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半径1メートルだけの最強。  作者: さよなきどり
第四節 〜ギルド、さまざまないろ〜
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046 ヤンキーメンチ切られてる

ギルド、さまざま〜編 突入です。

ハムくんが絡まれています。

ジャンプしてチャリンチャリンのアレです。

ご笑覧いただければ幸いです。

※注

白い◇は場面展開、間が空いた印です。

 スっごく睨まれてる。


 下斜めから舐めるように迫り上がるヤンキーメンチ切られてる。

 総勢百五十人ちょっとに囲まれ。


 ココはギルドの敷地の中心にある訓練場だ。っていうか、敷地の大部分が何もない訓練場っていうか空き地なんだけど。それなりに広いはずのそこは、周り四方を異様に高い壁に囲まているせいか、圧迫感と息の詰まりそうな閉塞感がっパない。


「聞いてんのか、ワレ! っおおー! 怖気ついってんじゃねーぞチキンが‼」

 と、昭和ヤンキーな新兵君。

 頭中央でおっ立った真っ赤なトサカ頭がなんとも。

 すげーな。すごく立派。


 でもちょっと熱がすごいし顔が近い。なので、そのメンチ目玉に指を突っ込む。ぷすっと。すっごい絶叫を上げ地面を転がるヤンキー新兵君。

 僕はズボン(嘘です。スカートです)のポケットに両手を突っ込みポーズを決め、転がる新兵君(ヤンキー)の頭を踏みつけ周りを傲岸する。

 もう、踏んでる足下でいつまでも()っさく悲鳴ってて、真っ赤なトサカもバタバタうざいから回復魔法を流し、さっさと直してやる。

 オレ、()ッサスイ。おい、パンツ覗くなよ、目ン玉刳るぞ。


 ひれ伏せヤ! 下郎ども!

 勿論なんちゃってだよ、声に出してないよ。雰囲気雰囲気。

 あれ、なんでみんな冗談がわかんないのかな? 何故に僕を囲む輪が一歩にじり寄り狭まる?


 思えば異世界(こっち)に流れ着いたその時から、会う人会う人みんなが僕に敵意を向け、()れのない暴力を揮われ続けた。

 普通の異世界転生モノって言ったらチョット悪い事が起こっても直ぐに優しい先輩冒険者とか教えたがりの賢者様(似非は埒外)とか女神とか出てきてパッパッと瞬く間にチートにしてくれて、その後はウハウハ展開が定番じゃん。


 何で僕はいまだに“今ココ”なんだよ。


 知ってた? 今履いてるパンツ、股のところがパックリ裂けてるんだぜ。そんで何故かスカートなんだぜ。スカートってなんだな、スースーするし、なんか覗かれそうで、見られないとは思うんだけど、なんか意識しちゃって、股裂けがバレないようにお尻の穴をキュッと締め内股で歩いてるんだぜ。脱糞を我慢している子鹿状態なんだぜ。

 なんなのそれ? 泣くぞ。僕が何をした。

「日頃の行いが相当に悪いんだろうな」と赤鬼ゲート。


 あんだと、コラ!!


「あ、そうゆうとこ()確かにハム君あるよね」とハナ。


「自覚は無さそうですけどね」とサチ。

 あんだと、いてまうど!!


「うちの若いモンが失礼した」と輪の外で一人腕を組み眺めていた何処ぞの“姐さん”、いや委員長系ギル長さん。

 その彼女に僕も斜め下から「うんぁあ〜?」って唸っちゃたじゃないか。


「ところで、ギルド(うち)の戦闘指揮官であるゲートの下には付きたくない、その理由とはなんだ、教えてくれるんだろう」



 今朝、って言ってもついさっきの事だけどさ、食堂で他の兵隊に混ざって朝飯を食ってた。見た目スクランブルエッグの勿論魔物(クサレ)肉だ。見た目だけの寄せ具合が秀逸すぎる。それでも味はエッグの“エ”のカケラも無い真正クサレなんだからモウどうなってるんだか。


 因みにこの街サガンの冒険者ギルドは他の街のギルドとは少し事情が違う。他のギルドでは養成期間が終わるとさっさと独立するのが通例だが、このギルドではその殆どがギルドに残り“ギルド兵”となる。


