表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半径1メートルだけの最強。  作者: さよなきどり
第四節 〜ギルド、さまざまないろ〜
49/129

049 右肘がギシギシと悲鳴を上げる。派手な火花が長く散る。

赤鬼ゲートと戦います。赤鬼はメチャ強いです。チートです。

対する半端者ハムくんの、明日はどっちだ。

ご笑覧いただければ幸いです。


 何だよ、その速さバカ! そして重いーッて!



 なぜか戦っています。赤鬼ゲートと。ハナがぺろっと言い放ち、アレよあれよと言う間になぜかギルド兵のみなさんがぐるっと囲むストリートファイト的な即席リングの中央で。

 委員長系ギル長がいい顔してウキってたなあ。何んか溜まってたんだろうなぁ。因みに僕に心当たりはない。ぜったい。


 と、人のことに構っている余裕は無い。赤鬼ゲートは『子供相手に何を』とかほざいていたが、いざ始まるといい笑顔で迷いなく棍棒フルスイングの先手を取りやがった。実にエグい。で、継続中。


 あのデカイ体と、なおかつその身の丈を超えた棍棒を見せられたら普通、“力任せ一辺倒(パワーヒッター)”系だと思うじゃないですか? 絶対。まあ、トドメは棍棒フルスイングなんだけどネ、やっぱり。

 でもそれを凌駕するのが、そこに至るまでの過程が実に名にも止まらない(スピードスター)系な訳だ。

 まさに僕が憧れ切望する島村さん的な“加速装置”を体現している。ズルすぎ。


 “加速装置”とは即ちストップ&ゴーだ。速度は出せる。でも止まれない、且つ逆に再加速なんてどんだけ体に負担を強いるのか? 普通は壊れるでしょ。それを易々と実現させ僕に迫り、最後は棍棒マッハのフルスイング。


 地面が大きく抉れ、瓦礫が飛散する。これも厄介。必殺の一撃はなんとか避けられても一々僕の体のアチコチに傷が生じる。まるで一斉艦砲射撃。不味い傷だけ治し、その他は放置。回復魔法も全部を直すには手が間に合わない。


 顔面ギリギリで通り過ぎる風圧だけで鼻の先が持っていかれそうになる感じ。恐ろしすぎる。

 なんにしろ、コレ、人に行って良い所業じゃないですよ。少しは遠慮しましょう。ギルドのNo.2なんだよね。大人の対応をしようよ。嫌なことあってストレス発散するなら一人でやって、人を巻き込まないで。冒険者ギルドなんだから魔物相手で充分にどうぞ。


「失礼だな小僧、オレは元“総会頭付き警護部実働部隊長(ボディガード)”だ。専門は魔物ではなく、人だ。勿論、オレの業も人を守る為にある。だから安心しろ、あんまり壊しはしない。ちょっとだけだ。だから潰れろ小僧、我が剣術の真髄である俊速の前に!」


 ドドドドドーガラドッガーン! って感じで迫り来る()ぶっとい棍棒。

 意味わかんないし、凶悪だし、サイコだし、剣術じゃなくて棍術だし。

 ボディガードって所詮は肉壁なんですけど。その肉壁が事ある毎に人肉ミンチ作ってたら、そりゃ辞めさせられるよな。黙って肉壁してろ。


「侮るな小僧!」


 ぐわ! 避けた足元に棍棒が叩き込まれ、拳大の鋭角な土塊が四方に飛散。左目の瞼を掠める。血が目に染みる。傷は瞬時に治せても既に流れ出た血は元に戻せない。拭う暇もない。左目が見えない。こういう事もあるのな。

 実際、炸裂弾が普及したのは十九世紀末で、それまでは殆ど無く、全てこの“土塊の飛散”でやられている。そしてこれがなかなか効く。(ツブテ)の散弾だ。


 ねえ、何度も確認するけど、これ模擬戦だよね。打撃も寸止めしてくれるんだよね。とてもそうは思えないんですけど。ほら、今の横腹掠ったヤツ。ちょっと僕が腹を引っ込めるのが遅れてたら確実に抉ってたよね。取れちゃってるよね。


 ねえ、何でそんなに嬉しそうに目ん玉ギラギラさせて棍棒を振ってるのかな。あれ、焦点合ってる? いっちゃってない? 口の端が裂けるように引き攣り笑ってるのは何で? まずは垂れてるヨダレを拭こうよ。

 僕ったら見た目は完全に子供なんですけど。

 これ児童虐待の範囲を軽く超えてるよね?

 馬鹿なの?


 速度でも打撃力でも劣る僕が、何故(なぜ)今まで持ち堪えているのか? そりゃもう全力ですよ。

『縮地』により身体の動かし方で無駄を極力削り、『万有間構成力(グラヴィテイション)制御魔技法(・フィネス)』を発動させ、筋肉や身体の体重移動ではあり得ない方向へ瞬時に移動して避ける、逃げる、フェイントをかける。実際、フェイントがよく効いてる。


 実はゲートの俊速の動きも打撃力も“魔法”だったりする。実際に“高高速自動読取(トゥルース ・)解析及び再構築付与(スルー・アイ)”【真魔眼】で見える。ゲートの膝や肘、体のアチコチで魔法陣が浮かび消え、綺羅星の瞬きの如くゲートの体がひかり輝いている。

