第十一話 ~はじめてのダンジョン!お宝大冒険スペシャル!!~
「ふ~ 楽しかった!マジで久しぶりに思いっきり戦えたぜ!」
前回のあらすじ:魔王、逆切れしたキティにぶっ飛ばされる
「ああ..」
俺マジで何もしてねー!!全部キティ(ヴァンタ)に完全キャリーされたよ!おい!
俺勇者だよね?俺”が”勇者だよね?俺の存在意義が…BUT!(でも!)そんな事は些細な事さ!
魔王を倒したってことは~?そう!
「お宝FEVERタイムだぜ!!YAY! 」
「イェーイ!」
「いぇ~い」
俺が片手を振り上げると続けて二人も乗ってくれた、ちょっと嬉しいぜ!
「さてさて、それじゃあお宝探しと行きますか」
とはいえ、キティが思いっきりぶっ飛ばしたから城の殆どが消し炭なんだよなぁ~
まぁ、俺何もやってないから文句言えないんだけどね!
「よし!じゃあ俺はこの城の中央を調べるからキティは右側、ヴァンタは左側にお宝が無いか調べてくれ!」
「らーじゃ!」
「嫌だ。」
「よし!!!宝探し開始!!!!」
俺は手を上にあげて大声で宝探し開始の宣言をした。
~魔王城中央付近1F~
ごねるヴァンタを放置して、俺はお城の1階を捜索中だ。
「うーん、やっぱほとんど消し飛んじゃってるなぁ…」
キティとヴァンタが大暴れしたおかげでモンスター1匹見当たらない。
そのかわり殆どの部屋が消し飛んでて、
わざわざ調べるまでもなく宝の一つも無いだろう。
「お?ここは無事みたいだな」
1Fの奥に運よく生き残ってる部屋発見!
頼む!何でもいいからお金になりそうなやつ、COME ON!
ガチャ
ギィイー…
「おぉ!?」
扉を開けて中に入るとそこはすっごく豪華な部屋だった。
黄金のシャンデリアに黄金のベッド。
壁にはデカデカと魔王の肖像画が飾ってある。
兎にも角にも目が痛くなるくらい部屋中金ぴかだった。
「そうそうこういうの!こういうのが魔王の部屋だよ!」
やっぱりキティのテント(炎極魔王殿)がおかしいだけだったじゃん!
あーよかった、全部が全部キティみたいだったらどうしようかとヒヤヒヤしたぜ…!
「でも流石にベッドとかシャンデリアはデカすぎるし、持っていけないよなぁ…」
もっとコンパクトでポケットに入りそうな奴が良いな。
具体的に言うとダイアモンドみたいな宝石とか。
それから俺は部屋の隅々までお宝を探した。
ガサガサッ
「Wow!黄金のパンツ!…流石にこれは売れないか…ん?」
なんとなく箪笥の裏側を覗いてみると小さくて赤い石が壁に引っ付いてた。
「何だこれ?ルビー?めちゃくちゃキラキラしてるし、これ高く売れるかも」
俺は赤い石を壁から剥がそうと手を伸ばした。
ポチッ
「ぽちっ?」
なんだ今の音?
まるで風船が割れるような、
少しPOPな感じの可愛い音だった。
パカッ
「ん?」
唐突な喪失感を感じて床に目をやると、
そこにあるはずの床が無かった。
床が無かった。
No More 床。
あーなるほどね!この赤い石は何かのスイッチだったわけか~!
きっとこれを押すと床が消えて下の隠し部屋に行けるようになるんだな!
階段がないけど魔王は普通に飛べばいいもんね!納得だわ!WOW!
ヒュー
「ぎゃあああああああああああああああああああぁぁぁ…」
俺は何メートルあるかもわからない、
真っ黒な暗い底に落ちていった。
…………………
…………
……
…
.
どれだけの時間落下していたんだろうか。
気が付くと俺は地面に頭から突き刺さっていた。
「いってぇ…!何で俺はいつも頭から落下するんだよ!!」
俺はズボッと地面から頭を引っこ抜いて周囲を見渡す。
真っ暗な空間を松明の火がモワッと照らしていて、
よーく目を凝らして見て見ると牢屋っぽい部屋がたくさんあった。
正直ちょっと怖い。
俺マジでホラーとか苦手なんだよね!!
お化け屋敷でさえおしっこ漏らすレベル!SCARY!(怖い!)
シーン…
……
…
「と、とりあえず松明を取ろう」
俺はとにかく明かりが欲しくて壁にある松明を手に取った。
お?なんかこれ……インディージョーンズっぽくね?
「試しに腰にある剣を抜いて構えてみよう…おぉ!なんかかっこいいぞ!!!」
気分はすっかりインディージョーンズ。
これだ!このテンションならイケる!!
「よし!行こう!奥に進めば出口があるだろうし、もしかしたらSUPERなお宝だってあるかもしれないからな!頑張るぞー!おー!」
「うん!頑張ろうねダーリン~♡」
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
HOLY F○CKING SHIT!!!!!!!!!!!
ビックリした!!!!マジで死ぬかと思ったよ!!!!ヴァンタが後ろに居た...のかよ!!
「いつから居たんだよ!居るなら言えよ!!!」
「今来たばかりだよダーリン~」
「どうやって?!落ちた時、確か1人だったよね!?」
「これ、ダーリンが買ってくれたお揃いのネックレス♡」
「あー、そっか!それがあったらいつでもテレポートできるんだっけ?」
「そうだよ~♡」
それにしたって起動音というか何というか合図とかないのか?心臓に悪いよ!!
ま…まぁ正直ちょびっと?本当にちょっぴりだけどLittle Little Smallぐらい怖かったし…
まぁ別に?俺一人でも余裕だったけど...ね?