 理由は凶悪な“溜まりの深森”と接していることと、やはり二年毎にやってくる“(うつり)”の所為だ。双方共に高度な連携を必要とする案件だが、それだけではなく、この街が珍しく住民の殆ど全てが落国の民(アッシュ)で、一族意識が強く全員でこの街を守る気概に溢れているかららしい。千年の昔から。


 因みにアッシュはサキュバスだけではなくアラクネなどその他多くの種族が居るらしいが、この街の住民の殆どがアラクネだそうだ。

 そんな訳で食堂は広いが、今はその三分ノ一も埋まっていなく、全員がまだ若い。なんか高校の体育館で同級生と机を並べて飯を食っているようだ。いやだいやだ。


 そんなことはどうでも良く、真正魔物(クサレ)肉を優雅にいただいていたブレックファースト時、唐突にガサツな“赤鬼ゲート”が表れ、

『オレの直属の部隊に入れ、オレから離れるなよ』

 と(のたま)ったが始まりだった。


 その後何やらウダウダ言い立て始めてウザかったので、

『遠慮しときます』

 と丁寧にお断りさせてもらった。ちょっと喰い気味ではあったが。


 途端、周りの兵隊達が一斉に食事を止め、僕を睨んだ。一糸乱れぬスプーンの同時テーブル叩き置き音が響き渡りビックっとした。

ハナのオケツが三センチ飛び跳ねた。あれは少なくない数のスプーンが壊れているな絶対。全く、マナーがなっていない。軍隊なら鉄拳ものだな。

 って、何やら皆さん怒ってらしゃる? 昨日はあんなにフレンドリーで和気あいあいだったじゃないですか。まあ言い過ぎか、敵対しない程度ですね。すみません調子に乗りました。でも今ははっきりと敵対している。ぽい?


何故(なぜ)だ」と赤鬼。

 僕は周りの皆さんに気を取られていたので思わず、

「無能な指揮官の下で死にたくありませんから」

 と本音を吐露してしまった。


 いやいやいや。これでも気を使おうとは思ってたんだよ。僕は大人だし。でもこと命に関わる事だったからさ、気が緩んだって言うか。わざとっていうか。まああれだ。


「何を兄貴にぶっ込んでんだよ、ああ?! 殺すぞ! 表出ろや‼」と前出の昭和ヤンキー新兵くん。



で、メンチ切られたから目ン玉刳って今に至る。


 でもなーそうか〜、兄貴って呼ばれてるのかー。ソコがダメなんだよなー。でもわかんないだろーなー。


 めんどくさいなー。はぅ〜。

 僕はハナに今もその肩に掛け、一時も身から離さない“火縄銃モドキ(M・R)”を貸してくれるように頼む。


「嫌よ」


「嫌って……」


 何とか宥めすかして借り受けたそれを、今だ埋まっているヤンキー君を無理やり立たせ、手渡そうと差し出す。


「な、なんだよ〜」ヨワヨワか! まあイイ。


「これで何でもいい、撃ってみろ。

 銃口(杖の先)を目的に向け、このトリガー(突起)を引けば発動する。なんなら僕でもかまわない」


「言質はとったからな。後で詫び入れても許さねえ」

 ニヤリと口角を上げると僕から“火縄銃モドキ”を毟るように奪い、銃口を僕の眉間に押し付け、トリガーに指をかけた。

 躊躇なしかよ。教育が行き届いてるねぇ。


 途端に銃の側面に刻んだ六つの小さな魔晶石を中心とした魔法陣が展開し次々に光り廻りだし、最後に銃口に射るような眩きが顕現し、そのままヤンキー君は膝から崩れ落ち、気絶した。


 銃口からは弾丸も、魔法的何かも飛び出すことはなかった。魔法陣も6つしか発動しなかったな。

 僕は地面に落ちる寸前の“火縄銃モドキ”を無事に掬い上げるとハナに返す。ハナは頬を膨らませご機嫌斜め。

 ごめんね。火縄銃を袖口で愛おしそうにフキフキしてる。


 崩れ落ちたヤンキー君は顳顬(ミケン)を擦り、僅かに血が滲んでいるが完全に失神しておりピクリとも動かない。僕は足の先から魔力素粒子(アルカナ)を流し擦り傷を治す。でも気絶からは回復しない。原因は怪我や病気ではないから。


お読み頂き、誠にありがとうございます。

よろしければ次話もお読み頂ければ幸いです。


毎日更新しています。


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