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魔眼の転生者 〜忌避された者たちは、かけらの希望を渇望する〜  作者: Ruqu Shimosaka
第三章 ヴィント州

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第92話 大砲

 エンデハーフェンに帰還して三日後。

 そろそろ雨季に入りそうだというが、まだ雨は降っていない。

 色々とやることはあるが、今日はココナッツを使った大砲の試験をする。産卵場所に向かう前に設計しておいたおかげで、試作の大砲がいくつも用意されている。


「大砲は鉄が炸裂しないようかなり分厚めにしたから重いな」

「ん」


 あまりの重量からか、専用の台車まで作ってくれていた。

 台車がなければ試験場所まで運べないところだった。


「ゲオルク、どこに向けて撃つ?」

「草原は誰かいたら危ないから、海かな」


 馬が台車を引けるように作られているため、馬に引かせて港へと向かう。

 人間が運ぶには重い重量も馬は軽々と引いていく。


「シーサーペントが定期的に出ていたと報告を受けたが、多少は工事が進んだか」


 港に着くとどの程度工事が進んだか見渡す。

 大型船が一隻なら停泊できそうな気がするが、シーサーペントが出るのではな。停泊する前に船が壊されそうだ。


「それでは試射を始めるか」

「ん」


 ココナッツは果実。物によって大きさが違うため、大きい場合には多少削る必要がある。平均的な大きさを基準にしているため、削らずに入れられるものを選ぶ。

 大砲は強度の問題があって前から詰める前装式にしている。


 大砲にココナッツを先に入れ、次に弾頭を詰める。

 ココナッツを爆発させるための弾薬を一発大砲に設置する。弾薬は銃と同じ撃鉄によって種子が爆発して弾丸が飛ぶ。弾丸がココナッツに当たって爆発する設計にしている。

 砲身を挟んでココナッツと弾丸の数値を変え、爆発する準備は完了。


「離れよう」


 大きく離れて盾になる壁に隠れる。

 問題ないとは思うが、魔法で壁を強化しておく。


「モニカ、ロープを引いていいぞ」


 モニカが引き金から伸びているロープを手に取って思いっきり引いた。

 凄まじい音とともに弾丸が飛び出していく。

 水平方向に向けていたため、すぐ近くに着弾して大きな水柱を上げる。


「すごい」


 モニカの目が輝いているので、大変喜んでいる様子。


「問題なく飛ばせたみたいだな」


 大砲に近づいて壊れていないかの確認をしていく。

 ヒビが入っている様子もなく砲身に問題はないようだ。

 次は砲身の中に残ったゴミを掃除して、次のココナッツが装填できるよう準備する。今日は何発撃っても耐えられるかを確認するつもりだ。


「ゲオルク、魚が浮いてる」


 ココナッツと弾頭を詰め終わった後、モニカが海の方を向きながらそんなことを言った。

 確認すると、数は多くないが確かに魚が浮いている。


「衝撃で死んだ? いや、気絶したのか……?」


 そういえば、ダイナマイトを使った漁法があったな。爆発の危険を伴う上に、小魚まで殺してしまい生態系を完全に破壊してしまうため、日本では禁止された漁法だったはず。

 ココナッツを直接水中で爆発させているわけではないため、生態系を破壊してしまうような効果はないと思いたいが……。


「シーサーペントも倒せる?」

「確かに直撃しなくとも倒せる可能性があるのか」


 生態系への心配はあるが、漁業として使用しなければ問題ないだろう。


「シーサーペントが出たら試そうか」

「分かった」

「今日は大砲が問題ないか確認しよう」

「ん」


 モニカと大砲を撃ち続ける。

 ココナッツがなくなったところで試験は終了。


「耐久は問題なさそうだな」

「威力も十分」

「砲身の重量があるのが問題だな。数を作って配置しておくか」


 馬で引けば問題はないが、人が持って運ぶには重すぎる。

 同じものを量産して、配置しておけばいいだろう。生命眼が必要な武器であるため、オレとモニカしか使えないのが問題だが、今はシーサーペントを倒す武器が必要。


 試験で何十発と撃ったため、見学で集まった人に終わりだと伝え、オレとモニカは帰る。




 大砲の試験をした翌日から一日中雨が降るようになった。

 庁舎の自室である長官室でユッタに助言をもらいながら、オレは執務をする。しかし、強い雨の音が気になって、書類から視線を窓に向けてしまう。大きな窓から見える外は大雨。