俺はヴァンタの背中にしがみつきながら暗闇の中を進んでいった。
テクテクテクテク
「あっ」
「うわぁ!?急に大声だすなよ!!何だよ!」
前を歩いていたヴァンタが急に立ち止まったかと思ったら、
おもむろに暗闇を指さして声を上げた。
「見てダーリン、あそこに人間がいるよ」
「え!?マジで!?どこどこどこ…」
ヴァンタが指を指した方向を見て見ると牢屋の中に
ボロボロの服を来たおさげの女の子がポツンと座っていた。
本当に女の子がいる…。あっ目が合っちゃった。
「?…っ、あの、すいません!助けて下さい!!」
可愛い女の子が牢屋から必死に助けを求めてる。
可愛い女の子のピンチだ。これはすぐに助けなければ…!
「ちょっとまって、ダーリン」
「なんだよ!すぐに助けてあげないと…」
「よく考えて、こんな地下に人間がいるとかおかしくない?」
「たし…かに?いやでも捕まってるだけじゃない?」
俺は手を顎に付けて考えた。
「それなら地下じゃなくて城の中でいいじゃん。
きっとこれは私達をハメる為の罠だよ、ダーリン」
「そっか…言われてみると確かに…?」
ヴァンタのいう通りわざわざ女の子一人
地下に監禁するのはおかしいかもしれない。
とはいえ本当にただの捕まってる女の子だったらどうする?
早く助けてあげないと…
う~ん……
……
…
とりあえず石でも投げとこ。
シュッ!
ヒューン
ポカッ
俺がNICE THROW(ナイス投げ)した石が女の子の頭に丁度命中した。
「ぎゃ!?っ痛ってーなー!!何石投げてんだよこの野郎!!!」
「ほらみろヴァンタ、やっぱり人間じゃないか」
「擬態してるだけかもよ?」
「そっかぁ…じゃあ、置いて行こうかぁ~」
俺たちは女の子がいる牢屋の横をSMOOTH(滑らか)に通って行った。
「ちょっと!?石投げといてスルーとか正気!?おい無視すんな!?この人でなし―!!」
チラッ
ガチャ
ギィ~
流石に置いていくのは可哀そうだったから、
俺は剣で鍵を無理矢理こじ開けて女の子を外に出してあげる事にした。
「牢屋から出して頂きありがとうございます…」
「いやいや、美少女を助けるのは勇者の勤めですかr…」
「…なーんて言うと思ったか!」
「え!?」
バサッ
バサッ
ブワァ!
突然女の子がそう叫ぶと女の子の背中から蝙蝠っぽい二つの黒い翼が生えてきた。
「えぇえええぇ!?やっぱ人間じゃなかったの!?」
「そうさ、私は蝙蝠女。くっくっく。さっきはよくも
石をぶつけてくれたなぁ…正直めちゃくちゃ痛かったぞ…?」
蝙蝠女は頭のタンコブを擦りながらそう言った。
よく見ると若干涙目だし、本当に痛かったんだろうな。
「人の頭をタンコブだらけにしてくれたお礼だ!
お前の血を一滴残らず吸いつくしてやる!がぶぅ!」
「うわぁ!?やめろぉ!俺は注射が苦手なんだぁ!!」
そうして蝙蝠女は俺に飛びついてきた。
ジュウゥゥゥゥ…
「ぎゃああぁぁ!?あたしの歯がぁ!?おまえぇ!あたしに一体何をしたぁ!?」
俺の首筋に噛みついた蝙蝠女の口から光の粒子?
みたいなさらさらした煙が出てる。
「いや知らない知らない!俺も何で?だよ。ヴァンタ何で?」
「ダーリンは勇者様だから、アンデッドなんて触れただけで浄化されちゃうんだよ~」
「マジで!?俺の身体ってそんな特殊能力あったの!?」
何だよ!それだったらいちいちビビる必要なかったじゃん!
いやまぁ一ミリもびびってないんだけどさ!
「くっくっく…なるほど、そんな能力があったなんてとんだ誤算だったわ、くっくっく…」
歯を浄化されて地面をのた打ち回っていた蝙蝠女が、
いつの間に冷静になったのか、膝を突いた状態で俺達をじっと見つめていた。
歯を灰にされたっていうのにこの余裕…こいつ、デキる…!
「降参です。お宝まで案内するので殺さないでください」
「「え?」」
さっきまでの余裕が嘘のように消えて蝙蝠女はあっさりと頭を下げた。
思わず俺もヴァンタも呆気に取られてしまった。
日本人の俺から見ても一部の隙も無い完璧なDOGEZAだった。
………………………………
……………………
…………
「いやー、まさか既に勇者様の手によって魔王様が
討伐されていたなんて思いもしませんでしたよー。
あっ、そこ道が荒れて滑りやすくなってますんで、
足元にご注意して下さいねー。」
あれから約数十分。
俺とヴァンタは蝙蝠女に案内されてお宝?がある方向へ向かっている最中だ。
「おいおい、本当にお宝があるんだろうなー?
こちとら一日中歩きどおしで足はパンパン!
お腹はHUNGRY(空腹)なんだからな?
嘘だったらこのMY GOD HANDが火を吹くぜ?」
「も、もちろんですよー!それはもうなんというかもう、
すんごいお宝がありますから!
もうほんとちびんじゃねーぞ?って感じですよー」
俺のささやかな脅しにびびった蝙蝠女は、
焦った様子で手をあたふたと振りながらそう話した。
「うそくさーい…ねぇダーリン、燃やしちゃお?」
「流石にそれは可哀そうだろ。あー、でも…蝙蝠って食えるのかな?
あーあ、お腹すいたなー!嘘ついてたらどうしよっかなー?俺わっかんないなー?」
俺は蝙蝠女にジロりと視線を向けた。
「ひぃ!?本当です本当!お宝ちゃんとあります!
魔王がいないのに嘘付いても意味ないですって!
だから殺さないで、たべないでー!?」
涙目になりながらこっちをチラチラ見てくる蝙蝠女めっちゃ可愛い。
いやー、悪いとは思いながらも可愛いからついついイジっちゃうんだよなー。
やばい、俺ってもしかしてSなのかな?サディスティックバイオレンス!?
