り属性魔法を試してみたが……流石は全魔法適性最大チート。
ただ呪文を唱えるだけで、炎や水、風なんかを掌から簡単に出す事ができた!
まあ、初っ端で炎を出した時に図書室が燃えそうになったのは御愛嬌という事で……
大丈夫! ちゃんと直ぐに消化もしたし、全力で探し出した修繕魔法を使って、少し焦げた床も元通りにしてあるからな。
で、こう毎日毎日図書室に入り浸っていれば、その内両親や執事、メイド達も不審がる訳でして……
「何をやっているんだ、ルタ?」
「あっ、おとうさま……」
俺が勝手に魔法の本を読んでいるのがバレました。
「なるほどな。図書室で魔法関連の本を見つけて、興味を持ったから毎日あそこに忍び込んでいたと?」
「はい……ごめんなさい……」
「なに、謝る必要は無いさ。しかし、血は争えんなぁ」
「え?」
「ここにある本は、私が幼少期の頃から集め続けてきた物だ。私も魔法に興味があり、気が付けば館内に図書室を作れる程にまで収集していたよ。勿論、小説や絵本と言った一般的な本もあるがね」
父がそう言いながら、本棚の最上段から一冊の分厚い本を取り出す。そして、それを軽く撫でてから俺の方に渡してきた。
そこには、『初級魔法大全』と書かれていた。
それも、背表紙の一番下に小さくアマツガ家の家紋が入っている。
「ルタ、ソレは今日からお前の物だ。私が完成させたその本には、世界中の初級魔法を書き記してある。よく学ぶといい」
そう言って、父は図書室を後にした。
…………いや、どこの前作主人公ですかお父様。
え、マジで? この本ウチの父親が作ったの?
しかも、コレが『初級』って事は『中級』や『上級』もあるって事!?
驚愕の事実に狼狽えながらも、俺は貰った本を開く。
そこには、この図書室で見つけたありとあらゆる魔法や、まだ知らなかった新しい魔法について事細かに記されていた。
それも、父による分かりやすい注釈や応用方法の説明付きだ。
これ、魔法の入門書として高値で売れるレベルなのでは?
それからというもの、俺は自室でその本を読み続けた。
本の内容としては魔法そのもの起源や存在に関する話から始まり、魔法の属性や種別について、魔法適性や魔力についての説明なんかが順番に記されており、本当に初心者向けの入門書といった感じだ。
しかし、その後に記されている各種魔法の章では一気に専門的な内容になっていた。
新しい魔法は勿論の事、既に図書室で見知っていた魔法についても父の説明書きによって知見を深めることができている。
魔法学校とかあるなら、絶対教科書にされてるだろこの本。
そんなこんなで、完全に本の虫と化していた俺だったのだが……
「ルタちゃん! 町へお出かけしに行きますわよ!」
ある日、母の鶴の一声で領地内の町へと連れて行かれる事となった。
流石に、本を読む為とはいえ3歳で外へ遊びにも行かず、完全に引きこもり状態の息子を見過ごすことができなくなったらしい。
突然の事であれよあれよという間に外出の準備を整え、変装とまではいかない程度のそこそこ地味めな服装に着替えさせられた。
そうして、俺は初めてのお出かけと称して、町へと足を踏み入れる。
アマツガ家の領地は自然豊かな農耕地帯である為、町そのものは少し栄えた田舎町といった感じだ。
食べ物は勿論、服や薬、本や宝石なんかも売っていはいるのだが、剣や鎧といった武具の店は1〜2軒程度しか見当たらない。
寂れてはいないがそこまで賑わってもいない、という印象だった。
しかし、中央広場の方へ行くとその認識は覆された。
市場や屋台が立ち並ぶその広場は商人や買い物客、走り回る子供達で賑わっていた。
「すごい……」
「さあさあ、ルタちゃん。色々なお店を見てまわりましょうか!」
