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魔眼の転生者 〜忌避された者たちは、かけらの希望を渇望する〜  作者: Ruqu Shimosaka
第三章 ヴィント州

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第81話 移住先の生活

 すぐにシーサーペントの産卵場所に向かうわけにもいかず、一週間ほどが経った。

 海を見に行った時にいたシーサーペントなのかはわからないが、今でも湾内では定期的にシーサーペントが目撃されているらしい。二千人の家を振り分ける関係で工事は止まっているため、シーサーペントが出てもあまり関係はなかったようだ。


 港の工事が止まっているため、オレも振り分けをしている。

 カムアイスからの民はようやく家が持てた段階で、オレやアンナは一段落といったところ。次は各自の仕事を振り分ける必要があり、そちらも順番に振り分けていく。

 振り分ける前から、事務経験がある人は最優先で庁舎へと引っ張っていかれた。


 庁舎の長官室となったオレの部屋で、アンナから名簿を渡される。

 名簿は適性のある職業を打診するもの。

 渡された名簿には、事務経験はないが教えればすぐに覚えられそうな人が乗っている。

 名前を確認していくと驚く。


「アルミンや魔術師まで含まれているのか」

「そうです。できそうではありませんか?」

「できるとは思う」


 名簿での打診は断る可能性もありはするが、命令に近いため断る人は少ないと予想される。

 ……どうするかな。

 できるかできないでいえば、できるとは思う。

 しかし、魔術師に事務をさせるのは勿体無い気がする。


「事務も必要だが、魔術師の方が少ないんじゃないのか?」

「その通りです。ですが今は事務が欲しいと言われています」

「今はそうかもしれないが……先のことを考えると、魔術師に事務をやらせるのは間違っていないか?」


 人手が足りていないのは理解できるが、魔術師はそう簡単になれるものではない。魔術を使うことはできる人はいても、魔術を作り出せる人は少ない。


「やはりそう思いますか」

「今は生活に使う魔道具を作ってもらった方が良さそうだがな。収納袋で街の外から運んできてもらう手もあるが、魔術師が多くいそうな大きな街まで相当遠い。エンデハーフェンで自作しないと数が足りないんじゃないか?」


 二千人がエンデハーフェンに追加された。

 エンデハーフェンへと持ち込んだ魔道具もあるだろうが、雪国のヴァイスベルゲン王国とは気候が大きく違う。必要になってくる魔道具の違いから、足りない魔道具はかなりの数になるだろう。


「ええ、魔道具が足りないと思っています。持ち込んだ魔道具には部屋や体を冷やすようなものがないため、買い付けすることをベーゼン商会と話し合っています」

「冷やすといえば、森の中で倒した雪虫から紋様を手に入れていたはずだ」

「紋様があったのでしたね、忘れていました。作れるのならエンデハーフェンで作った方が速そうです。やはり魔術師に事務を任せるのはやめましょう」


 名簿から魔術師を外すのが決まった。

 他にも事務ができるような人員はいる、そちらが育つまで待ったほうがいい。


 アンナが別の名簿を出してた。


「農業を主体にするものたちをどうするか迷っています」

「街の中に住んで農業は厳しいな」

「ええ。港の工事に人を回すことも考えていますが、食料は必要です。モニカも今は街の中に住んでいますが、別の場所を用意すべきだと考えています」


 モニカが嫌がらない限り、農業をしないという選択肢はない。

 なにしろモニカが本気を出せば、街一つくらいは自給できる作物を作れる可能性を秘めている。


「農地となる場所はあるのか?」

「現在農地としている場所はあまり大きくないようです。港に来た船に補給するためもあり、農業する場所はいくつも選定されているみたいです」


 アンナが話しながら資料を渡してくれる。

 エンデハーフェンの近くには川が複数あるようで、どれかの川の近くに農村を作る計画のようだ。


「川の近くが前提となるか」

「エンデハーフェンのように海に近い場合、井戸を掘っても塩水が出てくる場合があるようですね。今後の発展も考え、エンデハーフェンは川から水を引いていると書かれています」


