10年以上前の話
初投稿作品です。
ある時仕事で遠出して夜中に帰る際に、ナビを使って山道を帰っていた。
当時開通したばかりの山道で快適な上に、山を今まで迂回していた為1時間以上掛かっていた所が、渋滞も無く突っ切れるので25~30分で帰れるということで、俺の中で凄く待ち望んでいた大望の道路だった。
だが、その日の夜中に工事が入っていて、俺はすぐに帰りたいので脇の林道から本線に合流する所をナビで見ていると迂回路を見つけた。
数回左右するが、それでも工事中の所よりも早いだろうし、実際俺の家にはそっちの方が若干遠目にはなるが、道順的には早く抜けられる田舎道に出られるルートのようだった。
ところが行った事も無い林道だったのでこんな所あったんだなあと思って進んでいくと、ナビがこの先左と示す。
そして、そこを指示通りに曲がったのだが、進むにつれて明らかにどんどん道が細くなっていく。
ほどなくして立看板があり、作業者道路とか書かれていて、ここから先は進めるのか?と不安になる。
それでもナビが、その先右だと指示を出すのでその通りに進んでいく。
その後も表示によると、何度か左右に曲がっていくのだが、俺はどんどん山奥に入ってしまっていたようだった。
そしてある部分から舗装路ではなくなっているのに、この先直進ですとずっとナビが示す。
そこで、小便が我慢できなくなってしまい、もうどうしようもなくなってギリギリまで我慢したが、まあ山道だし良いだろうと思いそこで降りて立小便をする事に。
田舎なので畑か何かの道なんか、舗装路じゃ無い所から繋がって大通りに出るような道はいくらでもあるので、この道もそうだろうなと思いつつ気持ち良く立ち小便していたら、背後でナビがポーンと鳴る。
「この先直進です」
その音に特別どう思うでもなく立小便を続けていると、間隔をを空けずにまたポーンと鳴る。
「この先直進です」
数秒おきに直進ですと繰り返すナビ。
俺は、丁度それを知らせる位置で車が止まっているから連続して鳴ってるだけだと思い、俺は小便も良い感じで終わりかけてきた時だった。
ポーンと鳴るナビの音。
「この先直進です」
というナビにザザザとノイズが入るので、ああ安物だからなあと思っていたら、またポーンと音が鳴る。
「この先直進です」
と鳴った後、さっきまで数秒ごとに鳴っていたナビが黙った。
俺はそれを意に介す事も無く、構わず立小便を終えて股間のチャックを上げた瞬間、またポーンと鳴った。
「この先直進です」
と言うナビの声の後に男の低い声で微かに
「死ね」
と聞こえて、あれ聞きまちがいか?と思って恐る恐る振り返ろうと思ったら、ナビがポーンと鳴る。
「お前も死ね」
そう聞こえたかと思ったら車が勝手に動き出して、そのまま5mほど動き出してしまう。
「おいおい!まずいまずい!」
と思わず叫んでしまい、すぐに止めようとしたのだがそのまま車は進んで程なくして、真っ逆さまに斜面を落ちてしまって、そこからズドンと物凄い音と共に車の潰れるグシャっという音が聞こえた。
何が何だか分からない俺は、携帯電話のライトを頼りに周りを見渡すと、どうやら既に立ち小便に降りたところで道はほぼ途切れていて、そこから先は崖だったのだが、立ち小便しようとして降りた時に小便する事だけを考えていて、その場所がその直前で道が無くなっている事に全く気が付かなかった。
俺は一瞬で恐怖心に駆られ、全速力で走って道を戻って必死に110通報し、未舗装路から舗装路まで出た。
その後、サイレンを鳴らしたパトカーが来て、俺は車が落ちた事を話すと
「また?」
と警官が言う。
「またって何?」
と聞くと、5日前にもここで車落ちて人が死んでると警官が言うので、そう言えばローカルニュースでやってたのを思い出した。
「それってここなの!?」
と俺は驚愕して思わず叫んでしまった。
さらにぶっ飛んだのが、俺は警官になぜここに来たのかと問われナビに従ったと言うと
「ここはナビに登録されるような道は無いですが?」
と警官が言う。
「だってナビがこっちだって言うから!」
と思わず俺は反射的に叫んでしまうと、警察と一緒に来た俺の車を引き揚げてナビを回収して調べている業者は、ナビに電源を接続して確認してみると、舗装路の部分から俺が動いてないナビの表示のまま切れていたようだと言う。
「そんな訳無い!途中まで来て立小便してその時ナビが・・・・・・」
と言うと俺は途中でぞっとして
「だってナビが途中で声が男の声に変わってお前も死ねって・・・・・・」
そう一連の出来事を全部警察に話すと
「馬鹿な事を言わないで下さい」
と怒られた。
「どう言う事かちゃんと説明してくれ!」
と言うと、警官は口を開こうとしないが、俺はそれでも警官にしつこく食い下がると
「ココは2週間ほど前に男が首を吊った遺体の発見現場だった」
と警官が渋々という感じで言う。
しかもそこからまだ2週間しか経ってないのに、車が2台落ちていてその内一台は俺、しかも仕事用の軽自動車で、車を止めた際にはサイドブレーキも引いてあって、MT車なのでギアはニュートラルにしてあったから急な坂でもないのに動く訳無いと俺は警官に言うのだが、落ちた際に2速に入っていたと警官は言う。
俺は瞬時に警官に対して
「それはおかしい!だってこの車は古い車で、2速が入りにくくてそれでも運転に支障が無いから2速は使わずにいたらギアが堅くなって、入り難くなっているから俺は使わないんだ!」
と言うと、なら落ちた時に偶然入ったんだろうと言う警官。
確かにそうなのだが、古い軽自動車だったので1速に入れる際にもそのままだと入らず、3速か4速に一回、調子が悪い時は2回ぐらい入れてからじゃ無いとスムーズに入らないポンコツ車だった。
それを警官に説明しても、結果的に助かったから良いだろと言われて凄く俺はイラっとした。
因みに、2週間ほど前の首吊り自殺した男の遺体は、俺が立小便していた部分の真上の木の枝に縄を縛ってぶら下がっていたらしい。