 魔法少女おじさんかよ。


 ピカピカ光ってウザいアンビエントなブルジョアなオプションだと思っていたが、次第に膝や肘等各稼働部に現れる魔法陣の大きさ、向き、強さを読む事で次の動きが予想出来る事に気づく。マジで持っててよかった“魔真眼”様優秀。ほんと僅かだけど、助かっている。

 そして魔法はやはり半自動制御(セミオート)にしてなんぼ、赤鬼のそれも言わんや。そして極小使用に制限しても制御ならシーケンスに偏りやパターンが出やすい。


 高速に動く手足に思考が追いつかないのだろう。だからパターンの組み合わせで対応している。それを読み解く。

 そして気づいた。気づいてしまった。やっぱ赤鬼ゲートはすげえ。

 速度の遅いCPUに連続して命令を出すと詰まって瞬間的な遅延を起こす。それが赤鬼の攻撃手順にも見られる。その遅延が最後の地面への棍棒砲弾打ち込み後に起こるように調整してカバーしている。弱点を攻撃に転嫁する手練に脱帽。


 因みに瓦礫飛散も魔法。あらぬ方向へ向かう筈の軌道にバイアスを掛け、全て僕にネジ曲がって向かってくる。えげつないっす。

 炎やら氷を飛ばすのだけが魔法じゃないってことっすね。勉強になります。って、のんきに感心してる場合じゃない。


 赤鬼が繰り出す無数にあるシーケンスパターンをその初動だけで読んで何とか避けるのが精一杯。脳みそが焦げ付きそう。打つ手ねー。詰むかも。

  

 助けてドラ○○ん。じゃなくて勿論、可能なら泣き付きたいけど無理だから、手前の劣化版に話しを振る。

 似非賢者さんよ、“魔真眼”の真価を見せろや、そろそろ使えるんじゃね?


〈 ∮ 検索及び検証考察結果を報告

 無理ですね。残念です。

 と結論 ∮ 〉


 即で拒否られた。やっぱり劣化版。期待を裏切らない。裏切れボケ!


〈 ∮ 検索及び検証考察結果を報告

 完コピは完了していますが、使い熟すにはやはり身体の強度が足りません。ゲート様の動きそのものは魔法ですが、その制御は全て筋肉に依存しています。中途半端ですが逆に複雑で実にシンプルで良く出来た魔法ですね。公彦では使いこなすのは無理です。『今現在では』との注訳はつきますが。

 突然ですが、今、ゲート様の練度が向上しました。次の打撃は避けられません。

 と結論 ∮ 〉


 って、なに冷静に言ってんだよ。

 後先考えないで上半身を無理な体制で捻り、腰の“剣鉈ナイフ”を引き抜く。で、迫り来る棍棒に“剣鉈ナイフ”の腹を合わせ押しやり軌道を変える。右肘がギシギシと悲鳴を上げる。派手な火花が長く散る。

 こなくそ! 手加減しろやボケが‼


『ご主人、身が削れています。削れています。痛いです。使い方が違いますぅ』


 我慢しろ! 後でナデナデしてやる。ケッパレ。


『ご主人、ガンバリます』


……使い方?


 剣鉈ナイフと醜悪棍棒が離れる。手首を返す。刹那、剣鉈ナイフに|魔力素粒子(アルカナ)そのままの刃を纏わせ1メートルの刀身を出現させ、斬る。


 別にこの模擬戦に勝つとか負けるとか興味なかったし、勝っても負けてもアレだし、どうすっかなーと思ってたけど、今現在、体勢が崩れている。次の一撃で僕は負ける。負けるのはいいし、構わないし、当初の予定でもあったんだけど、やっぱり痛いのやだし、視線の先にハナの心配そうな顔が映った瞬間、斬っちゃった。ゲートの軸足膝の魔法陣。ラッキー。

 魔法執行を強制解除。1メートルで消える俺のクソ魔法、なら逆も然り。


 双方が体勢を崩して距離を取る事を選択。


 似非、ゲートからコピーした魔法“加速装置”が使えるのは何秒だ。


〈 ∮ 検索及び検証考察結果を報告

 十秒です。

 ただし、その後は深刻な身体崩壊を起こし、身体復旧魔法でも三分を要します。その間、動けません。

 と結論 ∮ 〉


 上等。“加速装置”発動。行くぜ!



 ……うまく行くと思ったんだけどなぁ。残念。


 欲を掻いて(実際はビビって)、最初に機動力を奪う為にゲートの右膝の魔法陣を斬りに行ったのが間違い。さっき偶然に上手く行った成功体験が僕を増長させたらしい。確かに軽率で浅はかな無駄な一手ではあったが、それが忌じくも致命的な最悪な悪手となってしまった。


 普通はこんな場合でなら踏み出し足を狙うはずが、なんせこっちってズブズバな素人じゃん。反対を狙っちゃって、テヘペロ。それが逆にゲートに僅かな戸惑いと言う名の振れと遅延を生み、繰り出された右下から這い上がる醜悪棍棒の軌道をほんの数ミリずらす事に成功。結果、決して届く筈がない僕の切り返しが接触してしまう。


 (ここ)までならまだ、なんとかなった。

 最悪で決定的なのが。

 小さな花火が散る。刹那の時を捉え、『万有間構成力(グラヴィテイション)制御魔技法(・フィネス)・初級【斥力】』を発動させ、弾く。弾いてしまう。


お読み頂き、誠にありがとうございます。

よろしければ次話もお読み頂ければ幸いです。


毎日更新しています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