全男子生徒コンプリートを目指すサキュさんが俺の童貞だけ奪ってくれないんですけど!!!!
「セックス……セックス……」
僕のセックスはどこぉ?
どこに行ったのぉ?
セックスを求めて廊下を彷徨う俺の姿を女子達が嫌悪の目で見つめ距離を取って来る。
はん、こっちだってお前らなんか眼中にねーよ!
嘘です、誰でもいいからヤらせてください。
「セックスゥ!」
「おいおい、大分病んでるな」
「かしわぎぃいいいい!」
「ひゅー、怖い。これが童貞を拗らせた男の末路か」
「キエエエエエエエエ!」
こいつは柏木なんとか、少し前まで親友だった男。
今は俺の敵だ!
「少し先だったからって偉そうにしてんじゃねーよ早漏野郎!」
「そ、そそ、早漏ちゃうし」
「あるぇ? 図星だったぁ? チビで早漏とか生きる価値無いんじゃね?」
「てめぇ……はん!童貞よりかはマシだろ、この包茎野郎!」
「…………」
「…………」
「「コロス!」」
こんな外道を生かしておいて良いのだろうか、いやダメだ!
世界平和のために、増税だらけの政治家とビッグ〇ー〇ー関係者とゴミカス早漏チビは抹殺だ!
「あら、大変なことになってるわね。ケンカはダメよ」
「サ、ササ、サキュちゅわああああん!」
俺は貴方に逢いたくてずっと探してたんですよ!
サキュさんこと、佐々木 優樹菜さんはうちの学校で有名なビッチだ。
ビッチと言ってもパパ活に性を出しているとかでは無く、同世代の男子を食べちゃうのが趣味という最高の女性だ。
もちろんサキュさんという愛称はサキュバスから取っている。
でもサキュさんったら、うちの学校の男子全員を頂いちゃうなんて公言して食い荒らしているのだけれど、一向に僕の所にやってこない。
ずっとずっと待ってたのに!
しかも、しかもだ!
『まるで夢のような体験だったでござる』
『拙者みたいなキモヲタは対象外だと思っていたですぞ!』
『ニチャア……三次元も悪くないッスねぇ』
あの男子から見てもキモい奴らですら、童貞を奪ってもらえていた。
その事実を知った俺の心はポッキリと折れ、セックスを求めて彷徨う亡霊となっていたのだ。
「サキュさん! 何で俺を誘ってくれないんですか!」
「君は確か、和樹君、だよね」
「はい! 中森 和樹、十七歳! 好きな女性のタイプはえっちなことが大好きな子です! 好きなプレイは剃毛プレイです! 僕とセックスしてください」
「うふふ、元気ねぇ」
「ビンビンです!」
流石サキュさん、色気が半端ない。
たわわで肉感たっぷりなボディが醸し出すメスのフェロモンが俺の男を刺激して止まない。
シャツの隙間から見せている派手なブラは童貞殺しです、揉ませてください。
意味もなく流し目してくるし、俺の下半身を見て舌なめずりしてくるし、これはもう前戯されてるってことですよね。
「和樹君のこと、本当はもっと早くに誘うつもりだったのよ」
「え!」
な、なんですって!?
「だって和樹君、と~っても美味しそうなんだもん。私、好きな物はすぐに食べちゃいたいタイプなの、うふふ」
しまった、今の録音しておけば良かった!
ASMR無限ループ間違いなしの台詞だったのに!
「それじゃあどうぞお食べ下さい! 今すぐ、ここで!」
「あらぁ廊下で? それも面白そうね」
「よし脱ぎます」
この時のために高速脱衣の練習をしてきたんだ。
ル〇ン三世並みのテクを見せてやる!