 海が近いと海水が地中に染み込むか。

 山の中で生活していたために、井戸から塩水が出てくるとは考えたことがなかった。

 農地の位置を改めて確認すると海から少々離れた内地にある。


「農地とする場所はエンデハーフェンの拡大を考え、少し離れていた方がいいが、離れすぎるのも問題か」

「農地に適しているかの問題もあります」

「モニカに一度確認してもらった方がいいな」


 オレも生命眼は使えるが、モニカの方が農業についての知識が豊富。モニカに農地を決めてもらい、開拓した方が良さそうだ。


「ゲオルク、候補地を見に行きませんか?」

「農業を始めるなら早めがいいか」


 モニカも暇をしているだろうしな。

 屋敷に戻ってモニカを誘うことにする。


 屋敷に戻ると、ヴェリとアルミンも暇そうにしていた。

 街の外に出るなら護衛が必要。二人を誘うと、準備してついてきてくれた。

 兵士も何人か護衛として連れていく。

 モニカの父であるリウドルフも連れて行きたかったが、戦えないため今日のところは遠慮してもらった。


「アルミン、部屋や体を涼しくできるような魔道具を作れないか?」

「確かにあると便利そうだ。旅で随分となれたつもりだけど、今も暑いとは感じてるし」

「ヴァイスベルゲン王国と気候が違いすぎるからな。外に出れないほど暑くはないが、海が近いからか湿度も少しあるからな」


 体感的な温度で言うと、三十度前後だろうか。

 気候としてはもっと暑くなってもおかしくはないと思うのだが、海が近いおかげだろう割と涼しい。今のところ、四十度を超えるような人が活動するには不適切な気温にまで上がる様子はない。


「暑いといえば、作物は同じものを育てられるの?」

「小麦は作っている場所もあるようだが、気温からかあまり適した場所ではないようだ。生命眼があれば育てられるとは思う」


 小麦でパンも焼いているが、地域的には米が主食となっているようだ。

 エンデハーフェンに来る途中で、転生してから初めて米を食べた。こんな味だったかと懐かしい思いがありつつも、米が長粒種と呼ばれるインディカ米に近いものだった。

 皆はやはりパンの方が慣れているようで、小麦が育てられるといいのだが。


「甜菜はどうなの?」

「甜菜は寒い地域でないと育たないと思う」


 生命眼を使っても厳しいのではないだろうか。

 モニカに尋ねてみたほうが早い。


「モニカ、育つと思うか?」

「無理」


 即答。

 分かっていたが厳しいか。

 だとしても砂糖は嗜好品であるため、そこまで残念だとは思わない。


「諦めるか」

「砂糖欲しい」


 予想と違うモニカの反応に困る。

 モニカとアンナから期待するような視線を受ける。

 どうにかなるか考えてみる。


「甜菜の代わりになる作物を、ゼーベン商会に探してもらうか。元々砂糖は南の方で作られていた、探せば手に入るだろう」


 甜菜があったのなら、サトウキビもあるだろう。

 元々暖かい地方でしか砂糖は作れなかったのだ、元となっているのはサトウキビだろうと予想している。


「ゼーベン商会に頼んでおきます」


 アンナが即答した。

 よほど砂糖が欲しいようだ。


「ゼーベン商会のマルコに甜菜の代わりになりそうな作物の見た目を伝えておくよ」


 アンナは砂糖を欲しがっているが、売ってお金を稼ぎたいわけではないだろう。

 なぜなら今のオレたちはそうお金に困っていない。貴族としての年金、エンデハーフェンへの出張費などがあり、結構な額が給料として支払われている。

 買えばいいんじゃないかと言えるほどの額をもらっている。

 西の果てで買い物をするのは大変ではあるため、生産できれば楽ではあるのだが。


 売ってお金が欲しいという意味で砂糖を欲しがっているのは、ベーゼン商会かもしれない。

 帝都で残っていた砂糖をほとんど売った結果、驚くほど儲かったらしいからな。

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