母に手を繋がれたまま、服やアクセサリー、屋台やカフェ等様々なお店へ連れて行かれた。
正直、現在3歳児の身としては日頃の運動不足も祟って、もうヘトヘトである。
あと、意外とウチの母はアグレッシブな様だ。
今も噴水のベンチで楽しそうに、屋台で購入したお菓子を食べている。
隣で息子が若干グロッキー状態なのにそれでいいのか母よ……
そんな俺と母のもとに、1人の少女がやって来る。
「お花、1本いかがですか?」
色とりどりのバラが敷き詰められたバスケットを持ち上げながらそう聞いてきた。
「あら、綺麗なバラですわね。貴女が育てたの?」
「はい、パパとママと一緒に!」
歳は俺よりも少し上の5〜7歳程度に見えるのに、意外としっかりしているなという印象だ。
3歳児が何をと思われるだろうが、俺は転生者だしな。
「そうねぇ、それではウチの息子に1本戴けるかしら? 色は貴女が選んで構いませんわ」
「わぁっ! ありがとうございます!」
お礼を言った少女は、俺に向かって白いバラを手渡してくる。
「トゲは取ってあるから大丈夫だと思うけど、気をつけてね!」
「ありがとう、おねぇちゃん」
「あ、私の名前はポーギカっていうの! ポーって呼んでね!」
「ルタだよ、よろしくねポーおねぇちゃん」
花を受け取りながらそんなやり取りをする。
その後、代金を貰ったポーはもう一度お礼を言い、大きく手を振りながら去っていった。
「良かったわね〜、ルタちゃん。可愛い女の子からお花を貰えて〜」
「いやいや、おかあさまが買ってくれたんですから、この花はおかあさまから貰った物なのでは? あっ、買ってくれてありがとうございます」
「んもう、この子はどうしてこうも頭が固いのかしら? まったく、頭が良いのも困りものですわね」
そう言いながら、母はため息を吐いた。
いやまあ、中身は元々高校2年生だったのでね……
そうして、俺の初めてのお出かけは終了したのであった。
因みに貰ったバラは花瓶に差して、俺の部屋に飾られました。
◇◇◇◇◇
1年後。
俺は4歳になった。
といっても、4歳時にできることなんて限られているので、俺は相変わらず自室に籠もって魔法の勉強をしていた。
しかし一つだけ変わったことがある。
それは週に一度の頻度で町へ出かける事だ。
最初は母に連れられて月に一度程度だったのだが、図書室の本の中にあった設置型の転移魔法を覚えてからは週一で出かけている。
まあ、護衛も付けず一人で勝手に出かけるせいで周りからはヤンチャ坊主だと思われてそうだけどな。
町ではポーを含めた子供達と仲良くなった。
今では皆で秘密基地を作り、そこで遊ぶ事が多くなっている。
ついでに、転移ポータルとしても活用してたりする。
図書室から秘密基地付近までひとっ飛びなのでとても便利だ。
そんな感じで、すくすくと健やかに成長を重ねていたある日の事。
「ルタ、明日から王都に向かうから準備をしておきなさい」
突然、父にそう言われ困惑してしまう。
母は執事やメイド達と忙しなく荷物をまとめていた。
そんな二人に詳しく話を聞いてみると、どうやら王都で開かれる国立記念パーティーに俺も含め家族三人で参加する事になったらしい。
俺が生まれる前後の頃は父だけが出席していたのだが、今回は国王様の計らいで同い年の子供達も多く集まるらしく、良ければ俺も連れてきてはどうかと招待状に書かれていたんだとか。
両親の話を聞く限りでは、末っ子の王子様と王女様も参加するとの事。
……この世界、双子って大丈夫なのか?
よくある、災いが起きるとかなんとかで忌み嫌われてたりしないだろうか?
まさか、不遇な思いをしているからこそ、このタイミングで出会う事になるとか?
……ああ、なるほど。
つまり、俺の親友とヒロイン候補って事か!!
