第三話 天国
サマンサが死んでいるという情報にルナールとケビンが衝撃を受ける。
「なんだよそれ!冗談でも許さねぇぞ!」
ケビンは怒りをグレンにぶつけた。
「そうですよ!まだ死んだわけじゃないのになぜグレンさん!あなたはここまで冷酷非情なのですか!?」
ルナールもケビンと同じくサマンサが死んだことを受け入れたくなかった。
「私が言ったのはあくまで自論、いいか小僧ども・・・世の中そんなに甘くはない。たとえどんなに駄々を捏ねていても現実が非情であるのに変わりはない。」
グレンは察したかのようにサマンサが死んだ可能性を話した。だがまだ幼い二人がたとえ冗談でも受け入れられるような状況ではなかったのだ。
「いくらなんでもケビンくんはこのフランスのことをまだ知らなかったとか移民だったから急激な環境の変化に対応できていなかったに違いありません!グレンさん、あなたは・・・!」
ルナールが感情のままにグレンを罵倒しつつもケビンは元々の元凶だった故に自分の情けなさを責めた。
「よく考えてみたら・・・全部俺のせいかもしれない。俺が姉貴と些細なことで大喧嘩したからルナール、お前を巻き込むほどの大事になってしまった責任は俺がある。本当に申し訳ない。」
ケビンはルナールに謝罪した。
「ケビンくんは悪くありません・・・元々ケビンくんが住んでいた所が劣悪で済むにも耐えきれなかったのかもしれません。」
「いや、俺たちの住んでいる所は裕福だが姉貴が・・・これ以上はお前を巻き込んでしまうから言えない。本当に俺のせいだ・・・」
頭を下げるケビンにルナールは動揺を隠せなかった。
「私はこのままどうなってしまうの・・・?もしかしたらとんでもない事に巻き込まれてしまうのかもしれない。」
ルナールは疲れたのかよろよろになっていた。
「おいお前ら・・・今日は体を休めるとしてここの安いホテルで一泊しよう。」
ルナールもケビンも承諾してホテルに泊まった。そこはあんまり豪華ではないもののごく普通のホテルだった。男女に分かれて部屋に入りシャワーを浴びてた。
「グレンさんは一応考えてみたら正しいかもしれない・・・ケビンは自らの責任を大きく背負っている。私なんかが入っていい状況じゃないし、私も辛い思いをたくさんしたけれどもグレンさんやケビンみたいに命の危機が迫る程の苦しい思いを私は経験していないから感情的になってつい辛く当たってしまった。私は2人の邪魔をしているのかもしれない・・・グスッ!」
ルナールは泣きながらしゃがみ込んだ。
そしてケビンとルナールが就眠しグレン一人だけ月を眺めているとサマンサとの出会いを思い浮かべる。
「私は人助けが大好きな奴ではない・・・お前は優しすぎるんだよサマンサ。」
「なんでなの!なんで私たちがこんな目にあって弟と喧嘩別れしただけでこんな残酷な運命に苛まれなければいけないの!?あなただけは救いだったのに!お願い・・・私たちを助けて・・・!」
サマンサの悲痛な訴えを思い浮かびそしてグレンは目を瞑り
「サマンサ・・・たった今お前の弟を見つけ出した。お前がどこにいようと必ずお前の弟を送り届けてやるさ。だから安心しろ。」
そしてグレンも眠りにつけ朝が来た。 続く