「待って待って」
「もう待てないです!」
「お願い、待ってってば」
「ふっでおっろし!ふっでおっろし!」
「もう、悪い子ね。こんなに拗らせちゃって、可愛い」
サキュさんの両手が俺に向かって伸び…………何かに気付いたかのように止まった。
「本当は焦らしたお詫びに沢山遊んであげたいんだけど」
「ドキドキ、ドキドキ」
「和樹君は、ちょっと、ダメかな」
「なんでええええええええええええええええ!?」
酷い、酷すぎるよ。
男心をこんなにも弄んでおいて拒絶するなんて、あんまりだ。
「ひっぐ……ひっぐ……なんでぇ……俺が……ナニをじだっでいうんでずがぁ」
「ガチ泣きされると流石の私も少しひくわね」
「だっでええええ!」
ただセックスしてもらえないだけなら仕方ない。
でも、学校中のほとんどの男子がしてもらえているのに、俺だけハブられているっていうのが辛いんだ。
男のプライドがズタズタなんだよぅ!
「分かった、理由を教えてあげる」
「何でもします!悪いところがあれば治します!」
「和樹君、彼女いるでしょ」
「神は死んだ」
そんなことだろうと思ってたよチクショウ!
やっぱりあいつのせいだった!
「でもサキュさんは彼女持ちとか気にしないじゃないですか!」
「そうね、寝取るの大好きだから。罪悪感に苛まれながらも肉欲に負けちゃうオトコノコとか、超可愛い」
周囲の女性陣に殺意を篭めた目で睨まれているのに平然としているサキュさん格好良い!
濡れちゃうね!
「でも和樹君の彼女は……ねぇ」
「そこは気にしないで下さいよ!」
「私、気持ち良い事が好きなだけで命は大事だから」
「な、なな、何を言ってるんですか。別にあいつは『ブーブー』」
「スマホ震えたわよ」
「…………後で見るから良いんです。今はそんな話じゃなくて」
「スマホ見た方が良いんじゃないかしら」
「…………」
「お姉さんからの忠告よ。絶対に見た方が良いわ」
息が、苦しい。
寒気が、する。
全身の、震えが、止まらない。
嫌だ、見たくない。
見たくない。
見たくない。
見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない。
でも見ないと死ぬ!
『教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育』
ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!
「ということで、じゃあね」
待って、行かないで!
それにどうしてその『じゃあね』を僕の目を見て言わないんですか。
何で俺の後ろの方を見て言うんですか!
このまま走って何処かに消えてしまいたい。
でも足が地面に縫い付けられたように動かない。
いや、違う。
俺の意思とは無関係に足が勝手に動く。
後ろを振り返ってしまう。
そうしなければ命に関わると体が勝手に反応しているぅ!
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
想像していた通り、俺の彼女、心矢 美杉が満面の笑みを浮かべて立っていた。
少し小柄で可愛らしいアニメ声な美杉ちゃんは自他ともに認める美少女だ。
美杉ちゃんが彼女だと知ると誰もが羨んでくる。
だが美杉ちゃんは俺にとって悪魔のような女だった。
「大変申し訳御座いません。厳しく改善推進致します」
「だ~め」
ですよねー
「他に何か言いたいことは?」
おかしいな、いつも通り可愛らしい声で話しかけてくれているだけなのに、冷や汗が止まらない。
脳内でレッドアラートが鳴りまくってる。
だが今日の俺はいつもとは違う。
致命的な場面を見られたんだ、もう何を言っても取り返しがつかない。
だったら開き直って俺の気持ちをぶちまけてやる!
「だって美杉ちゃん、セックスさせてくれないじゃないか!」
さいってー、なんて女子の声が聞こえるが、お前らは何も分かってない!
「ずっと美杉ちゃんのために尽くして来たじゃないか。美杉ちゃん以外の女性には話もしないし近づかなかったし目線もやらなかった! 美杉ちゃんの『お願い』は全部叶えて来た! それなのに! それなのにぃいいいい!」
これまでのことを思い出すと涙が止まらない。
「露骨に誘惑して来るくせに、手を握るのに一年、キスするのに三年、しかも触れるような軽いのが一回だけ! もう耐えられないよおおおおおおおお!」
先に進もうとどれだけ努力しても、許可するそぶりを見せながら躱して来るからマジで質が悪い。
「えへへ、悲鳴たすかる」
「赤スパじゃなくてセックスください!」
「人生BANされたいの?」
「ぴえん」
やっぱりヤらせてくれるつもりなんて無いんだ!