「あっ!ここ!この扉の向こうに魔王様のお宝があります!」
「おお!本当にあったんだ!ごめんな、正直ちょっと疑ってたよー」
「いえいえお気になさらず!私を見逃してくれたお礼ですから!」
なんだよ、この子めっちゃ良い子じゃん…。
石投げたり脅したり、色々とやりすぎだったよな
ごめんな蝙蝠美少女。
心の中で蝙蝠美少女に謝りつつ俺は宝の部屋の扉を開けた。
ギィー
シュン!シュン!シュン!シュンッ!!
ドスドスドスドスドスッ!!
「うげぇええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」
扉を開けた瞬間、奥の方から矢が飛んできた。
矢は全部俺にDIRCTヒットし、
身体中に矢が刺さった俺はまるでサボテンのようだった。
そしてヴァンタに当たった矢は逆に折れて地面に落ちた。
「ぎゃはははは!!ざま~みろ!!!
宝に何か案内するわけないだろ~~ん?バ~~~カ!」
さっきまでの不安そうな顔が嘘のように腹を抱えて大爆笑する蝙蝠女。
「いって~~な~!矢が飛んでくるとか聞いてないぞ!F○ck!」
「え…?」
ちくしょ~!
せっかく王様から貰った服が穴だらけになっちまったじゃねぇかーよ!
俺は身体中に刺さった矢を抜きながら、ストレスFULLMAXな顔で蝙蝠女を睨みつけた。
「あの~…何で死んでないんです...か?」
「いや、うん。俺勇者だし…」
「………え??????」
理解不能と言った感じに頭上に大量の?マークを浮かべて困惑する蝙蝠女。
良い感じに脳みそがSHORTしてるな、まぁ普通そうだよね。
何気にこんなにビックリされたの初めてかもしれない…
というかそんなことは良いんだよ!俺は蝙蝠女の肩を思いっきり掴んだ。
「てんめぇ~…よ~く~も~俺を騙しやがったな~?」
ジュゥウウウゥ
シュワワワワァ…
「ああああぁぁ!!??成仏!成仏しちゃう!?
やめて止めてごめんなさい!!
逝っちゃう!天国に逝っちゃう~~!?」
肩から煙を出しながら白目でぶるぶると震える蝙蝠女。
このまま続けると失禁しそうな勢いで怖かったから、
俺は蝙蝠女の肩を放した。
「ひぃ…ひぃ…!死ぬかと思った、というかちょっと死んでた気がする…
死んだおばあちゃんが見えたもん…100人くらい…」
ガクガクと膝を震わしながら涙目で独り言を呟く蝙蝠女。
「いいか?次はしっかり案内しろよ?次こんなことしたら、あれだ。
マジで次はこう…ガッってするからな!!」
そして俺はもっとこう、さっきよりグッっと強く肩を
握るように手をわきわきさせた。
「はいぃぃ!!わかりましたあぁぁ!!誠心誠意懇切丁寧に
きっちりと案内させて頂きますぅうぅ!!」
チョコチョコチョコチョコチョコ…
俺の脅しにビビリ散らかした蝙蝠女は俺から距離を取るように、
チョコチョコ歩きながら案内を再開した。
正直まだ不安だけど、まぁ、これだけ脅せば大丈夫だろう。うん。
テクテクテクテクテクテクテクテク…
「着きました!!ここです!!この部屋に宝がありますです!はい!!」
「え、はやっ!?もう着いたの?」
「はい!もう着きました!ここです!お入りください!」
「う、うん、入るよ…というかなんでそんなハイテンションなの?」
「え!?いや、も~…あれデスよ!さっき掴まれた肩が猛烈に
痛すぎて逆にハイになっちゃった?みたいな?的な?」
そんな事よりどうぞどうぞ中へ…と扉を開けて中に入るよう促す蝙蝠女。
俺は勢いに押されてそのまま中に入った。
ガラガラガラガラッ
ドッーーーーンッ
BOOOM!
「NOooooooooooOOOOOo!!??」
部屋の中央まで足を運んだ瞬間、
天井がまるでプレッサーのように落ちてきて
俺とヴァンタをぺちゃんこにした。
「やった、やったやったやったぁー!!流石にぺちゃんこにされたら
勇者もクソもないだろー!?やーいやーいばーかばーか!くそぼけまぬけー!
あたしの肩を浄化してくれやがった罰だ!そのまま一生地面とキスしてなー!べー!」
ピシャ
「へ…?」
ドドドドドッ…
パッカーンッ
ガラガラガラガラッ
落ちてきた天井にヒビが入り音を立てて真っ二つに割れる。
そこに無傷の俺(潰されて復活した)と逆に天井を破壊して、
当たり前のように無傷のヴァンタが棒立ちしていた。
「ええええええ!?!何でだよ!?流石に死ねよそこはさぁ~!!??」
「…………」
クルッ
スタタタタタタッ
俺は無言で振り返り入口で騒いでいる
蝙蝠バカ女の所へ歩いて行った。
ガシッ
そして俺はさっきとは比べ物にならないくらい強く肩を掴んだ。
ジュイィィィィィンンッ
「ぎゃああぁぁぁ!!??しぬぅうううぅしんじゃうぅうぅ!!もうこれ浄化とかいう
レベルじゃないよぉ!溶けてるぅ!!私の肩溶けちゃってますよぉおぉお!!??」
「もういいうるさいだまれ早く天国へ行きなさい」
シュイィィィィン
「あががががっ!?ま、待って!!もう一回!もう一回だけチャンスをくださいぃぃいぃ!
いやだぁ!!独身で逝きたくなぃいい!!まだ死にたくないんですぅう!!」
全身ぶるぶると痙攣しながら白目で涙を流しながら泡を吹く姿が
正直可哀そうを通り越して怖かったので俺は蝙蝠女の肩を放した。
「うげぇええ!おげぇえぇ!気管に、気管にツバが入っちゃった…おえぇ!!」
「はぁはぁ…あのな、お前な?これが最後のチャンスだからな?
次はほんっと~に消しちゃうからな?DO YOU UNDERSTAND? 」
「わがりまぢだ!!次こそはっ!おえぇ!必ずっ!
