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魔眼の転生者 〜忌避された者たちは、かけらの希望を渇望する〜  作者: Ruqu Shimosaka
第三章 ヴィント州

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第94話 魔物の転生者

 堤防を作り続け三ヶ月。

 堤防は反対側まで半分を超えたように見える。


「秋の雨季が近づいているから、一ヶ月以内にエンデハーフェンまで戻る必要があるが、堤防は随分と進んだな」

「次の乾季で完成できるかも」

「作業が終わるかは微妙な距離だがな。それに魔法以外の作業もある」

「確かに。でもボクとゲオルク以外でも作業はできるんじゃ?」

「そうだな」


 魔法を使わなくともいい作業は確かにオレとヴェリでなくともいい。

 実際、隆起させて堤防となった構造物は徐々にコンクリートで舗装されていっており、その作業をしているのはエンデハーフェンから来た職人たち。

 側面は下が海のため舗装は難しいが、歩いている一番上の部分は舗装されている。


「ゲオルク、あれなんだろ?」


 作った堤防の方を見ていたオレは、ヴェリの声で振り返る。

 ヴェリが指差した先は沖の方。目を凝らして何のことを言っているかと確認すると、シーサーペントほどではないが大きな影が泳いでいるのが確認できた。


「あれは……何だ?」


 泳いでいるため生き物ではあるのだろうが、魚ぽい動きではない。想像以上に速度が出ており、徐々に近づいてくる。

 息継ぎをするためか一度顔を出した。


「アザラシ……?」


 息継ぎする瞬間に見えた姿はアザラシ。アザラシといえば、寒い場所に住んでいる印象があるが……。印象なだけで、暖かい地域でも生きているのかはわからない。そもそも、ここは地球ではないのだが。

 だが今までアザラシが泳いでいるのを見たことはないのが不思議ではある。


 アザラシは泳いで湾の中に入っていく。

 湾の中はシーサーペントの幼魚がいるので危ないと心配になる。

 大砲を使ってシーサーペントを倒してはいるが、回収できていないため実際のところ減っているのかはわかっていない。


「シーサーペントから助けるにも魔力がないな……」

「海の生き物だったら、幼魚ならどうにかなるかも」

「そう思いたいが」


 手の出しようがないため、オレとヴェリは傍観するしかない。

 オレとヴェリの護衛についている兵士もいるのだが、遠距離でしかも水の中ということもあって手を出しあぐねている。


 アザラシはオレとヴェリが作った堤防の横を泳いで進んでいく。オレたちはアザラシが気になって追いかけていく。

 珊瑚の中から細長い影がアザラシに襲いかかる。

 シーサーペントの幼魚だろう。


「危ない!」


 思わず声を出してしまう。

 アザラシは襲われるのをわかっていたように回転するように避ける。しかも避けただけではなく、噛み付いて逆に攻撃しているようだ。

 シーサーペントもやられるだけではなく、アザラシに巻き付いたり噛み付いたりしている。


 オレはシーサーペントを厄介者扱いしているため、アザラシを手助けしたくなる。

 しかし、水中であるため助けるのも難しい。


「アザラシは空気を吸う必要があるから厳しそうだな……」


 シーサーペントが時間をかけてアザラシを殺してしまうだろうと予想がつく。しかし予想に反してアザラシは動き回って、健闘している。


「ゲオルク、シーサーペントの追加が来た」


 ヴェリの声に周囲を確認すると、数匹の細長い影がアザラシの方に泳いでいる。

 暴れれば他のシーサーペントも寄ってくるか。時間をかければかけるほど、大量のシーサーペントが寄ってきそうだ。

 数が集まればアザラシも耐えられないだろう。


 兵士たちが魔力を使えばシーサーペントが逃げ出すかもしれないと、魔術を準備し始めるが、水中のシーサーペントは逃げる様子はない。当たらないとわかっているのか、獲物を前にして気づいているのか……。

