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魔眼の転生者 〜忌避された者たちは、かけらの希望を渇望する〜  作者: Ruqu Shimosaka
第三章 ヴィント州

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第97話 人間と共存する魔物

 二人から三人になった隆起させる作業を今日も終わらせる。


「オイゲン、魔法を使うのが上手くなったね」

「ヴェリの教え方がうまかったからでよ」


 真新しい服を着たオイゲンは嬉しそうに笑っている。裏表のない性格から笑顔が非常に似合う。そんなオイゲンは魔法が想像以上に早く上達している。

 魔法を使いこなせないながらも使っていたのもあるのだとは思うが、二週間という短期間だとは思えないほどの上達。


「オイゲンのおかげで堤防はもう少しで完成しそうだ」


 堤防はオイゲンが手伝い始めたこともあって隆起させる速度が上がっている。

 雨季が近いため今回で完成は無理だが、次回で確実に完成するとわかるほどに隆起させる作業は進んだ。


「オラじゃなくてゲオルクがすごいと思うだよ」

「一日寝込んだだけの成果は得られたな」

「ゲオルクの魔眼は大変そうだよ……」


 オイゲンがオレに同情するような視線を送ってくる。

 隆起させる速度が上がったのは、オイゲンの協力によってオレの魔力は再び増えたというのもある。そう、流水眼を転写したことで魔力が増えたのだ。

 もちろん転写した結果、一日寝込むことにはなった。

 オイゲンが同情的な視線を送ってくるのは、オレが寝込んだ時の苦しそうな表情を見ているからだ。


「転写眼の副作用は大変ではあるが、おかげで水流眼も使えるようになったからな」

「それが大変そうだと思うんだけども。けどもオラ、水流眼は水中でしか使い道がないと思っていたでよ」

「オレはオイゲンのように泳げないからな……他の方法を探すしかない」


 オイゲンのように泳げたら悩みもしなかったのだがな。

 転写させてもらった流水眼は水中で効果を大きく発揮し、陸上では使い道はないとオイゲンが教えてくれた。

 しかし、オレは複数の魔眼を転写した経験から、魔眼は使い方はなんとなくわかるだけで、完全に理解できるわけではないことを知っていた。


 他の使い方がないだろうかと試行錯誤した結果、陸上でも水を自由に動かせることに気づく。しかも勢いよく水を発射できることが確認でき、威力を調整すればウォータージェットのようなこともできることに気づいた。


