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半径1メートルだけの最強。  作者: さよなきどり
第七節 〜遷(うつり)・初茜(はつあかね)〜
85/129

085 兵士のプリンシプル(原則)1

85 86 87 88 は“(うつり)”『最初の一時間』迄の、“ひと綴りの物語”です。

  《その1》

笑覧いただければ幸いです。

※注

黒い◆が人物の視点の変更の印です。

白い◇は場面展開、間が空いた印です。


◇ (主人公の視点に戻ります)


 ()れは僕たちの戦争じゃない。極力戦力として参加したくない。僕たち無しで勝つことが大切だ。だって“次の遷(二年後)”には僕たちは此処(ここ)には居ないのだから。僕たちだけの力で勝ってはいけない。


 でもまあ、助けるって言っちゃたし。

 って訳で早々に参戦しちゃったよ。初っ端から崩れるってどうなのよ。まあ、想定内なんだけど……。訓練と実戦では違うってことだよね。



 でもね、ホントはね、カッコイイ言い訳じゃないくて、『痛いの嫌なの』系で極力避けたかった。

 僕の武器は相変わらずの“テルミット”だ。剣鉈ナイフに佩わせている。随分と細く出力を目一杯、これまでかって程に絞っているが、やっぱり六千度は六千度、平気でお手ては焼け爛れています。痛いです。


 もっとコスパのいい武器が良かったんだけど、開発する時間が有りませんでした。“飛竜落とし”の槍に採用されていた“斥力の刃”は“魔真眼”で勿論コピー済みだよ、でもね、あれ、刃筋を立てないといけないんだよね。基本がよく切れる刀だから。


 アーカイブから解凍はしたんだけど、やっぱり“剣術”は難しい。練度が絶対的に足りないっす。“武技魔装操”『秘技・毛槍回し』なんてガチなのを人にヤらせといてなんだけど、正直苦行(ストイック)って苦手。


 あと、カトンボの首を斬るのに擁壁の外に飛び出さなくっちゃならなかったんだけど、めっちゃ怖かった。


(戦術のその取っ掛かりの“盾”が初っ端からに崩れるって如何(どう)よ。連鎖しちゃったじゃん、如何(どう)よ。でも“盾の兵站班”はよくやってくれた。グッジョブ)


 元々高い所は苦手だし、地上三十メートルの高さで身体が完全に空に浮いてるのってさ。加えて足場が無いから身体捻って慣性力でテルミットを振るってたんだけど、縦回転とか捻りムーンサルトとか無駄にアクロバティックで、その度に腰から下がストンと落ちそうになってた。“万有間構成力(グラヴィテイション)制御魔技法(・フィネス)”が有るじゃんっ、て思ったけど未だまだ未熟で、細かいのはチョット。


 空中遊泳等のアクロバットは全て身体に貼り付けた子蜘蛛達によるワイヤーアクションの賜物なんだけど、久々に何代か目かの基門同軸亜次元領域が開いて蜘蛛たちとのネットワーク環境専用の疑似脳が構築されたっぽい。身体運動機構とも連動してコッチが考え無くとも瞬時に反応して呉れる。でもさ、やっぱり高い所は苦手だしその度に腰下がスッと落ちる感覚は慣れない。


 蛇足だけど、驚いたことに剣鉈ナイフは常時発動の六千度でも焼け落ちることは無かった。逆にルンルンだった。元々、魔力素粒子(アルカナ)の力場を形成し、刃にするような使い方が正しかったっぽい。今更だけど。本人も喜んでたし、黙ってるけど。


 黙ってるって言えば、ぶっちゃけ炎とか氷とかの刀身てさ、需要がなくね? 結局は男の浪漫チック要求装飾武器なんじゃね。本人は自分のこと魔剣とか自慢し(ブッ)てたけど。本人には黙ってるけど。使い所がない。放火魔っぽいし、冷たいだけだし。

(後で炊事にはピッタリと思い至り、改めて使おうとしたが完全拒否された。ウンともスントも反応しない。自分の長所は必要とされる場所で使ってもらってこそ、だと思うんだけどな)


 あと、自分用の耐衝撃吸収防護上着(タクティカル・ベスト)はない。これは完全な発注ミス。子供用を忘れていた。大人用は襟首からストンと足首まで落ちた。この世界の大人デカすぎ。半分は自分が着たくて拘りまくって開発したのに。残念無念。


 兵隊さん達一人ひとりに合わせて作ることも出来ず、S・M・L的な基準値を知りたくて標準体型で測ったんだけど。

 そこで、女性用の採寸なんだけど((ヤロー)はいいのヤローは)、当初はハナかサチに頼もうと思っていたんだけど、ひと目見て諦めた。

 標準平均値って概念がね、あまりにもね。胸部装甲に対して。


 女性用の採寸は折角なので兵站班から、盾使い(タンク)で一番優秀な女子、シヅキにお願いした。なんて言ったって大は小を兼ねるが小は兼ねない。別に大小に貴賤の区別はしないんだけど、大きいは大地の母(建前)。採寸は大変美味でした。ご馳走様でした。


 ハナに吊し上げを食らった。仕事だからと言い張った。

 実は“魔真眼”で一目見れば全て(本当に全て。ありがとう“魔真眼”さん)分かるんだけど、それはソレで問題になりそうなので絶対秘密事項。イヤ、確実に、絶対にバレたらハナに目は潰されるだろう案件。


 吊るされたけど、ソレはそれとして、そっと自分用には“詰め物”を要求された。みな迄聞かずに(言わせずに)首を縦に振っておいた。乙女の秘密だ。サチのもオソロにしといた。同類相身互い、だろ。抜け駆けはイケません。後処理めんどくせー的に。


