第83話 農園
ココナッツに関しては味より油が取れることが重要な気はするが……。
「味よりも生命眼を使った時の威力か」
「試す」
モニカがやる気。
危ないのだが、シーサーペントを倒すのに使えそうなのだよな。
どうにか試したいが、どうしたものか……。
生命眼は種子の成長や耐久を上げる。しかし、生命眼であげられる種子には上限があり、上限以上に設定した種子は衝撃を受けると爆発を起こす。
弾丸を作る時に調べた結果、上げる度合いでどの程度の衝撃で爆発するかは変えられるのが分かった。しかし、ココナッツで試したことがないため、種子の上限がどこかや、どの程度の衝撃で爆発するかもわからない。
ココナッツは大きい。どこかに置いて遠くから狙撃したらどうだろうか。
モニカに考えを伝えると、試してみるとのこと。
街から少し離れた場所で試してみることに。
草原の中に生えている木の近くにする。
木は細く小さいが、目印にはなるだろう。
「ここにするか」
「おく」
土を少し掘ってココナッツが転がらないように設置する。
見学に来たアンナたちには先に百メートルほど距離を取らせる。距離をとったことを確認すると、オレとモニカは種子の数値を設定して離れる。
百メートルの距離からココナッツの大きさに当てるのは難しく、当たらない場合は徐々に近づいていく予定。
モニカが銃を取り出して、弾丸をこめる。
ヴァイスベルクの森を越える間に撃ち続けたため、モニカは手慣れた様子で弾丸を装填すると構える。
「うつ」
モニカはそう言って、一呼吸置くほどの時間で銃を撃った。
打ち出された弾丸の先、ココナッツを置いた木を注意深く確認する。
——ドゴオオンッ
鈍い大きな爆発音と共に、風圧を感じる。
音より早い段階で木が吹き飛ぶのが見えた。
「一発で命中させたか。しかし、すごい威力だな」
「大爆発」
「その通りだな」
爆発した場所へと近づく。
木は吹き飛ぶのをみたので当然跡形もない。ココナッツを置いた場所は、大きく抉れ、クレーター状に大きな穴が空いている。
「予想はできたがすごいな」
「魔物も一撃」
「まぁな……」
ここまでの威力だと、人間も一撃なのだが。
種子の数値を変更している時に爆発したらと思うと怖い。砲身を作って周囲に被害が及ばないようにしたほうが良さそう。実験は成功したので今日のところは帰ることとする。
エンデハーフェンに戻ってくると、ホルスト卿が何人かの人と集まっている。
「ホルスト卿、どうされました?」
「晴れているのに雷のような音が鳴ったため確認しております」
雷……?
そんな音は聞いていない。
「ゲオルク、ココナッツを爆発させた音では?」
「ああ」
爆発音が雷の音に聞こえたのか。
低音で響き渡るような音はあまり聞かない。攻撃用の魔術を使った場合には同じような音がする可能性はあるが、普段から聞くような音ではない。
ホルスト卿にモニカの能力について話した。その上で、小さい種子を爆発させて威力を見せ、種子が大きくなると威力が上がることを説明する。爆発させたココナッツを見せるとホルスト卿も納得した。
「爆発した時の威力が凄まじいため、安全を考慮して今日は一度でやめましたが、安全対策ができたらまた実験する予定です」
「住人に通達しておきます」
「次回、実験するときはお知らせします」
騒動になるのは本意ではない。
影響がないように街から離れたつもりだったが、距離が足りなかったか。
「承知いたしました」
「次の実験は期間が開きそうです。砲身を作る時間も必要であり、そもそもココナッツの数がそうありませんから」
「ココナッツであれば街の農園で育てていますので、ありますぞ?」
「そうなのですか?」
「木は木材、果実も繊維をロープにしたりと優秀であるため増やしています。他にも現地の植物をいくつか育てております」
畑まだそこまで大きくなく、小規模だと聞いていた。しかし、思ったよりも大規模にやっているのかもしれない。……もしかして、ヴァイスベルゲン王国の小規模と、グリュンヒューゲル帝国の小規模は大きく違う?
一度畑を見学しにいくべきか。
「ホルスト卿、一度エンデハーフェンの畑を見に行っても?」
「もちろんですとも」
時間がないため、畑の見学は明日向かうことに。
エンデハーフェンから見て北側に街の畑は作られている。
今まではエンデハーフェン東側の北東方向にある街道を中心見て回っていたため、北側に向かうのは初めて。
北側作られた街道を進む。
「北にはロートヴァルカン公国があるんだったか?」
「ええ、ロートヴァルカン公国からは、港の建材を持ち込んでいると資料に書かれていました」
「材料を持ち込むにも随分と距離はあるようだが、帝都よりは近いか」
ロートヴァルカン公国はかなり寒い地域だと聞いている。火山地帯でもあるため、ヴァイスベルゲン王国ほどは寒くないらしい。
北側もまた草原が続いており、草原を馬に乗って走ると一時間もしないうちに集落が見えてきた。
集落までの畑を走る。
麦も育てているようだが、聞いた通り水田が多い。
「やはり想像以上に大きいな」
「ゲオルクの予想通りでしたね」
昨日のうちに規模を誤解しているのではないかと説明をした。
説明からアンナも同様の考えに至ったようで、見にいくことに賛同してくれた。
「一部を輸送しているとはいえ、エンデハーフェンの食料を一つの農村で補おうと思ったら畑が小さいはずがないか」
「ヴァイスベルゲン王国であれば農村とする大きさですが、ホルスト卿は農園と言っていました」
「感覚が随分と違う」
「ええ」
田んぼがいくつもあって農園。
オレたちの勘違いに指摘してくれそうなユッタも帝国の出身。ユッタが優秀とは言っても、さすがに常識の違いまでは把握できないだろう。それにユッタはユッタでエンデハーフェンの状況を把握するため、忙しく動き回っており近くにいない。
「農園に名前もないのか」
「街の一部なのでしょう」
話をしながら進むと、家がある場所にたどり着く。
家の前には案内をしてくれる人が待っていた。農園には事前に見学したいと通達していたこともあっため、待っていてくれたようだ。
オレが新任とはいえ、長官ということで緊張した様子。緊張しなくていいと伝えてから、早速農園を見て回ることに。
農園は米と小麦を中心に、野菜や果樹園まであると教わる。
畑の規模はモニカが住んでいたヴァッサーシュネッケ村を超えているようにも思える。家畜も飼っているようで、放牧する場所を合わせると確実にヴァッサーシュネッケ村の規模を超えている。
今日の目的は色々とあるが、実験に使うためのココナッツを譲ってもらうのも目的の一つ。
川に近い場所で育てられているヤシの木を目指して歩いていると、背の高い草が生えている一角を通る。
「これはもしかして砂糖が取れるサトウキビ?」
「はい、そうです」
ベーゼン商会に探してもらおうと考えていたものが、エンデハーフェンで作られていた。
「種子をもらえないか?」
「種子ですか? 切って植えれば節から芽が出てきますが」
「できれば種子が欲しい」
節から増やす方法では育てるの早くできるが、生命眼を使っての種子の改良ができない。
農園を案内してくれている人が種子をつけているさとうきびがあるか、探してきてくれることに。
「ありました」
「ありがとう」
種子に鑑定眼を使うとサトウキビの種子と表示される。生命眼を使うと、種子を改良するための数値が表示される。発芽しないものは数値が表示されないので、問題なく使えそうだ。
種子をモニカに渡す。
「これで砂糖が作れる」
「いっぱい作る」
そう言いながら、モニカは力を入れて頷く。やる気は十分だ。
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