しかも王族。貴族的なコネの為にも、その二人と仲良くなっておくに越したことはないだろう。
そんなこんなで、俺は両親と共に始めての王都へと向かった。
馬車によるそこそこ長い旅路ではあったものの、道中ほとんどを寝て過ごすか本を読んでいた俺にはそこまでの苦ではなかった。
まあ、そんな俺のいつも通りな姿に両親が少し呆れていたのは御愛嬌という事で……
王都に辿り着き、そのままアマツガ家の別邸へ。
そんなに使われていないのか、あまりにも綺麗なその館で一泊することに。
次の日。
子供用の礼服に着替え、いよいよ国立記念パーティーが行われる王城へと向かう。
社交界デビューというには早すぎる年齢ではあるものの、今回はそこまで堅苦しい物でもなく、子供同士の顔見せ程度の意味合いなのだと母が言っていた。
まあ、前世のこの手の創作でよく見かけた、お茶会の規模が大きくなったものだと考えればいいだろう。
王城へと到着し、案内されるがままパーティーが行われている会場へ。
しかし、そこはまるで地獄の様な場所だった。
まず、大人達は挨拶回りから始まり、腹の探りあいや自慢話、マウントの取り合いで忙しくしていた。
たまに愚痴や陰口の様なものまで聞こえてくる始末。
国王様や王妃様はまだ来てはいない様だが……やはり汚い大人達の会話を聞いているとどこか不快感に襲われる。
極めつけは、俺を含む王城に集められた貴族の子供達がいる一角だ。
両親と別れ、王城の執事に壁際のあまり目立たないテーブルへと誘導されたのだが……
なぜか既に泣き出している子。溢れるのも気にせずバクバクと料理を食べている子。なんか壁際で眠っている子。ワガママを言って駄々をこねている子。ボーっと玉座の方向を見つめている子。そして、会話に花を咲かせている子達が多数。
うん、カオスだな。
さて、誰に話しかけようか……と悩んでいると、一人で壁にもたれてため息を吐いている長い黒髪の少女がいた。
一瞬、壁の花という言葉が思い浮かんだが、しかし彼女の姿はどこか様になっていた。
そして、彼女のカラスの濡れ羽の様な美しい黒髪にどこか親近感を覚えた。
やはり、前世が日本人だったからだろうか?
俺はその子に近づいて話しかける。
「初めまして、ボクはルタ。ルタ・アマツガだよ」
「……どうも初めまして、ラーヤ・ソーダといいます」
ソーダ? 聞いたことのない家名だ。
いや、単にウチと関わりが少ないだけだろうか?
「なんだかラーヤは落ち着いてるね。さっきもため息を付いていた様に見えたけど、他のみんなとおしゃべりしたりしないの?」
「……興味ないです。それに同い年とはいえ、あんなに子供っぽい方々と話す事に意義を感じないので」
なんかマセてる子だなぁと思いつつ、俺は自分に指を差しながら尋ねてみる。
「じゃあ、ボクは?」
「アナタは少しはマシに見えますが……しかし、馴れ馴れしく名前を呼び捨てになさるのはいかがなものかと」
「おっと、ごめんね? 名前で呼び合った方が仲良くなれると思ったんだけど、ラーヤさんが嫌ならやめるよ」
「……別に、嫌とは言っておりません。お好きなように呼ばれれば良いのでは?」
えっ、なにそれ可愛い!
もしかしてこの子、この歳で既にツンデレの才能が?
「じゃあ、ラヤって呼ぶね!」
「誰が短くして良いといいました!?」
「だってその方が言いやすいし、もっと仲良くなれそうな気がするでしょ?」
「なんですのそれ……」
そんな話をしていると、突然会場のざわめきが大きくなった。
どうやら、国王様と王妃様が入場されたらしい。
俺が玉座の方に目を向けると、初老の金髪の男性と黒髪の女性が既に座っていた。
あれが王様と王子様なのか。
そこでふと疑問に思う。
あれ? たしか、双子の王子と王女も出席するんじゃなかったのか?
俺は玉座の方とこの会場を見渡してみるが、どこにもそれらしき人物は見当たらない。
途中でグズって来なくなったとか?
うーん、せっかく王城まで来たんだから一度ぐらいは会っておきたいんだよなぁ〜。
という事で、俺はパーティー会場をこっそりと抜け出し、双子の王子と王女を探すことにした……までは良かったんだけど。
「なんでラヤまでついて来るの?」
「だって、あのままあそこに居ても退屈なだけですもの。それにアナタが何かしでかさないか見張らないといけないでしょう?」
「そんなにボクがやんちゃ坊主に見える?」
「どの口が仰るのかしら?」
まあ、うん。否定はしないけどさ……
というか、ついて来てる時点でラヤもあんまり他人の事言えないんじゃないかなぁ?
