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魔眼の転生者 〜忌避された者たちは、かけらの希望を渇望する〜  作者: Ruqu Shimosaka
第三章 ヴィント州

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第95話 オイゲン

「オイゲン、魔眼を使わないで欲しいのだけど」

「魔眼? オラの魔眼は海の中でしか使う気はないんだな」


 オレの魔眼についてヴェリが気を利かせてくれた。

 オレは理由を説明する必要があるだろうと、オイゲンに転写眼について話していく。転写眼が勝手に発動してしまうと説明が終わったところで、オイゲンは納得した様子。


 オレ自身で魔眼について話したからか、オイゲンはオレに対して多少硬さが取れたように見える。

 今なら普通に話せそうだな。


「ところでオイゲンはなぜここに?」

「オラ、この近くに住んでるんだが、大きな音が気になって見にきただ」


 大きな音。どう考えても大砲のことだろうな。

 地面を隆起させる魔法も音はするが、大砲ほど大きな音は出ない。


「こちらが出した音だな。すまない、うるさかったか?」

「ほんの少し。だけども大きな音のおかげで人間に会えたから良かった。てっきり、この周囲は人間住んでいないと思っていただよ」

「ここには今まで人間は寄りつかなかったな。何せシーサーペントが多いからな」

「ああ、シーサーペントだか……。あれは、成長した後の個体に囲まれると大変で、仲間を逃す必要があるだよ」


 仲間?

 一人で湾内に入ってきたため、普段から一人で動いているのだと思い込んでいた。


「オイゲンは一人ではないのか?」

「十人の仲間と暮らしているでよ。ここはシーサーペントが多くて危ないからオラだけが見にきただ」


 家族として考えるなら多いが、あり得なくはないか。しかし、家族なら家族と言いそうであり、仲間とあえて言っているため血縁関係ではないのだろう。

 魔物のためどのような集団を形成するのかわからないな……。


「オラも少し聞いていいか?」


 オレばかりが質問していたが、オイゲンも聞きたいことがあるようだ。


「ああ、こちらばかり聞いてすまない。なんでも聞いてくれ」

「浅瀬の入り口にある岩棚、前はなかった気がするのだが……」


 岩棚。

 オレとヴェリが作っている堤防のことか。

 聞かれて気づいたが、湾内はオイゲンたちが使う場所だったりしないだろうか? 完全に遮ってしまうと中に入れなくなる。


「岩棚は多分シーサーペントの産卵場所を潰すために堤防だな」

「産卵場所を潰す? それはすごい」


 オイゲンは体をそらせ、目を見開いて驚いている。


「あの場所を閉鎖してしまっても、オイゲンたちの迷惑にはならないか?」

「むしろシーサーペントが減るのなら嬉しか」

「それは良かった」


 オイゲンは話をしている限りとても友好的。

 友好的な相手と敵対はしたくないのは当然。


「ところで、あんな岩棚どうやって作っているだ?」

「魔法で地面を隆起させている」

「魔法!」


 オイゲンが身を乗り出してきた。


「オラに魔法を教えて欲しいだ」

「魔法を?」


 魔法は教えたからといって使えるものではないのだがな。

 ……いや、もしかして?


「オイゲンも魔法が使えるのか?」

「そうだよ。だけどもオラ一人しか使えないから、使い方がわからないだ……」


 オイゲンは頭と肩を落として凹んでいる。

 魔法は魔力に任せて使う分には簡単だが、使いこなそうと思うと奥深い。オレはヴェリから使い方を教わったが、一人で探求するのは大変だろう。


「というか魔法は魔眼と違って使い方を理解しないのか?」


 オイゲンではなくヴェリが話しかけてきた。


「魔法は使えるようになったのはわかるけど、使い方はよくわからないんだよね。ボクは前世で同族のピクシーから教わったけど、オイゲンのように同族が使い方を知らないと使いこなすのは難しいだろね」


 魔法は魔眼より不親切のようだ。いや、使えるとわかるだけいいのか……?

