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第1話「始動」

コトリと図書館の本棚から音が鳴る。

ふとそちらに目線を向けると1人の司書が本を直しているようだ。

直し終えたのかその場から去る司書の足元に目をやるとヒラリと一枚の紙が落ちているのが目に入る。

椅子をガラガラと音を立てて引きずり立ち上がりメモの元へ足を急がす。

拾い上げて見てみるとそこに書いてある文字は


《語り手を信じるな》


変なメモだ。

そう思い目線を前にやるとそこには褪せた茶色の皮のような本に金色の文字で彫られるように書いてある


【問題児隔離区画・六組】



不思議と興味をそそられて手に取り席へ戻る。

ひらりと一ページ目を開く。


「あなたは誰を信じて何を見るか。

あなたは何を通して誰を見るか。」

三階から続く階段を登り4階の札へ目をやる。

4組、5組、6組。

顔をふとあげる。6組の札がぶら下がる教室の前に立ち止まる。

中の様子を伺う。自分の予想ではペンがガリガリと紙を削る音が鳴り響くはずの授業中、そんな予想を裏切るようにつんざくような声が響き渡る。

先生は疲労した様子で黒板に色をつけていく。


「センセー!そこ漢字間違えてマース!」


先生のミスを指摘する大きな声が雑音に紛れて聞こえてくる。

先生は聞こえていないのか無視をしているのかそのままブツブツと呪文を唱えるかの様な小さな声で教科書を読み上げる。

無視をされたとさらに大きな声を張り出す女に眉に力が入る。


「ねぇ、田中さん。」


後ろから声がかかる。

書く手を止めて後ろを振り向くとニコリと微笑む真っ黒の髪をした少女が机に頬杖を着いていた。


「……誰?」

「え?」

「え?」

「クラスメイトの名前も顔も覚えてないの?」

「……あ、ごめん。えーっと?」

「嗚呼、私の名前は佐山 理華。」

「アタシ、田中 悠璃。」

「うん、知ってる。よろしくね、田中さん。」

「宜しく、で?佐山さんは何の用?」

「このクラス、なんかおかしくない?」

「おかしい?」

「先生は猫背でブツブツ教科書を小さな声で読み上げて黒板に書くだけ。生徒はみんながみんな好きなことをしてる。やっぱりあの噂は事実なのかな?」

「……噂?」

「このクラスにはどうしようもない問題児が集められるって話。」

「それなら貴女もどうしようも無い問題児ということになるけど?」

「……たしかに!でも私も問題児だよ?」

「ふぅーん。」


華やかに笑った佐山は自身を問題児と呼ぶ。

噂は信ぴょう性がなかった。

なぜなら私が【問題児】という枠に収められているからだ。

私は問題を起こすどころか被害者だ。

なのにこのクラスに収容されて、まるで猛獣の鎮静用のおやつみたいな気分だ。


「貴女も何か問題を起こしたんでしょう?だから貴女もここに収監されている。違う?」

「なんですって!?」


椅子を引き摺り立ち上がる。

みんなの視線が一気に注がれるが話をしている相手をちらりと盗み見て急いで前を向き直る。黒板に色を塗っている先生は嫌なものを見たというように顔を顰めて前を向き直りまたブツブツと喋り出す。

頭がカッとなっているからなのかそんなことが一切気にならない。


「あらあら、そんなに興奮して。

なにか思い当たる節があるのかしら?」

「アタシが問題児?ふざけるのも大概にして!アタシは被害者よ!貴女もどうせ加害者なんでしょう?違う?」


息を荒らげてるアタシに対して佐山は悠々としてニコリと微笑んでいた。

体を前のめりにして佐山の頬を掴む。

しまったと思ってしまったが佐山の笑顔が嫌に脳裏に焼き付いて離れない。

今すぐこいつから離れなければ、また、嗚呼なってしまう。どこか焦りを抱えながら佐山に顔を近づける。


「アタシに二度と近づかないで、アタシはもうあんな思いはしたくないの。誰にも、壊されたくないの。」


冷たく言い放ち佐山の言葉を待たずに椅子にドサリと座り込む。

後ろの方からクスクスと笑う鈴が転がるような可憐な佐山の声が聞こえてくる。

笑っている顔が思い浮かび少しイラッとするが先生が書き続けている黒板の板書を急ぐほうを選んだ。

何を見て何を信じるか

何を信じて何を見るか

語り手を信じるか、信じぬか。

それは全てあなた自身。

第2話「行進」

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