 “詰め物”案件時にふと、新たな安全装置のカスタマイズを思いついた。それは本当にやばい時に最後の分岐点になるかもしれない。ならないかもしれないけど、僅かでも此方(こちら)側に傾くなら施したい。

 本当は全員分が望ましかったけど、、時間と予算が無かった。カスタマイズ出来たのは一番ヤバい“兵站班”と女性全員。勿論忖度。

 ハナ・サチはそうでも無かったが、シヅキの分は予想以上に時間が掛かった。出っ張り具合の関係で。



(まあ何だ、ずっと僕の出番なかったから、たまには活躍シーン? 的な、こともお話していこうかなって。忘れられるのって辛いと思います)



 トラブルや不幸は大概連続で起きる。

 旨い具合に、あれよあれよと引きずり込まれる感じで。まったく、いい事で“あれよあれよ”なんて一度だって無いのに。悪い方は結構な頻度で起こっている不思議。

 それとも人によって違うのかな。それなら納得は出来ないけど理解は出来るか。

 非常にムカつきはするが、人生はままならない。これも人によって違ってたらやっぱりヤダな。ありそうだけど。


  

 ◆ (再び、『或る槍使い《ジンク》』の視点)


 どれ程の時間が経ったのだろうか。


 今、隣の区画、十二番が倒れた。

 自分はその時は息つく暇もない六連戦中で、途中で擁壁の上のゴタゴタに気を取られ、対応が遅れるミスもあり詳しく観ていた訳ではなかったが、目の端で映るのは唐突に倒れる十二番の姿だった。


 カトンボの爪に殺られた訳ではなく、足を(もつ)れさせ、自ら転んで膝をヤッたらしい。カトンボを上手く泡に変えた直後で油断したのか、連続で起こる戦闘で疲労が溜まっていたのか。両方だと思う。

 当初はそれでも余裕の有りそうな様子で、オレも安堵していたが、ポーションを飲んでもすぐに立ち上がることはなかった。


 そのうちに彼の腕が上がり、ハンドサインでの要救助を知らせてきた。悲鳴を上げたり派手なアピールは急所と見なされてカトンボを呼び込む事となる。静かなギブアップ宣言だ。

 最後の一匹を“泡”に変え、自分の定位置まで戻って息を整えながら見やると、十二番は膝を抱え、苦痛に顔を歪めていた。

 下手な骨折よりも捻挫のほうが重大な怪我である場合もあるし。特に膝の靭帯なら重篤だ。


 治癒のポーションも万能ではない。疾病などの内科系は得意じゃない(稀に慢性的な腹痛は一時的だが治るらしい。ただ直ぐ戻る。なぜか腰痛も)。得意なのは切った張った、打撲や刀傷など、肉体の破損系の外科的処置は瞬く間に治る。限度は勿論或るが。

 そして骨折は治るが、その前に物理的な処置が必要だった。位置を直すとが。無理に着けても曲がったままになる。靭帯損傷は骨折扱いなのか。


 十二番にこのエリア担当の二人の兵站班が駆けつけ、一人が欠番のエリアの交代として残り、もう一人が負傷者を肩に担ぎ、敷地内で唯一の建物である指令所塔兼避難所の“櫓”に向かって走り出した。運搬係は同室のエルフだ。エルフはオレに向かって手を振った。

 あいつ、なんかここに来てやけにハイテンションだ。もしかしたら戦闘狂で、エルフの里を追い出された原因でもあるのかもしれない。

 読書家で物静かな普段の彼からは想像できないが、高い戦闘力と相まって、根拠はないものの、そう思ってしまった。


 “櫓”の下部には携帯装備のポーションでは完治不可能な怪我人を運び込む救急集中治療室(EICU)が備えられている。

 実は始まって直ぐの狂乱状態(バーサーカー)騒動の起因者(四番)が大腿部を突き抜かれ、運び込まれた。傷はポーションの限界を超えていた。半分ちぎりかけ、アレはもうダメだと皆が青くなっていたのに、ものの数十分で復帰して、今も元気で働いている。

 救急集中治療室(EICU)はポーションを超えた治癒技術を有する。ただ問題もあった。後遺症だ。

 そこには怪我前より少し、いや、だいぶハイテンションで笑顔を振りまきながら槍を振り回す四番の勇姿がそこにあった。


()()さんはイロイロ、エグい」

 とエルフがオレに教えてくれた。()()()彼奴(アイツ)か。

 ギルドにそんな凄腕の治癒師が居たかと疑問に思っていたが、オレの目玉を潰し一瞬で治したハム(アイツ)かよ、と納得してしまった。

 そしてエルフが呟いた“イロイロ”が酷く気になり、絶対に彼奴アイツの世話にだけはならないと固く心に誓った。


 治癒室帰りの起因者(四番)のハイテンションな笑顔が恐い。実は彼奴、ハムの治癒魔法は実に気持ちいいのだ。極上に。得も言われぬ幸福な気分に満たされ、両膝をついて天に向かってハラルヤと唱えてしまうほどに。それが恐い。無性に。

 目ん玉抉られ即治療からの、彼奴の眉間を撃ち抜こうとの()()も、訳わからなくなっての、ハイテンションからの錯乱だった。自分ではコントロール不可能だった。


 しばらくしてエルフ一人だけが戻ってきた。十二番の治療はもう少し時間が掛かるのか、終われば自力で歩けるようになっているだろうから付き添いはいらないか。ただチョットだけエルフの顔がさっきより真剣味を帯び、一度も僕にその顔を向けなかった。


 ヤツのことだ、何か揶揄(からか)って来ると思ったんだけどな。そのまま兵站班の相方と話し始める。なんか、避けられた? 意識的

に? そんな感じ。

お読み頂き、誠にありがとうございます。

よろしければ次話もお読み頂ければ幸いです。

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