066 “カワイイ”は至高
もうね、題名そのままです。
おそろしぬ。
ターゲットはハナちゃん。
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
白い◇は場面展開、間が空いた印です
人が集まり街が出来た時から背負った“業”であると。
◇
“投網”魔改造版の一機を実際に加工組み立て、地上に出てきている。ギルドの新兵たちが訓練している。その邪魔にならないように脇で試射だ。ワクワク。
そして今、“魔女っ娘”ギャルズのクール改めクッコロ系が一式を装備して“投網”を斜に構えポーズを取っている。うん、なかなか様になっているね。でもやっぱり運動会の玉入れみたいだけど。うーん、それよりも昔見たアメリカの幽霊を退治する映画で、トム・ハ◯クスが背負ってたのとそっくり。なんだかなって感じ。
所々の修正は有るものの大した問題はなし。いいね。順次3Dプリンターで印刷させ(全部の素材が蜘蛛の糸であるとの事実に改めて驚愕)、あとは加工と組み立てだけ。勿論手掛けるのはベテラン四人組。
それにしても、“魔女っ娘”ギャルズのクール改めクッコロちゃんカッコイイな。『玉入れ競争』とか『ゴースト何とか』とか言ってごめん。
絵になります。さすがクッコロといえど美少女騎士系だね、何より試作品のために簡易でタスキ掛けで背負っているのだが、なんですかね、最近の高校生は発育が善いと言いますか、グッジョブたすき掛け。くっきりハッキリ。
と、真横から殺気! 咄嗟に頭をずらす。その僕の眉間があった空間に鋭いハイキックが通り過ぎる。もうね、止めてその必殺ワザは。
「……私も、アネカも有るから。ぽっこりと」
そうだね、そりゃそうだ。それに安心して、ソウユウのも俺は割と嫌いじゃない。根が紳士だから。
ぽっと頬を染め照れる不思議ちゃん。
と、真横から再び殺気が! “投網”の丸い銃口が僕の額の弩真ん中へと向けられ、真っ直ぐに構えられていた(YESロ○ータNOタッチ!)。
正確に素早く遊底が三回スライドした。
咄嗟に頭の上から蜘蛛が飛び降り避難、不思議ちゃんも何時の間にか消えていた。
ああ、“投網”の粘着性って強力で、除去の大変なんだよなあ。
まあ、連射性も問題なし、と。
でも“投網”の弾が僕を撃ち抜く事はなかった。途中で全て撃ち落とされた。三発とも。視認より、銃声は若干遅れて聴こえていた。
銃声のした方向、上空を全員が一斉に見上げる。ギルド擁壁の上、其処に『シャキーン』って効果音とともに“火縄銃モドキ”を斜めに構えたハナがすっくと立っていた。
シンなマスクな二輪を運転する映画の、或いはTV版の冒頭登場シーンのように。
赤いマフラー締めてねーよな。
そしておもむろに「とー」って口にして、飛び降りた。手を頭上で揃えた古式に則ったジャンプ? ぜんぜん上に上がってねーけど。空中前転もなし、ただ落ちてるだけ。落ちてるのかよ⁉ 手を垂直に綺麗に伸ばした姿勢で縦で。二十メートルの高さから。
止めて、心臓に悪いから。
「大丈夫でちゅ。子供たちがサポートしていまちゅ」
判ってる。見えてるから。魔的に光学迷彩化した子蜘蛛達が肩や腰やお尻や腿やらに張り付き糸を多数方向に吐き出し姿勢制御と減速に努めている。
例の立体機動とかUSA蜘蛛男とは比べ物にならない程に無様だけど何とか形にはなっている模様。アレだ、ブルーバックを背景としたワイヤーアクション。今どきの3Dを使わないこだわりのアナログ仕様。裏方スタッフさんがメチャ優秀。
蜘蛛漢兄さんのように振り子の要領で壁面で跳ねるように二回三回と蹴を入れ、速度を落とし、最後はふわっと地上に舞い降りた。
ふわっとスカートが広がり腿の付け根まで覗き、慌てて手で抑えて顔を赤く染め。までを様式美として一通り熟し、我々を斜めに眺め、耳に掛かった髪の一房をさっと払い。