絶望した!
俺は膝から崩れ落ちるように床に両手をつけて頭を垂れた。
美杉ちゃんにやってもらいたい後背位なのに何で俺がやってるんだ!
「美杉ちゃん……セックスが……したいです……」
周囲の男共がセックスの話題してるのに俺だけ入れないのは地獄ッス!
「も、もう、こんなところで恥ずかしいよぅ」
今更純情ぶるな!
二人っきりの時は放送禁止用語連発するくせに!
「でもそこまで和樹が望むなら……」
な、なん……だと……!?
ついに美杉ちゃんを抱ける日が
「検討に検討を重ねます」
「チクショオオオオオオオオ!」
それ何もやらないやつ!
「それじゃあ意味無いんだよ!」
「もう、我儘だなぁ」
「だって、だって……」
「じゃあ検討を加速します」
「だからそれ何もやらない奴だって言ってんだろ!」
増税するならセックスさせろ!
もうダメ、無理、全てを終わらせよう。
「美杉ちゃん、俺達別れ」
「そうそう和樹、私配信やろうかなって思ってるの?」
「は?」
「和樹の素敵なところをもっとみんなに知って欲しくて」
「…………」
「ああ、でも私ってドジだから間違えて和樹の本名言っちゃうかも。それに、無理矢理迫られたって泣きながら大袈裟に表現しちゃうかもしれないけど、ごめんね」
「配信する暇あるならデートしようぜ!」
「えへへ、和樹がそう言うなら」
うわああああああああん!
「さ、和樹、いつまでも座ってないで立って」
「ひっぐ……ひっぐ……」
「はぁはぁ、無様な和樹、可愛い」
誰か助けて!
「和樹、沢山叫んで喉乾いてるでしょ、ほら、これ飲んで」
「ひっぐ……ひっぐ……ありが……………………これ何が入ってる?」
「ただの水だよ?」
「何が入ってる?」
「チッ」
あっぶねええええ!
以前盛られた経験が無ければ気付かなかったわ。
以前何を盛られたのかって?
デートの日の朝に精力剤盛られましたが何か。
夏だったので超薄着でブラチラさせながらいつも以上に誘惑して来たけど指一本触れさせてくれませんでしたが何か怒怒怒怒怒怒怒。
「でも飲んで」
「え?」
いやいや、盛られていると分かっているのに飲めるわけが無いだろう!
「私以外の女と話したよね」
「…………」
「しかも何をお願いしてたのかな。かな?」
「…………ユルシテ」
「飲みなさい」
「ひぇ」
地声めっちゃ可愛いのにどうやってそんなにドスの聞いた声出してるの?
「せめて何が入っているのかだけでも教えてよ」
「知らない方が幸せなことってあるんだよ」
「どうせ怖がらせて楽しむつもりだろ!」
「なぁんだ、気付いてたんだ。じゃあ教えてあげる」
美杉ちゃんはポケットから小さなビンを取り出した。
そのパッケージに書かれた製品名は……と。
『除精王』
聞いたこと無いけど、名前的に多分ソレ勃たなくなるやつぅ!
「見苦しい害路樹は枯らさないとね」
「や……やめ……」
「大丈夫、デートの時はいつもより強力なアレを飲ませてあげるから」
「でもヤらせてくれないんでしょ?」
「えへへ」
このままじゃ俺の男が終わってしまう。
柏木助けろよ、親友だろ!?
あ、あいつサキュさん来た時に気恥ずかしくて逃げたんだった。
は~つっかえ、これだから早漏は。
「さ、和樹、それ飲んで、いっぱいハナシアイ、しようね」
「い、いや、来ないで」
「絶望する和樹、可愛い」
いやああああ、助けてええええ!
俺のセックスがああああ!
ハッピーエンド!