必ずお宝部屋にご案内しますぅうぅぅ!!」
それから俺達は再びお宝のある部屋へ向かった。
~数十分後~
「ここが魔王様のお宝がある部屋です…」
あれから数十分歩き続け、俺達はお宝部屋へとたどり着いた…が。
先程の罠があった部屋と比べて明らかにボロボロだった。
例えるなら使い古された馬小屋といった感じだった。
「おまえマジで死にたいらしいな…(ポキポッキン」
「いやいやいやっ!?ほんとほんとっ!本当にこの部屋がお宝部屋なんですって!!」
「どうみても馬小屋じゃねぇか!おちょくってる?ねぇ俺のことバカにしてるよね?
よし消す。もう消す。GO TO HEAVEN」
「違いますぅう!!信じてくださぃい!!えっと、えっと…あっ!!ほらあそこ!!
あの覗き穴を魔王様はいつも覗いていました!きっとあそこにお宝があるんですよ!」
蝙蝠クソ女が指をさした方向を見て見ると、
確かに壁に小さな穴が空いていて、そこから光が差し込んでいる。
「ダーリンまた罠じゃないの?」
「確かに………罠じゃないだろうな?」
「罠じゃないッ!!ですッ!!誓ってッッ!」
物凄い勢いで首を横に振り否定する蝙蝠女。
うーむ、この様子だと嘘じゃなさそうだな…。
だけど念には念を入れて…
「よし、蝙蝠女。俺と一緒に来い、もし罠だったらお前も道連れだからな」
「えっ?普通に嫌ですけど?」
「スッ…(無言で両手を肩に近づける)」
「喜んでご一緒させていただきますっ!!」
そして俺は震える蝙蝠女と一緒に部屋に入り穴をのぞき込んだ。
「ん…?ここは…?」
見渡す限り木製のロッカーがたくさん。
床には茣蓙が敷いてあって所々湿って色が変わっている。
向かいの扉からは僅かに湯気が漏れていてそのせいか部屋全体がどことなく温かい。
なんだろう、老舗の温泉旅館のロッカー更衣室って感じ?
それで俺が覗いているのは更衣室の壁に空いた穴で、
そこから俺は中を覗いてる状態…ってことかな。
「というか、え?何で更衣室?…あっ!」
ガラガラガラッ
更衣室の扉が開いて中に誰か入ってきた。
遠くてよく分らなかったがシルエット的に髪の長い女性に見えた。
え?もしかしてここって……女性更衣室!?
テクテクテクテク
ガチャッ
バサ…
「おぉ……おぉおおおぉ…!!」
彼女は木製のロッカーに近づくと扉を開けてゆっくりと服を脱ぎ始めた。
入り込んでる湯気のせいでハッキリとは見えないが、
それでも十分すぎるくらい凹凸のハッキリしたシルエット。
つまり…WOW!! SEXY DYNAMITE BODY!!
顔は良く見えなかったけど恐らくはかなりの美少女の筈だ。間違いない!
俺のBEAUTIFUL LADY SENSOR(美少女感知センサー)がビンビンに反応しているぜ!
「あの~、どうですか?ご満足いただけましたか?」
「うむ、うむうむ…ふぅ、そうだな。これは今までで一番のお宝かもしれないな…ごくりっ」
俺はあふれ出る鼻血を垂れ流しまま蝙蝠”女神”を褒めて差し上げた。
女神はパァっと嬉しそうに笑顔になった。
「本当ですかぁ!!じゃ、じゃあ私許される!?許されちゃいますぅ!?」
「こら、静かにしたまえ蝙蝠女神よ。お宝がにげてしまうではないか…!」
「は、はいぃすみませ……ひぃ!?ゆ、勇者様っ!?」
「はぁ~…お前さぁ、静かにしろって聞こえなかった……あっ」
さっきから一言も話さなかったから忘れてた、あぁ、俺は何て愚かなのだろう。
後ろを振り向くとそこにはいつか見た巨大な元気玉…もとい炎の塊。
それを明らかに不機嫌ですよといった表情のヴァンタが、
今まさに俺に向かってそれをぶっぱなした瞬間であった。
BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOMMMMMMMMMMMMMMMMBOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOMMMMMMMMMMMMMMMM!!
「「あ”ぁ”ぁ”あ”あ”あ”ああ”あ”あぁぁぁああ!!!!????」」
俺と蝙蝠女は火の玉に飲まれながら更衣室の壁を突き破り、中に吹き飛んだ。
ドカァアアアアアン!!
「きゃああああああぁぁ!!??」
ドサッ
シュゥウウウゥゥゥウウゥ…
吹き飛んだ俺と蝙蝠女は更衣室美女(仮)の目の前に
ゴロゴロと転がってぐったりした。
「あ、あの…大丈夫ですk」
ドタタタタタッ
ガラッ
「「大丈夫ですか!?市長様!?」」
美少女の叫び声が聞こえたのか部屋の中に5人程の兵士が入ってきて、
更衣室美女を護るように取り囲んだ。
「何故壁が壊れている!?というか焦げ臭!?」
「おい、そこの二人!何者だきさまらぁ!名を名のれぇ!!」
「さては魔王の手の者かぁ…!?」
駆けつけた兵士たちが部屋の惨状から俺達を犯人と疑い始めた。
やべぇやべぇ!やばいやばい!この展開見たことあるぞ!デジャブだ!
俺が変態扱いされて処刑されそうになったあの時とそっくりだ!
いやだ!!もう全裸生活なんてしたくない!!早く何とかしないと…!!
でも、一体どうすれば………
………………
………
…
あっ、そうだ。
「兵士たちよ!もう大丈夫だ!この【勇者アーサー】が!
魔王の幹部!【蝙蝠女】を見事捕まえたぞ!!!」
「「な、なんだってぇええええええええええ!!??」」
目を見開いて驚く兵士達と更衣室美女。
「ええぇぇぇ!!??ててててて、てめぇー!!何言ってんだぁああ!!??」
信じられないような目で俺に向かってキレ叫ぶ蝙蝠女。
悪いな蝙蝠女、俺はもう全裸の変態扱いは絶対に嫌なんだ…!