 兵士たちの魔術が発動するが、水中のため魔術が効いていない様子。シーサーペントはアザラシに向けて泳ぎ続ける。


「まずいな」


 アザラシに複数のシーサーペントが襲いかかる。

 黒い塊のようになった状況を堤防から見下ろしていることしかできない。


「……おかしくない?」

「何がおかしいんだ?」

「動物ならあの数に囲まれたらすぐに死ぬと思うんだけど……」


 言われてみると確かにアザラシはまだ生きているようで、黒い塊は岸の方向へと進んでいる。

 様子をさらに伺っていると、黒い塊から分離した細い影が海底に沈んでいく。


「もしかして、あの状態で倒したのか……?」

「ゲオルク、あれは動物じゃないと思うよ」

「動物じゃない?」

「魔物じゃないかな。種類まではわからないけど……」

「そうか魔物か……」


 幼魚とはいえ、大量のシーサーペントに囲まれながらも倒せるような魔物か。


「戦えない者たちを非難させた方が良さそうだ」


 護衛についていた兵士たちに指示を出そうとしたところ、堤防を舗装していた職人たちはいつの間にか隣にいた。気づかないうちにオレたちと一緒にアザラシを見ていたようだ。

 舗装していたものたちはすぐに避難を開始する。

 オレたちは兵士を集めてアザラシが上陸しそうな場所に展開させることに。


 兵士たちが一斉に集まってくる。兵士たちを包囲するように配置していく。

 結構な時間がかかってしまったが、アザラシが上陸する前に展開できたようだ。


「オレとヴェリに魔力がないのが不安だな」

「数百人いるのだから、倒せるとは思うよ」


 倒せるとは思うが、死者が出ない保証はない。

 口には出さないがオレの言いたいことはヴェリもわかっているのだろう、じっと海岸を見ている。

 崖の上から海を監視しているものが近づいてきたと声で知らせてくれる。


 アザラシがのっそりと上陸してきた。

 アザラシは周囲を見回した後、着ぐるみを脱ぐかのようにアザラシの毛皮を脱いだ。中から出てきたのは大柄な人のように見える。


「は?」


 自分で見た姿が信じられない。


「トローですか」

「トロー?」

「魔物です。凶暴な場合もありますが、比較的おとなしい魔物ですね」


 ユッタはあれが何者かを知っていたようだ。

 やはり魔物なのか。


「こ、攻撃しないでくれ」


 トローという魔物は驚いたことに喋りかけてきた。


「人間の言葉を喋った!?」


 ユッタが驚いている。


「え? 普通は喋らないのか?」

「人間と交流のない魔物は、魔物ごとに別の言葉を喋ります」


 ユッタが驚いた理由は分かったが、だったらあのトローはなぜ喋っている?


「オラの名前はオイゲン。人間の漁師だっただ」

「転生者か!」


 距離を取っていたため、遠すぎて瞳が魔眼だとはわからなかった。


「近づいても……?」

「ああ、お互いゆっくり近づこう」

「わかった」


 慎重に近づくと、オイゲンと名乗ったトローはオレ以上に巨体なのがわかる。二メートルはゆうに超えている。三メートルはないと思うが、随分と大柄だ。

 さらに近づくとオイゲンの瞳が見えてくる。

 右目は髪の毛と同じ色の艶やかな黒目、左目の虹彩は紫色に赤い星がちりばめられたように煌めきゆらめき炎のように揺れる。

 魔眼だ。


「あんたも転生者なんか」

「ああ、オレはゲオルク・フォン・エルデ」

「き、貴族!」


 オイゲンは手足をばたつかせて慌てた様子。

 貴族を前にした経験がないのか、困っているように見える。

 友好的に色々と話を聞きたかったのだが失敗した。アンナやユッタから姓まで名乗るようにと教えられたため、そのまま名乗ってしまった。


「最近事情があって叙爵しただけで、元は貴族ではないので気にしないでくれ」

「は、はい」


 距離ができてしまった気がする。


「ボクはヴェリ」

「あんたも転生者?」

「そうだよ」


 偶然なのか、また忘れているのか、ヴェリは姓をまた名乗っていない。多分忘れているのだろうな……。

 だが、それが良かったのかオイゲンは落ち着いたように見える。

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