 魔法を教えて欲しい理由が分かった。

 オイゲンに魔法を教えるのは構わないのだが、オレが教えるよりはヴェリの方が詳しいのだよな。


「ヴェリ、オイゲンに魔法を教える気はあるか?」

「ボクの方が詳しいからか、そうだね。うん、いいよ」


 ヴェリはオレの言いたいことを察してくれた。


「本当だか!?」

「ボクで良かったらだけど」

「ぜひ頼むだ」


 オイゲンは笑顔で何度も頷いている。

 話を横で聞いていたユッタが加わってきた。


「ゲオルク様、オイゲン殿に魔法を教えるのであれば、堤防を手伝ってもらってはいかがでしょうか?」

「隆起させる作業を手伝ってもらうというのか」


 手伝ってもらえるのなら助かるが……。


「だが、魔力がなくなってしまってはオイゲンが困るだろう?」

「それは、そうですね……」


 ユッタの考えは、いい考えだとは思う。

 しかし、オイゲンを困らせたくはない。

 オレとヴェリは数百人の兵士たちによって守られているが、海の中で暮らしているオイゲンは魔力がなくなってしまうと攻撃手段がなくなり、シーサーペントなどの対処に困るのは想像ができる。


「オラ、魔法を教わるなら、お返しがしたいだ」

「その気遣いは嬉しいが、海の中で生活するのに魔力はいるだろ?」

「陸で暮らせば問題ないだよ」


 ……ん?

 陸で暮らす?


「オイゲンは海に住んでいるわけではないのか?」

「確かに海に住んでるけども、理由は海の方が簡単に食料が手に入るからでよ。食料が手に入るんであれば、海でなくとも問題はないだ」


 海の方が食料調達が簡単か……そういえば、かなりの速度で泳いでいたな。

 人間だと道具を使わないと魚を捕まえるのは難しいが、オイゲンたちトローは泳ぎだけで捕まえられそうだ。そもそも、この周辺は陸よりも海の方が狩れそうな獲物が多い、狩猟するなら海の方が適切なのだろう。


「そういうことなら、食料や住居をこちらで出すので手伝ってもらってもいいか?」

「できれば仲間の分もお願いしたいだ」


 食料はエンデハーフェンから輸送されており、畑で実った作物もある。十人程度なら問題はないだろう。一応ユッタに確認すると、ユッタも同様の考えだった。

 食料よりも住居が問題。

 住居となる建物は増えているが、人数が増えたこともあって、まだテント暮らしが多い。流石に一人一部屋を用意するのは無理だ。

 オイゲンに事情を話すと、テント暮らしでも問題ないとの返事をもらう。


「いや、手伝ってくれるのにテントは悪い、部屋を用意する」

「オラたち長時間寝る時は岩の上に寝転がるだけでよ。テントがあれば十分だ」


 寝る時は岩の上か。

 そういえばアザラシは哺乳類、陸でも寝られるのだな。いや、そもそもオイゲンはアザラシではなくトローだったな。

 アザラシの印象が強すぎる。


「テントなら一人一つ渡せると思うが……見てもらって好きな方を用意する」

「分かっただ」


 そもそも、陸で過ごすのは嫌な可能性もある。


「オイゲン、実際に見にきてもらった方がいいんじゃないか? オイゲンは元人間のため気にならないだろうが、他は転生者ではないトローなんじゃないのか?」

「確かに、転生者はオラだけ。皆を連れてくるだよ」


 そういうとオイゲンは海の方へと向かう。

 手に持っていたアザラシの毛皮を羽織ると、完全なアザラシへと変化した。どうなっているんだろうな……。

 オイゲンは海の中に入ると速度を上げて視界から消えた。


「早いな」

「魔眼を使っているんだと思うけど、すごいね」

「水流眼って言っていたか」


 名前から水の流れを調整していると予想できる。

 海に特化した魔眼だな。


「ところでゲオルク様」

「どうしたユッタ?」

「鑑定眼をお使いになられましたか?」

「あ……」


 鑑定眼、使っても情報量が少ないため使用を忘れがち。本を読んだり、話を聞いたりして知識を蓄えるようにはしているが、使わないと知識を入れても意味がない。

 オイゲンが戻ってきたら、許可をもらって鑑定させてもらうか……。

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