という事でラヤと2人で王城内をこっそりと探検する。
流石は王城。アマツガの家なんかよりも広くて綺羅びやかである。
これぞまさに豪華絢爛というのに相応しいだろう。
そうして俺とラヤは城の入り口付近、大きな階段のある場所へと辿り着いた。
そこには真っ赤な絨毯と数多くのシャンデリアに加えて、装飾の施された壺や像が飾られており、その正面の壁には現国王陛下の肖像画が飾られていた。
そして、階段の下には城内に入った時に通った城の出入り口が見える。
因みにこの階段、登る時に段数を数えてみた結果、なんと五十段もあった。
「いろいろな場所を見て回ったけど、やっぱりここが一番豪華な気がするね」
「当然ですわ。なにせここは王城の正門ですもの。王城に足を踏み入れた誰もが最初に通って目にする場所なのですから、それはもう一番豪華で美しくなければならないでしょう?」
「なるほど、確かに。王族の威厳を示すにはこういうのが丁度良いのかもしれないね」
俺がそう言ってラヤの方を見ると、彼女ははどこか複雑そうな表情を浮かべていた。
なんだ? 4歳の女の子がこんな表情をするなんて、王族との間に何か家系的な問題でもあるのだろうか?
ラヤはかなりしっかりしてそうだから、そう言うので思い悩んでいても可笑しくはないのかもしれない。
4歳児なのに気苦労が絶えないとか、貴族社会は大変なんだなぁと自分の事は棚に上げつつそんな感想を抱いた。
「おい、そこのお前。こんな所で何をしてるんだ!」
俺とラヤが王様の肖像画を見ていると、横から声を掛けられる。
そちらを見ると、同い年ぐらいの金髪の少年が腕を組みどこか不遜な態度でこちらを睨みつけていた。
「何をしているのかと聞いてるだろ!」
「ダナン、少し声が大きいですわ。もう少しお静かに――――」
「ラーヤは黙ってろ! お前だよお前!」
そう言って、俺に指をさしながら怒り心頭といった様子で近づいてくる。
どうやらラヤとは知り合いらしいが……
「えっと、何か用?」
「なんだその言葉使いは!? 礼儀というものを知らないのかお前は!」
いや、君に言われたくないんだけど?
どう考えても、そっちだって礼儀がなってないでしょ。
どうにも話が通じなさそうなので、俺はラヤに聞いてみることにした。
「ねぇ、ラヤ。この子どういう知り合い? 友達とか?」
「はぁ……これは私の――――」
ラヤがそこまで言った瞬間、それは起こった。
「下級貴族の分際でラーヤに近づくな!」
ダナンと呼ばれた少年が俺の身体を強く押した。
それだけなら俺がただ転ぶだけで済んだ話だろう。
だが、事態は急変する。
どうやら、ダナンは怒りによって無意識に魔法を暴発させたらしく、俺の身体が勢いよく階段の方へと吹き飛んだ。
突然、世界が遅く感じる。
階下へとゆっくり落下していく俺。
視界の先では、ラヤとダナンが目を丸くして驚愕の表情を浮かべているのがなんとなく見える。
頭の中で前世の記憶に加え、4年と少しの今世の記憶が一気に駆け巡った。
あれ? 走馬灯ってやつか、これ?
どうして?
いや、よくよく考えてみれば俺の肉体は今4歳児で……
この階段の段数は上から下まで五十段もあって……
コンマ何秒かの思考の末に辿り着いたのは、明確に近づく死へのカウントダウン。
マズイ。
マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズ――――
ゆっくりと落ちていく中で、焦っていた思考を無理やり切り替える。
そう、魔法。俺には魔法がある!
風属性の魔法で体を浮かせば、助かるはずだ!
運が悪くても、大怪我程度で済む筈。
魔力を練り上げろ。両手から少し風を出すだけで良い。そうすれば、俺の命は助かる!