「ごきげんよう皆様。処で、何をなさっているのかしら」
悪役公爵令嬢を降臨させ(自身は侯爵だけど、ソコはノリだから)。
「人に銃口を向ける意味が判っているのかしら? それも、私のハム君に」
ひと睨みで“魔女っ娘”ギャルズを完全に萎縮させた。
まあいいや、ほっとこう。それより、子蜘蛛たちよ、ごくろうさま。そしてありがとう。無理させたね。
蜘蛛を労う。これ大事。人の好意を当然で当たり前の事だと、それを当たり前の様に思ったらソコで終わるから。本当にありがとう。そしてごめんね、大変だったねハナのお守りは。
それにしても、子蜘蛛を使って高速移動の練習しろって言ったけど、飛び降りろとは言ってないんだけどな。本当に心臓に悪い。
おっと、遅れながらもサチも降りてきた。壁を蹴る回数を増やして(壁を垂直に駆け下りるように。見たことある。トム・ク◯ーズのアレだ)安定性と安全性を確保していた。サチはパスが通じてないから蜘蛛との意思の疎通がイマイチで、使役できる数も少なく、何より未だ蜘蛛を恐れていてビクビクしていたが……。颯爽としている。よくやっている方か……でもマダマダだがな。鍛錬が足らん。
「何を偉そうに……」と降り立ったサチ。
「そうだぞ、何してるのかなハム君は」とハナが僕の頬を抓る。
止めて、弟子達が見てるから。大師匠としての威厳が失墜するから、失墜する程の“高さ”は残っているのかとか、ソコ、特にサチ、黙れ。また泣かすぞ。
「またサッちゃんをいじめる。ダメなんだからね」
ひねり角度を十度増す。取れるから、取れちゃうから。
やっと離してくれたと思いきや、再び“魔女っ娘”ギャルズに向かい、左手を腰に、これまでかと言うほどに仰け反り、超絶上から目線で、右手人差し指を真っ直ぐ四人の真ん中にビシッと刺し示し。
「分を弁えなさい。
自らの主に恥じない行動を心掛けるように。私からはそれだけです」
ああ、そのセリフ気に入ってたんだね。でもね。
精密射撃から擁壁上部での登場シーンを経てのライダー張りの飛び降りパフォーマンスに最初はあっけにとられていた彼女達だったが、腐っても、況んや女子中高校生で在るが故の強者アラクネ十代女子にとって、“カワイイ”は至高。神である。よって。
「キャー、ナニこの子、カワユすぎるンですけど。ナニなに、このお人形さんみたいなキレイな子! 神か?」
「マスターと一緒に来た女の子がいるって聞いてたけど、ウソ、超かわいいんですけど、超絶なんですけど」
「……お姉ちゃんて、……呼んでいいよ」
「素直に負けを認めるわ。だから今夜、お部屋にお邪魔してもいいかしら」
その後、揉みくちゃにされて至るところを擦られ揉まれ、可愛がられているハナ。
「ハ、ハム……く……ん、た、たす……」
乙女の団子状態から腕だけが伸ばされ、僕に助けを求めるハナ。ごめん、耐えてくれ。女子中高生の可愛いい至上主義に対抗する術なんて、僕は持っていない。
「う、裏切り者」くぐもった声だけが虚しく……。
まあ、楽しそうで何より。
でもさ、まだまだ仕事が残ってんだけどな。まあいいか。
ギルドの敷地から楕円に高く聳える擁壁で縁取られた空を見上げる。
妙に陰影が深い細切れの雲が早く流れている。紅く染まり始めた晩秋の夕暮れ。
キャピキャピうふふ。もう、あははは!
ちょっと歪だけど、この街に来て初めて誰かが笑っているのを聞いた。
キャピキャピうふふ。もう、あははは!
陰影深く紅く染まった雲が早く流れていく。
未だ手付かずな仕事は山程残っているが……もうしばらくはこのままに……まだ、このままに。
残された期間は後三日。四日後には無数のカトンボがこの空を覆うだろう。
それでも……。
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