「聞いていた通り、本当によく降るな」

「はい。この時期は海が危険なため、港での作業は全て中止されています。室内でできる仕事をする者もいるようですが、基本は休んでいる人が多いようです」


 ユッタがオレの独り言に答えてくれる。

 大雨はアーノルドのように海で漁をするのは当然危険。同様に港の工事も海に流される恐れたあるため、中止するしかない。

 皆、家の内装を作ったりしているようだが、作業は急ぐ必要もないため、ゆっくりと休みながら進めていると聞いている。


 オレとアンナは室内でもできる仕事が多いため、完全に休みというわけにはいかないのは仕方がない。

 ホルスト卿とユッタが大半の仕事を片付けてくれているため、渡される書類はこれでも少ないらしい。それでもヴィント州の長官であるオレが確認しなければいけない書類は、総数でいうとかなりの数になる。

 ヴィント州はエンデハーフェン以外にも街や村があるため、用意される書類は膨大となるわけだ。

 書類を見ながら、わからない部分をユッタに聞きながら覚えていく。

 正直、わからない部分が大半なのだが……。


「分かっていたが、ヴィント州は大きいな」

「規模としてはヴァイスベルゲン王国とあまり変わりませんので」


 大きすぎである。

 前世があるとはいえ、統治について教育を受けてこなかったオレが治められる大きさではない。

 実質ヴィント州を治めているのはホルスト卿とユッタ。二人ののおかげでどうにかなっている。


「ヴィント州の税収から、自治のために必要な財源は振り分けてあります。今回新たに予算を組んだのは、シーサーペントが産卵する湾を工事するためのものです。組んだ予算で、鉄とコンクリートの素材を多めに発注しております」


 今後も堤防修理、補強するためにコンクリートや鉄が必要になる。滞在するための建物の中に、鉄を生成する炉を作って量産する計画になっている。

 手渡された資料を見るに、炉の制作費用には税収も使っているが、帝国から予算が出ているため資金が不足することはないらしい。


 ユッタからシーサーペントの産卵場所について説明を受けた後、エンデハーフェンについての報告を受ける。


「エンデハーフェン東側に新たに農園を開拓中です。北側の農園を拡張するという話もあったようですが、馬の飼育を考えると手狭なため、東側に新たな農園を作ることが決定したようです」

「馬はオレたちが連れてきた軍馬のことか?」

「軍馬以外にも、馬車を引いてきた馬も含みます。草原は馬の飼育に向いているため、馬を帝都に戻さずに繁殖させることに決定しました。今後の展望としては、新大陸に馬を輸送することも視野に入れています」


 そういえば軍馬以外も大量にいるんだったな。

 渡された資料を見るに、現在エンデハーフェンには数百頭の馬がいるらしい。そのため、飼育のための人員もかなりの人数いるようだ。馬の餌となる草は周辺に大量に生えているため、今のところは問題がないようだ。


「馬はともかく、東の農園はモニカが加わればすぐに形になるだろ」

「はい。そのために雨季が開けた後、モニカ卿はエンデハーフェンに残っていただく予定です」

「その方がいいだろうな。農園についてもそうだが、モニカならシーサーペントが出た時に対応できる」


 大砲がシーサーペントに届くかという問題はあるが、射程圏内に入れば追い返すくらいはできそうだ。


「ホルスト卿も次回はエンデハーフェンに残り、こちらから支援するとのことです」

「あちらはやることがないからな。了解した」


 ヴィント州の自治から、次回の堤防工事まで色々な話をユッタと詰めていく。

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― 新着の感想 ―
[一言]  初めて作成した大砲が1発撃っても壊れないほどの製鉄技術って実はかなりすごかったりする。鉄の厚みにムラがあるだけでそこから破裂するし破片が飛んできて何て事故もあったらしいからね。
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