そうして俺は、落下していく身体を無理やり180度回転させ、両手を合わせ全力で魔法を放った。
ここで、一つだけ誤算があった。
それはルタの魔力量が日々の勉強や魔法の使用によって、通常の4歳児よりも大幅に多かった事だ。
そんなルタが魔力を練り上げ、焦って全力で風属性の魔法を放つとどうなるか。
答えは明白だった。
「うわぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!」
生み出された暴風によって、身体が再び吹き飛ぶ。
今度は後ろではなく上、つまり天井まで。
上階にまで風が吹き荒れ、ラヤとダナンも吹き飛ばされないように物を掴み悲鳴を上げている様子が視界の端に収める。
しかしその声は、風切り音によってかき消されている様だ。
そして、俺の身体は天井に勢いよくぶつかった。
「ガッ―――!」
衝撃と共に苦悶の声が自分の口から漏れ、俺の放った魔法の暴風がおさまる。
一瞬だけ、意識を持っていかれそうになった。
そして、俺の身体は重力に任せて自由落下を始める。
天井から最初にいた上階までなら、階段ほどの高さではない。
これなら落ちても死にはしないだろうと安心する。
しかし、それは甘い考えだった。
上階では魔法の暴風によって倒された像や壺の破片が散らばり、ラヤとダナンが隅で震えていた。
そして、ルタの落下地点。そこには兜を被っていた像の頭が…………
あっ、これ死ん―――――――
◇◇◇◇◇
■■■■
享年、20歳。
内訳、前世16歳+今世4歳。
◇◇◇◇◇
15年後。
アマツガ伯爵領の田舎町。
中心地から少し外れた小高い所に、一軒のパン屋さんがあった。
町でも有名なそのお店は、今日も開店前から列ができている。
辺りには焼けた小麦の芳醇な香りが漂っており、お客達は今か今かと開店を待ちわびていた。
「お待たせしました〜! アマツガベーカリー、本日も開店で〜す!」
店主である青年の声が響き、店の入り口が開け放たれた。
ドッとお客達が店内になだれ込み、各々目当てのパンや新作のパンをトングとトレーを使って思い思いに取っていく。
そうして、本日も昼前には完売御礼。
今は午後の分を焼いている最中だった。
「いや〜、毎日完売してくれるのはすごく嬉しいんだけどさ……町の皆には頭が上がらないよなぁ……」
「何言ってるんだろうね、このお坊ちゃまは……みんなキミのパンを美味しい美味しいっていつも言ってくれてるでしょ?」
「いや、それはそうなんだけどさ。ほら、やっぱりオレが元々領主の子だからさ、みんな気を使って買ってくれてるのかなって……」
店主の青年がそう言うと、白いバラの髪飾りを着けた女性が呆れた様に言う。
「そんなわけ無いじゃん。みんな、キミの作るパンが食べたくて買いに来てるんだから!」
「いやでもさ……」
「はぁ……いつからこんなに自身がなさげになっちゃったのかなぁ〜、この子は。昔はあんなに素直で可愛かったのに。ポー姉ぇポー姉ぇって私の後ろを付いてきてさ〜」
「いやいや、捏造するなよ。そんな記憶は一切ないからな? いくらオレがポーと出会った頃の事を憶えてないからってさぁ……」
そう文句を言いつつも、焼けたコッペパンにソーセージやハムサラダなんかを挟んでいく。
この店が人気な理由の一つは、店主が定期的に出す新作のパンがいつも斬新で味も絶品だからというのもあったりする。
そして、本日も実験と称して賄い代わりに新作のパンを一つ作っていた。
「フッフッフ〜。今日のは自信作だ! さあ、食べてみてくれ、ポー」
「また新作を作ったの? ホント飽きないよね……って、何これ!?」
そうしてお披露目された新作のパンは今での物と比べて更に奇抜だった。
縦に切り込みを入れたコッペパンにソースをたっぷりと使った焼きそばを挟み込んだ、いわゆる焼きそばパンである。
その炭水化物×炭水化物の暴力を目にしたポーギカが一瞬怯んだ。
「名前はズバリ、ヤキソバパンだ!」
「それ、見たまんまでしょ……」
そう呆れつつもヤキソバパンを頬張るポーギカ。
そして、目を見開きモグモグと咀嚼する。
「なにこれ、メチャクチャ美味しいよ!?」
「そうだろうそうだろう! やっぱりオレの目に狂いは無かったな〜!」
店主はそう満足気に頷く。