「水流眼を使ってのウォータージェット、最初は掃除道具程度のことしかできなかったがな」

「今は鉄も切れるでよ」


 流石に水だけで硬いものを切るのは難しくさらなる改良が必要だった。

 水の中に砂であれば混ぜても水を動かせると気づき、混ぜたもの次第ではあるが、鉄を切断できるほどの威力まで上げられた。

 魔法眼でも似たような魔法を使えるが、水流眼で発動した方が必要な魔力量が段違いに少ないため使い勝手がいい。


 オイゲンにもウォータージェットの使い方を教えると、今まで魔眼を使っていたこともありすぐに使えるようになっている。

 オイゲンは水流眼が陸上で使えないという考えを改めた。


「オラも陸で戦えるなら安心だよ」

「仲間を守るために戦える力は必要か。しかし、戦わなくとも重いものを持ち上げる力があるので助かっているぞ」


 二メートルを超える身長を持つトローたちは力持ちだ。

 この世界人間は筋力が地球より明らかに上なのだが、トローたちは魔物というのもあるのだろうか、さらに上をいく筋力を有している。


「確かに、人間だった頃持てなかったものが持てるのは不思議でよ」

「おかげで村の工事が進む」

「皆も家を建てるの楽しいみたいだよ」


 オイゲンたちトローはマーレダムでの生活に随分と馴染んだ様子で過ごしている。今のところ、お互いに問題らしいことは何もなく過ごしている。

 帝国は魔物と共存してきた期間が長いため、魔物との付き合いが上手い人が多いようだ。


「ところでオイゲン、エンデハーフェンに行くか決まったか?」

「皆、行ってみたいとは言っている。マーレダムでの暮らしが楽しかったみたいでよ」

「わかった。それなら雨季に入る前に一緒に移動しよう」


 トローたちにエンデハーフェンを見にいかないかと誘っていた。

 街を見せたいというのも理由の一つだが、マーレダム周辺の浅瀬を潰してしまうと海の環境がどう変化するかわからないという問題もある。

 環境を変えたのはこちらの都合であり、オイゲンたちに迷惑をかけたくはない。

 可能な限り手助けしたいとは思うが、マーレダムはまだ住居が多少できただけで雨季には無人になる。乾季にマーレダムに戻ってきたら、オイゲンたちが居なくなっていたということもあり得る。


「ゲオルクたちと会えなくなるのは悲しいでよ」

「オレも仲良くなったオイゲンたちと会えないのは悲しいからな。エンデハーフェンが気に入ったらぜひ住んでくれ」


 エンデハーフェンならすでに街になっているため手助けすることは可能。しかもエンデハーフェン周辺は、アルミンの父であるアーノルドが大量の魚を取ってこられるほど獲物が多い。

 そのため、もしよかったら移住しないかと提案を以前からしていた。


「マーレダム周辺は魚が豊富で、シーサーペントくらいしか出なかったから比較的住みやすかっただけども、話を聞いた感じはエンデハーフェンの方が住みやすそうだよ」

「シーサーペントが出て住みやすいというのも驚きだがな」


 帝国が頭を抱えたシーサーペントという問題に対して、オイゲンたちは住みやすいとの返しにオレは苦笑する。


「オラたちトローは紋様が三つあるから、紋様二つのシーサーペントは格下でよ。成長した個体に群がられなければ平気、平気」

「トローの紋様は硬化、遊泳、噛みつきの三つだったか」

「オラはさらに水流眼で水を操ることで速度を上げて泳ぎ回るでよ」

「オイゲンはすごい速さで泳いでいたものな。あれが魔眼と紋様の相乗効果だとは思っていなかった」


 泳ぎ以外にも、シーサーペントに噛まれて平気だったのは硬化による効果で、アザラシの毛皮を着ている時は効果が倍以上になるとのことだ。シーサーペントの幼魚程度であれば噛まれても少し痛い程度とか。


「シーサーペントで怖いのは巻きつきだったか」

「幼魚であれば囲まれてもそう怖くはないでよ」


 オイゲンたちの協力でシーサーペントは倒して回収しており、紋様を写してある。

 魔術師が紋様を解析した結果、シーサーペントの紋様は索敵と巻きつきだと予想している。正確な解析までは紋様の内容は仮だと言っていたが、魔力を探知する能力や、巻きつきが強いという話から間違いではなさそうだ。


「そもそもオラたちは紋様で硬化できるからシーサーペントとの相性はいいんでよ。だけども、群がれると逃げられなくなっちまうのが問題だ」

「オイゲンなら水流眼があるが、普通は逃げられなくなるか」

「んだ。息継ぎのために浮上ができなくなっちまうんだよ」


 魚類であるシーサーペントは海中にとどまり続けられるが、哺乳類であるトローは息継ぎする必要がある。

 トローは短時間なら水中で寝られるほど長時間潜り続けられるらしいが、魚類であるシーサーペントと我慢比べをした場合負けるのは当然。


「シーサーペント、不味くはないんだけども、大きすぎて食べにくいのが問題でよ」

「食べにくいで片付けるのもすごいがな」

「ゲオルク、オラたちには食べにくは重要でよ。大きすぎて持ち運ぶのも無理だし、海の中では毛皮を脱げないから食いちぎるしかない。調理するには向いてないでよ」


 調理。

 驚いたのだがトローたち料理ができる。

 オイゲンが火の使い方や調理を教えたのだと思う。

 火の通った料理を普通に食べるのもオレたちに馴染みやすい理由の一つかもしれない。

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