「さぁ兵士達よ!弱っているとはいえ魔王の幹部、
力が戻る前に牢にでも入れておくのだ!」
「えーと……はい、わかりました…?」
俺の突然の命令に困惑しながらも、
兵士達はそのまま蝙蝠女を縄で縛りあげた。
「や、やめろぉ!!バカかお前らぁ!?
確かにあたしは幹部だけど!それは合ってるけどぉ!
覗いてたのてめぇじゃねぇか勇者ぁ!!
くっそぉーこのぼけーかすー!」
「HAHAHAHA!好きなだけ叫びたまえ!
これは散々俺達を殺そうとした罰だ!
大人しく変態扱いされるがいいぜぇ!!」
「ちくしょー!覚えてろよぉぉおおおー……」
蝙蝠女はそのまま兵士達にずるずると引きずられていった。
あばよ、蝙蝠少女。お前との旅、悪くなかったぜ…?GOOD-BY FOREVER…(キラン
~村長の家~
俺達は幹部を捕らえたお礼をもらう事になり
村長の家へと向かった。
「よぉ、また会ったなくそやろう…」
蝙蝠女が檻の中に閉じ込められていた。
「あの、何で蝙蝠女がここに…?」
「すみません。人を入れて置けるような場所が無くて
仕方なくウチの檻に入ってもらいました。」
いやまてよ、なんで村長の家に檻があるんだ?
よく見ると蝋燭とか鞭が置いてある…、
うん、見なかった事にしよう!
「おい無視すんじゃねーぞ!人をこんなとこに閉じ込めやがって、
てめぇがその女の裸に見とれてたせいでこんな酷い目に…ひっ!?」
余計な事を言うと浄化させるぞといった感じに手を見せて脅す。
「あいつの発言は全て嘘です。信じないでください」
「えっ、あっ、はい」
俺は円らで清らかな瞳で村長の目を見つめながら忠告した。
村長はおれの急な変わりように少し引いていた。Cry(悲しい)
「こほん、では改めまして。私の名前はシノ、この村の村長を勤めております。」
深々と頭を下げる更衣室美少女、改めシノさん。
というか村長だったのか、見た感じ俺と同い年か年下にしか見えないけどなぁ。
「先程は助けて頂きありがとうございました。お礼と言ってはなんですが食事と
少量の金一封を用意いたしました。お受け取り下さい。」
シノさんはそう言うと食事の入った皿を乗せたお盆と、
お金の入った小さな袋を俺の目の前に置いてくれた。
俺は今!SUPER!AMAZING!に感動している!!
こんなにまともに感謝されたのは始めてかもしれない…!
そうかわかったぞ!この人が俺の運命のハニーだったんだな!
「What’s?え?女神ですか?結婚しましょう」
「は?(ドカッ バキッ ドゴォ!」
「いたいいたいたいっ!?IT’S JOKE JOKE!!」
思いっきりヴァンタに横腹を殴られた。痛い。
ちくしょー、こいついつもいつも俺の邪魔しやがって…まぁわかってたけどね!
とりあえす気を取り直して、俺達はありがたくご飯を食べる事にした。
正直戦い通しでめっちゃお腹が空いてたから本当にありがたい!
グ~~~~~…
後ろの牢屋から蝙蝠女のHUNGRYサインが鳴り響く。
「あの~…捕まった身でとてもおこがましいとは思うんですけど~、
よかったら~私にもごはんを恵んで下さると大変嬉しいn」
「NO、おまえCRIMINAL(犯罪者)。ご飯NOTHING PEOPLE(無い人)OK?」
「何言ってるかわからないけどダメって言われた気がするし凄い侮辱された気もする、死ね!」
WOW!メチャクチャきれてるーこわーい!
まぁでも俺は二回も殺されかけたんだからな?
ごはん抜きくらいで済んだ事をむしろ感謝してほしいくらいだぜ?
カチャカチャカチャ
モグモグモグ
「あぁ、うまい…!ここ最近洋食ばかりで胃が弱ってたから、
たくあんにみそ汁と焼き魚っていうシンプルな和食が本当に染みるぜぇ…HOT…」
「ふふっ、お口にお合いしたようでよかったです。お代わりもありますので
好きなだけ召し上がって下さい」
ガツガツと飯を掻き込む俺を優しくほほ笑むシノさん。
やっぱこの人天使じゃね?マジでGODなんだけど…。
もし玄関前でこの人が宗教勧誘のチラシ持って立ってたら
間違いなく即行で入信しちゃうね。
「おーおー良い御身分ですねークソ勇者、人を陥れて食う飯は旨いですか?ん?」
「VERY VERY YUMMY!FoooO!!」
「ちくしょー!!」
後ろの牢屋から蝙蝠女がチャチャいれてくるから、
逆に俺はハッピーにご機嫌な煽りをプレゼントしてやった。
食事の邪魔するつもりだった蝙蝠女は悔しそうに泣いた。
Wow、こいつおちょくるのスーパー面白い。俺ってやっぱSなのかも?
「…………ふぅ」
ふと視線を戻してみるとシノさんがため息を吐いていた。
何だろう、俺の気のせいかもしれないけど
さっきから妙に元気ない様に見えるんだよな…。
「あの、どうかしましたか?」
「えっ?」
「いや、俺の勘違いかも何ですけど元気ないように見えたから…」
俺の発言にシノさんはハッっとした表情で驚いて
すぐに口を軽く塞ぐように手を当てる。
うーん、やっぱ何かあるみたいだ。
「あの、何かあったら話聞きますよ?こんなにおいしいご飯も食べさせてもらえたし」
「ありがとうございます………っ、実は、その、今日は」
カーンカーンカーン!!
「「魔王軍だぁー!!魔王の軍勢がきたぞぉー!!」」
シノさんが意を決して何かを伝えようとした瞬間、
カーンカーンと村の警告を知らせる鐘が鳴り響いた。
警備の人が敵の来襲を大声で叫んでいる。
「えっ!?はっ!?なになになになに!?魔王!?」
魔王の軍とか言ってたよな!?WHAT’S!?は!?何で!?
