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解放  作者: 爆竹
第一章-壊れていく日常
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終われない理由

心だけじゃなかった。

身体までもが、拒絶を始めていた。


眠れない夜。

喉を通らない食事。

仕事に出ても、言葉が頭に入ってこない。


昼か夜かもわからず、

自分が何者なのかさえ、曖昧になっていく。


それでも、私は香梨奈に「離婚しよう」と何度も口にした。


「もう限界だ」と。

「無理だよ」と。


それでも香梨奈は、首を横に振って泣くだけだった。


「やめないで」


そう言って、私の手を握ってきた。


やめないで、とは。


夫婦を? 家族を?

それとも、私自身を?


わからなかった。


彼女が失いたくないのは、私なのか、子どもたちなのか。


けれど、あのとき香梨奈は確かに――私にすがっていた。


私は問い続けた。


──香梨奈を失いたくないのか?

──それとも、子どもたちのために父親でいたいだけか?

──私はただ、置いていかれるのが怖いだけじゃないのか?


苦しかった。


逃げたかった。


でも、逃げられなかった。


時間は、ほんの少しだけ、私たちを鈍くさせていった。


許したわけでも、忘れたわけでもない。


ただ、心が、感情を処理しきれなくなっていた。


痛みは、確かにある。

けれど、それを感じきる力が、もう残っていなかった。


会話は必要最低限。

目を合わせることも、ほとんどない。


けれど私たちは、まだ同じ屋根の下にいた。


それだけが、かろうじて“家族”という形を保っていた。

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