変ってしまった世界を気づきで戻す
やってしまったこと・・・。
ハイテンションで学校に来たのに・・・。
みんなの視線が違う、冷たい目をしている。
いつものように学校に来て、いつものよう過ごすその日ではなかった。
私の居場所が無くなった。
私は一体、なにをしたのだろう。
なにかした?
友人たちの態度がよそよそしく、示し合わせたかのように、私をとことん無視するのである。
仲間だと思っていたのに・・・。
私は唇を噛みしめ、俯き、早く一刻でも時間が経つようにと念じる。
下校のチャイムが鳴り、私は誰とも視線を合わせず一目散に家へと逃げ帰った。
ベッドに潜り込み、すべての嫌な事を遮断しようとした。
そうだ!
あれ!
私は、ものの数分でベッドから飛び起き、パソコンを立ち上げた。
仲のいいメンバーで、イラスト入りの物語を作っている。
はじめ私は、そんなのいいよと断っていて、全く興味が無かった。
この物語づくりから離れたていたのだが、あんまりみんなが楽しそうにしているので参加したのだった。
やりはじめると面白いもので、皆であーだこーだと話し合って作っている。
私らは小説サイト「小説家DEやろう」にINAZMA Friendsの共同ペンネームで登録している。
各自が持ち回りでサイトにアクセスし、話し合った物語を書き込み投稿、キャラの絵を描いて姉妹サイト「ビタミン」へ絵を投稿、やろうへ経由し挿絵を貼りつけ本格的に創作活動をやっている。
昨日、その持ち回りの番となり、私はどうしても皆と話して決めた話には納得が出来なくて、ストーリーを改変してしまったのだった。
それも丸々一万字分を削除し、我ながら傑作のオリジナルストーリーにした。
キャラ絵も納得出来なかったのでAIに生成させたイラストに替えたのだった。
家に帰ってから、すぐ取り掛かり夜中の3時まで一心不乱でやった。
そっか。
それか。
あまりにも身に覚えのある原因だった。
だけど・・・。
何が悪い。
圧倒的にこっち(私が書いた)の方が面白いだろう。
皆だってそう思っているはず・・・。
私はINAZMA Friendsのホームへ行こうと、アカウントとパスワードを入れる。
・・・・・・。
・・・・・・。
「パスワードが違います」の文字が何度も浮かぶ。
私に内緒で変更されている?
さっと血の気が引いた。
私はやろうからINAZMA Friendsを検索した。
そこには・・・。
私が担当して書いた文、絵が丸々無くなって、あいつらの誰かが書いた話と絵が差し替えてあった。
そして、共作であることを知らせる為の私の名前もなく消されていた。
まるでいなかったように・・・。
完全にここから抹殺されたのだ。
ありえない・・・。
いや、私がありえないことをしたのか・・・。
よかれと思って、皆のことを思って・・・。
私はキーボードを拳で叩きつけ、ベッドにうっ伏した。
自然と涙が出て来る。
許せない。
あいつら。
言えばいいじゃないか。
学校で直接、面と向かって・・・。
なんて仕打ちをするんだよ。
私は私の為だけにやったことじゃないのに。
だけど。
だけど・・・。
本当にそうなの?
私は・・・私だけの為にやったの・・・か。
何度も自分に問いかけてみる。
私は悪くない、悪いのは一方的に仲間外れにした皆・・・。
そうだ。
・・・・・・。
・・・・・・。
いやいや違う。
待って、待って・・・。
!
もし、私がそうされたらどうだろう・・・。
嫌・・・嫌だな。
うん・・・そう。
嫌?
やっぱり・・・そっか。
ようやく、そこまでの考えに至った私は、愕然とした。
駄目じゃん。
なにやってんの・・・と。
私はベッドから這い出し、光るパソコンの前に座った。
静かにマウスを動かし、再び、やろうへアクセスし、INAZMA Friends作品の感想欄を開く。
震える手でキーボードを叩き続けた。
みんな、ごめんなさい。
私はとんでもないことをしました。
許してください。
送信ボタンを押し、私は三度ベッドへ横たわった。
スマホを手に取り、ラインを・・・止めた。
電話を・・・やめた。
目を閉じる。
今日はもう寝よう。
明日、学校でちゃんと謝ろう。
会ってちゃんと話そう。
気づくことで変われるかもしれない。