「はぇ〜、絶対合わなさそうな組み合わせなのにこんなに美味しいなんて……ホント、そのアイデアは一体どこから湧き出てくるの?」
「さあ? なんか、こうしたら絶対美味いって頭に思い浮かんだのを試してみてるだけだしな〜。まあ、それも今までハズしたことないけどさ」
「それだけ新作パンに自身があって、なんで自分のお店の評判には自信なさげなのかよくわかんないんだけど……」
「それはそれ、これはこれ」
そう言いながら、自分もヤキソバパンを頬張り、また満足気に頷いた。
「やっぱり、元神童は伊達じゃないって事なのかな?」
「やめろよ、神童とか柄じゃない。しかも、そう呼ばれてたのはオレが記憶を失った4歳の頃までだろ?」
「でも、あの頃のルタくんはなんかすごく落ち着いてて、魔法の才能もピカイチだったんだよ? いつも私達に新しく覚えた魔法を見せてくれてたし」
「何度も言ってるけど、一切記憶にないんだって。むしろ、ポーはよく覚えてるよな〜」
そう。店主の青年、ルタ・アマツガは4歳以前の記憶を完全に失っていた。
それを知った両親は一時期ショックで寝込んだ程だ。
まあ、その影響でルタが5歳の時に妹が生まれたんだから良かったと言えるかもしれないが……
「当たり前だよ〜。だってその頃から、私はルタくんの事が好きなってたんだもん♪」
「おっ、おう……そっか」
「あ〜、照れてる〜!」
「照れてねぇよ!」
そんなやり取りをしていると、カランッと店の扉に取り付けたベルが鳴った。
「ルタ、いらっしゃいますか?」
凛とした声が店内に響く。
どうやら、常連のお嬢様がやってきたらしい。
「お〜、ラヤ。また来たのかよ」
「あら、私がここに来るのは一週間ぶりですわよ?
また来たと言われる筋合いは無いと思いますが?」
「いやいやいや。お前は仮にも王族なんだからさ、そんなにフットワークが軽いのは問題だろ……」
「またそのわけの分からない造語を……いつも言っているでしょう? 私の行動は私自身が決めます。それはお父様やお母様、お兄様やお姉様……あの愚弟、そしてアナタであろうと指図される筋合いはありませんわ」
そう目の前の彼女、現国王陛下の末娘であるラーヤ・ソーダ・シャーキアはキッパリと言い放った。
ルタは今のをダナンが聞いたら、俺が兄だ!っていつもの様に叫ぶんだろうなと思う。
「それよりも、今日は試作品の新作パンはありませんの?」
「あ〜、それは……」
「ふっふ〜ん、今日は私が先に戴いてるよラーヤちゃん!」
そう、ラーヤを挑発する様にしたり顔で言うポーギカ。
「あら……ルタ、ダメでしょう? また意地汚いメス猫がお店に入り込んで餌を漁ってますわよ? ちゃんと駆除しておかないといけませんでしょう?」
「ちょっと、意地汚いメス猫って誰の事!?」
「さて、誰のことでしょうね?」
そんな二人のやり取りを横目に、ラーヤの分のヤキソバパンを作り始めるルタ。
まだ少しだけ焼きそばが残っていて良かったと思いつつ、手を動かしていく。
しかし、それにしても…………
「な〜んか、忘れてる気がするんだよなぁ〜」
彼のそんな呟きは、ルタの名前を呼ぶ、言い合いを続けていた筈の二人の声にかき消されたのだった。
◇◇◇◇◇
「いやはや、まさかこんな結末になるとはね」
どこまでも真っ暗闇な空間で、蝋燭を持った黒いローブ姿の死神がそう呟いた。
4歳の時の事故により、ルタ・アマツガの中にいた転生者、■■■■は完全に死亡した。
落下地点にあった倒れた銅像の頭に自身の頭をぶつけて。
といっても、ルタ自身からしてみれば前世と4歳までの記憶を完全に失っただけなのだが。
「しかし、まさか前世も今世も同じ死因になるとは……つくづく付いてないねぇ、彼は」
そう言って、手元の資料をペラペラと捲っていく。
彼の前世の死因、それは川で溺れた犬を助けようとして橋の上から飛び込み、川の中にあった岩に頭を打ちつたという物だった。
奇しくもそれは4歳の事件と同じ様な状況であった。
因みに溺れていた犬は、その姿を見て驚愕し、死体から逃げるかの様に必死に川岸まで泳いで助かっている。
これぞまさに骨折り損の草臥れ儲けというやつだな。
「やはり、こんななんの面白味もない死因の人間なんかが異世界に転生した所で、何かを成すのは無理があったかな? まあ、それが分かっただけでも成果はあったという事にしておこう」