突然のイベントに俺は軽いパニックを起こした。
「っ!?失礼します!勇者様はここに隠れていてください!」
「え!?ちょっと、え!?シノさん!?シノさーーん!?」
ガラガラガラッ
ダッタッタ…
シノさんは急いで俺にそう言い残すと外に出て行ってしまった。
「ちょっとまってくれ、理解が追いつかない…。なぁヴァンタ、
ここの魔王なら俺が(キティが)倒した筈だろ!?
なのに何で魔王軍なんて来るんだ…!?」
「ん~?ん~それはねぇ~う~~~~~ん……」
「……それは?」
「……何でだろうね♡」
「えぇ!?(ガクッ」
俺は思わずガクッとこけてしまった。
何だよコイツもったいぶった言い方しやがって!
JAPANESE COMEDY(日本のお笑い)みたいな反応しちゃったよ!
「と、とにかく外の様子を確認しないと…」
俺は家の扉を開けて外の様子を伺った。
…………
……
…
~SIDE:シノ~
「久しぶりだなぁ、マイハニー?元気にしてたかい?ケケケケッ!」
村の入り口に所狭しと詰め寄せた魔王軍と思わしき魔物の群れ。
その中央にいる一際大きな身体の、
全身赤い鱗で覆われたオオトカゲがシノに語り掛けた。
「…どなた様でしょうか?生憎、私の交友関係に
魔族のような”下等”な生き物はおりませんが…」
「ふぅー!相変わらず冗談通じねぇなぁ。まぁ、そういうところも可愛いんだけどよぉ」
シノの反応に怒りもせずカラカラと愉快そうに笑うオオトカゲ。
対するシノは不快そうに顔を歪めている。
「それで?何の御用でしょうか、私共もヒマではないのですが…」
「おいおいこのやり取り何度目だよ。とぼけてねーでほら、とっと出しな。今月の”生贄”をよ」
「っ…あなた達に渡す者なんて、いません!」
苦虫を噛みつぶしたような顔で俯き絞り出すように呟くシノ。
「おい、おいおいおい!約束がちげーじゃねぇか。お前らは女を差し出す。その代わり
お前達を殺さずそれどころか守ってやってるのは俺達だぜ?そういう”条件”だった
はずだろう?」
「守る?国境を塞ぎ、この村に近づく人間は全員皆殺しにする。あなた達のせいで
この村がどれだけの人手不足に陥ってるかわかっているのですか!?これが
守っていると言えるのですか!?」
「そうだ!お前らにはもう一人だって女を渡すものか!」
「「「うぉおおおおおおおぉぉ!!」」」
シノがオオトカゲに向かって啖呵を切ると
一斉にシノの周りに村人達全員が集まった。
村人達の手には槍やクワ等の武器が握られていた。
「俺達はもうお前らには従わねぇ!大人しく尻尾巻いて帰りやがれ!」
「そうだそうだー!」
「カエレー!」
男達はオオトカゲに槍を向け、
睨みつけながら罵声を飛ばした。
「ほーほーほー。これはつまり、俺達”魔王軍”に歯向かう…って事でいいんだよな?」
そう言うとオオトカゲは大きく口を歪ませニヤリっと笑った。
その瞬間。
ブワァ!!
ビリビリビリビリビリッ
今まで抑えていた魔物達の殺気が一斉に解き放たれ、
村中に広がっていった。
~SIDE:創真~
「うわ~…何あれ!?ヤバくない!?超超超スーパーヤバくない!?」
村人達が叫び始めたと思ったら急に魔王軍から赤いオーラ?
みたいなのが出て村のみんな急に黙っちゃったんだけど…何あれ?界王拳?
よくわかんないけどめっちゃ強そう…こえぇ!
「くくく…けけけけっあーっはっはっは!残念でしたねぇ、
愚かな勇者さん達、いや、人間どもよ!お前たちはもう終わりだ!」
俺がぷるぷると震えていると急に蝙蝠女が、
高笑いして意味の分らない事を言い始めた。
何だコイツ、さっきまで腹を空かしてぶーぶー言ってた癖に…
「HEYHEYHEY!急に何言い出すんだよおまえ!?
終わりってなんだよ、あいつらそんなにヤバイのか!?
おい、説明しろ!」
「そりゃあもうヤバイとも。激ヤバさ。でも…や~だね!
だ~れがお前何かに教えてやるものか!フフッ
さっき罰だとかなんとか言ってたなぁ?どうだ?
人を変態扱いした罰を受けた気分はさぁ?きゃははははっ!」
「教えてくれたらご飯全部あげるよ」
「いいか、あの方々はなぁ。(モグモグッ)
ざんぎゃくひどぉ(ズズズッ)れいこくむひぃ(バリボリ)
暗黒MAXの中でも、んっ(ごっくん)…指折りの実力を誇る魔王!
”ダイナミックエンペラー・ドラコ・マルガリータ”伯爵が率いる軍なのだ!!」
俺の一言を聞くや否やベラベラと情報を吐く蝙蝠女。
「な、なんだってぇええええええええええ!!??」
「知ってるのダーリン…?」
「いや、全然知らない…」
大げさなリアクションしちゃったけど全然知らない。だって俺異世界人だし…。
「えぇ!?何で知らないの!?あの、大丈夫?あんた本当に勇者?…じゃなくて!
くっくっく…いいのかな?そんな悠長にしていて…」
「無理して偉そうに喋ろうとしてる魔物モドキに言われたくねーよ!…で、どうゆこと?」
「マルガリータ様は大層な女好きで有名でな、特にこの村は美少女が多いのもあり
大のお気に入りなのだ。だからマルガリータ様はこの村を滅ぼさない条件として
毎月女を一人捧げる事を命じたのだ」
「なんだと…!美少女を…!捧げるだと…!」
「ふふふ、そうだ。あそこに来ている方々は女を回収しに来たんだろうさ」
おい…おいおいおいおいおいおいおい!!
ハァアアアアレムじゃねぇええかぁあああ!!
F○ck!F○ck OF F○ck!!なんだその魔王!ハーレムクソ野郎じゃねぇか!!
許さん!絶対に許さん!!この世の美少女は全員この勇者佐藤創真の
マイスイートハニー候補なんだぞぉ!!??(ヴァンタとキティは除く)
「F○ck!!何てひどいやつなんだ!許せねぇ…!行くぞヴァンタ!キティ!
この俺自らあいつらを成敗してやるぜ!」
「おぉ?カッコイイじゃ~ん!ちょっとは勇者っぽいところがあったみたいね…
でもいいのかな?あの方々は魔王直属の精鋭部隊。
一人一人がとんでもない強さを持ってるんだよ?」
「Hun?そんなの関係ないね!攫われた美少女達の悲痛な声が!涙が!
俺に絶大なる勇気とPOWERを与えてくれるのだ!!
あんな卑怯者共なんてちょちょいのBOOMさ!!……
………ちなみに聞くけど具体的にどれくらい強いの?」
「一人一人がさっきあんた達が倒した魔王様と同じくらい強い」
「争いは何も生まない。ここは勇者らしく平和的な解決方法を探ってみよう」
ふざけんじゃねぇよ!一人一人が魔王級ってどんなチートだよ!ズルいぞ!
あー…
ま、まぁー大丈夫か。大丈夫だよな。
うんうん、心配する必要なんてノープロブレムだよな!
だってこっちにはキティ…と俺とおまけにヴァンタがいるしな!
前回の魔王だってキティが瞬殺したんだし、今回も楽勝でしょ!
「さっきのはやっぱ無し!魔王軍には死あるのみ!
行くぞキティ!ヴァンタ!
あいつらぶっ倒して美少女とお宝をGETするぞー!」
「え、やだ」
シーーーーン
「あれ?キティは…?」
………
……
…
ってやべぇぇえええー!?
城でキティとはぐれたままだったぁあああぁ!!??
ど、どどどどうしよう!?キティがいなかったら勝てるわけないじゃん!?
どうする、どうするんだ俺!考えろ、COOLになって考えるんだ…!
俺はハンサム、俺はイケメン、俺は天才、俺はGENIUS
俺は俺は俺は、えーっと…
うん、どう考えても無理だこれ。
スッ
「何やってんのあんた?」
「ここは勇者流戦術に乗っ取って、様子を見ることにしました」
そう、あくまでこれは戦略であって決して怖いから見捨てるわけではない。
…いや、だって逃げだしたら流石にカッコ悪いじゃん?
逃げ出さないだけでも、褒めてほしいくらいだぜ?MOMMY…
「えぇ…だっさ…キモ…キモいなーあんた、キモ勇者じゃん」
「うるせぇえええ!!!何とでも言えー!!俺はまだ死にたく無いんですー!!」
まぁ俺不死身だから死なないんだけどねぇえええ!!
いやいやいや、無理じゃん!勝てるわけないじゃん!キティいないし!
ヴァンタは手伝ってくれないし!何だよ!俺一人で突っ込めっていうの?
ミンチになるわ!パティにして?こんがり焼いて?BREADで挟んで出来上がりって?
俺は安物のHAMBURGERになんてなりたくねーんだよー!!
「殺すか、見せしめに一人くらい」
「「「ひぃいいいぃ!?」」」
外からオオトカゲの声と村人の悲鳴が聞こえてきた。
NOぉぉぉお!?もしかしてもうクライマックスな感じ!?
助けに行った方がいいよね?いやでも無理無理無理!怖い!!
どうしようどうしよう…Huuuuuuuum…。
よし、逃げよう。
無理無理無理。あんなのどうやって倒すの?って感じ?マジで。
何?勇者のくせに逃げるのかって?Ha!NONSENSE!(ノンセンス!)
魔王一人ならともかく全員が魔王クラスとかいう
CRAZYでヤベーやつらに囲まれて無双出来るヤツが
いるなら紹介してほしいね!いやマジで、切実に。PLEASE。(プリーズ。)
というわけで俺は逃げます。
いやいやいやだって仕方ないだろ!?あんなに一杯いるんだよ?
みんなには悪いと思うけどさぁ、俺ってもともと部外者だし?
ほら、蝙蝠女だって捕まえてあげたんだからさ、
だから、きっとみんなわかってくれるよね!!!?
~蘇る数分前の記憶~
……
…
.
「先程は助けて頂き本当にありがとうございます!」
そういえば…あんなにちゃんと感謝されたの、始めてだったな。
「ふふっ、お口にお合いしたようでよかったです」
シノさんが作ってくれたご飯、おいしかったな。
「勇者様はここに隠れていてください!」
村の為に戦えって頼む事も出来たのに…
俺を庇ってくれた…んだよね?
「勇者様、あの、私、勇者様のコトが…いっ…いっぱいちゅき♡」
そう、そして俺の事を愛してるって…熱いキッスを…
…………
……
~俺の妄想(回想)終了~
やっぱ、もう少しだけ…様子を見てみようかな。
いやいやいや、あれだよ?別に戦うわけじゃないんだけどね?
戦うわけじゃないんだけど…ちょっとだけ待つ。
俺はまだ見つかってないし、もう少しだけ。
そして俺はバレないように恐る恐る扉の隙間から外の様子を伺った。
~数分前に遡る:村の入り口~
「おいおい、どうしたんだぁ?さっきまでの威勢はどこに行っちまったんだよ?」
「うっ…あっ…」
「ひぃ…!?」
オオトカゲがゆっくりと近づきながら話しかける。
村人達は魔王軍の殺気に当てられ
すっかりと戦意を失ってしまっていた。
「うんうん、お前達の気持ちがよーく伝わってきたぜぇ?そりゃあ嫌だよなぁ?