更に資料を捲っていき、それとは別の紙に書き込みをしていく。
「ルタ・アマツガは記憶喪失後もスクスクと成長し、貴族学校に進学。元々絡む予定だったメインキャラ達を遠巻きに、王の末娘や学校でできた友人達とわりと平穏な学生生活を満喫した……と。途中、聖女や王の末息子に絡まれたりもしていたけれど、魔王討伐の本筋からは完全にドロップアウトしてしまったからね」
今書き込んでいるのは、自身の担当した転生者に関する報告書。
どこぞの元冥王や転生者達がやらかしまくったせいで、一々こんな物を書かなくてはいけなくなったらしい。
本当に面倒臭いったらありゃしない。
「あ〜、結末としては貴族学校を卒業後、妹に家督を譲って出奔。自分の私物をほとんど売り払って資金を調達し、領内の街でパン屋を始めた……と。年上の幼馴染は看板娘となって毎日パン屋を手伝い、王の末娘は定期的に彼に会うため遊びに来る様になった。偶に彼の妹もパンを買いに来ていたね。ふむ、どうやら望んでいたハーレムは一応達成と見ても良さそうだ」
そんな事を書き込みながら報告書を完成させた。
「まあ、肝心の魔王は復活して、聖女達メインキャラがなんとか倒すことに成功して平和が訪れてるし、彼の物語はここで完全に終了だね」
さて、ここで困った問題が一つある。
この報告書にタイトルを付けなくてはならないのだ。
報告書にタイトル? と思われるかもしれないが、今の冥王やその補佐が取り決めた規則の一つである。
曰く、物語にはタイトルが必須でしょう? とのことである。
それを考えるコッチの身にもなって欲しい……
いや、あの二人なら直ぐに思いつくんだろうが。
「さて、タイトルはどうしようか……『転生台無し』とかはどうだろう?」
言ってみて、少し堅過ぎるような気もする。
もう少し、柔らかい表現はないものか……
「『転生崩壊』『ムダ転生』『異世界転生が水の泡になりまして』……ダメだな、どれもしっくりこない」
思いついた物を口に出しながらメモをしていくが、どうもしっくり来ない。
自分の語彙力の低さに呆れてしまう。
「ふむ、『転生おじゃん』とか良さそうじゃないか? いや、少し語呂が悪いだろうか?」
そこでふと思いつく。
「ああ、じゃあこういうのはどうだろう。日本の江戸時代から使われている言葉で、悟りを開いた某開祖に因んだもの」
メモに書き込み、満足気に何度か頷く。
そのタイトルは……
「よし、じゃあ早速この報告書を提出しないとだね」
そう言って報告書の方にもタイトルを記入し、死神はその場から姿を消した。
誰もいない真っ暗闇な空間。
そこには先程まで死神が思いつくままに書き込んでいたメモだけが寂しく残されていた。
そのメモにはいくつかのタイトル候補が書かれており、その殆どに横線が引かれている。
唯一、いちばん下に書かれたタイトルにだけは花丸が付けられていた。
『転生おしゃか』
本当は4月8日に投稿したかった!!
という事で……どうもごきげんよう、狐花/と申します。
『転生おしゃか』いかがだったでしょうか?
この話を思い付いたキッカケは、私自身の3歳4歳以前の記憶が殆ど無い所からでした。
特に、0〜2歳頃の記憶とか皆さん残っていますでしょうか?
私は親類からその頃の話を偶に聞くことがあるのですが、全く記憶の片隅にもありませんでした。
そこから、じゃあ転生者が転生後に記憶を失ったらどうなるんだろうかと妄想を膨らませ、今回この作品を書きました。
本来のプロットではもっと短かったのですが、内容があまりにも薄く感じたのでタイトルの釈迦要素を加えて肉付けした結果、なんか想定より長くなってしまいました。
どこかで短い方のプロット版も書くかもしれません。
因みに、タイトルは元々『転生台無し』の予定でした。
あとは作中の死神と同じ思考で、お釈迦になるという慣用句から取って今のタイトルになりました。
まだまだキャラクターや世界観について色々と語りたい事は尽きませんが、長くなりすぎてもなのでこの位で。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
感想や質問等のコメントを頂けると大変嬉しいです。
次回作等あれば、また宜しくお願いいたしますね〜