女持ってかれるのはよぉ………殺すか、見せしめに一人くらい」
「「「ひぃいいいぃ!?」」」
村人達はすっかり腰を抜かし座り込んでしまった。
オオトカゲは背中に手をやると装備していた大斧に
ゆっくり手を掛け持ち上げる。
「やめてください!…もう、やめてください」
シノが村人の前に飛び出て両手を広げ静止の声をあげる。
「私が、私が生贄になります」
「!?そんな!?」
「シノちゃん!?」
シノの衝撃的な発言に村人達は皆驚いた。
「お前が?ハハハッ!そりゃあ良い!
おまえ程の美しさならば魔王様もきっとお喜びになるだろう!
しかしよぉ~良いのか?村長のあんたがいなくなったら
村は終わりなんじゃねぇのかい?」
「心配して頂かなくても結構です…今まで通り、
この村から一人女がいなくなるだけのこと。
私が居なくなっても、村を守る人間はいくらでもいます」
「そんな、シノちゃん…」
「村長…」
「みなさん、後の事はお願いしますね。」
村人達に別れを告げるシノ。
気丈にふるまいながらもその足は僅かに震えていた。
「くっ…くくくく…ケケケッ…あーっはっはっは!!!」
突然、オオトカゲが狂ったように笑い始めた。
「な、何がおかしいんですか…?」
「いやぁスマンスマン!ただ…ヒヒッ、この村にはもうお前以外女が
残ってないのは知ってるからよぉ。なのに堂々と私が~なんて言って
出てきたのがなんていうか…バカみたいでよぉ!ヒヒヒヒッ!」
「知ってた…?」
呆然とするシノの頭に一つの考えが浮かぶ。
それは最悪の展開。
「そんな…そんな!それでは初めから…!!」
「あぁそうだ、これは元々そういう”計画”だったからなぁ」
元々この村は美少女こそ多いが男が少なく、中々子供が生まれなかった。
それにも関わらず月に一人なんて条件で、
持っていかれては女はすぐにいなくなってしまう。
オオトカゲ、というより魔王はそれを最初からわかっていたのだ。
この村から根こそぎ女を奪い、
女が居なくなれば残った人間を皆殺しにして村を破壊する。
元々そういう計画。
そしてこれが彼らが制服した領地に対する
いつものやり方であった。
ガクッ
「始めから、初めから騙していたのですね…うっ…うぅ…!」
毎月一人なんていう条件を付けたのは、
あくまで絶望する村人達を見て楽しむ為という
ただの娯楽に過ぎなかった。
シノはそれを理解してしまった。
シノはたまらなく悔しく。
生まれて初めて涙を流し、膝から崩れ落ちた。
「ケケケケッ!あー、やっぱり最高だなぁ、絶望する人間の惨めな姿を拝むのはよぉ!」
「「「ハハハハハハハハハハハッ!!」」」
泣き崩れるシノを見て嬉しそうに喜び笑うオオトカゲ
それに釣られて響く部下たちの笑い声。
「さぁて約束は約束だ。きっちり守ってもらわねぇとなぁ」
「きゃ!?」
シノの手を掴み引っ張り上げるオオトカゲ。
「村長ぉ!」
「やめてくれぇ!村長がいなくなったら俺達は…!」
哀願する村人達を満足気に見下すと、
オオトカゲはニヤリと口を開きながら、
冷酷な笑みを浮かべ村人達に言い放った。
「別にこいつじゃなくても女なら誰だっていいんだぜ?
もっともこの村には代わりに差し出せるような女は、
もう誰もいねぇだろうけどよぉ!ケケケケケケケケッ!!」
オオトカゲの笑いが村中に響き渡る。
村人達はもはや抗う気力もなくただただ俯くばかり。
オオトカゲの腕の中で静かに目を閉じ涙を流すシノ。
もうここにはシノの為に立ち向かえる人間など誰一人としていなかった。
………筈だった。
「待てぇぇぇぇぇえいッッ!!」
突如村中にどこからともなく響き渡る謎の声。
「そこのトカゲっぽい変態!その汚い手をシノさんから離せ!」
力強…くはない声だった。
どことなくビブラートの掛かった震え交じりの甲高い声は、
むしろ力強さとはかけ離れたか細いものだった。
それでもそれは、どこか熱い、魂の籠った声だった。
「なにぃ!?だれだ、姿を見せろぉ!!」
謎の声の主に向かって出てこいと叫ぶオオトカゲ。
ヒョコ
ダッ!!
すると、村の入り口付近にある小さな小屋の物影から
黒くもっさりとしたシルエットが飛び出してきた。
ダダダダダダダッ
トゥ!!
ピョン!
ズサーッ!
「代わりになる美少女…いや、超絶プリティセクシーGIRLならここにいるわよ!!」
突如として現れた謎の人物は、
謎のSEと共にスーパージャンプ(1mくらい)をし、
オオトカゲの目の前に砂塵を巻き上げながら滑り込み、
アイアンマン並みのスーパーヒーロー着地を決めた。
「奇妙なマネをしやがってぇ、テメェ名を名乗れ!ツラァ見せろぉ!!」
滑り込んだ時に巻きあがった砂煙がゆっくりと晴れてゆく。
そのシルエットが浮彫になった時、声の主は高らかに己の名前を叫んだ。
「超絶プリティハイパーセクシーGIRL”アサ子”!!ここに参上!!!」
BAAAAAAAANNNNN!!!!!!
「あ、あなたは…!」
そう、オオトカゲたちは知らない。
シノと村人達だけが知っている。
この村にはまだ勇者が残っているのだ。
「お望み通り代わりの女が出てきたわよ。さぁ、シノさんからその汚い手を離し、
この俺…じゃない!この私!
【スーパープリティハイパーセクシーダイナマイトGIRL”アサ子”】を
連れて行きなさいっ!!」
服はノースリーブのワンピース、だが所々ボロボロで清潔感が無い。
肩の長さまで伸びた金髪をゴムで二つに結っている。所謂おさげだ。
しかし、ところどころ強烈にハネたくせッ毛がせっかくの金髪を台無しにしている。
どれだけ下手ならそうなるのか、口紅はその小さな口から大きくはみ出て
耳の下まで伸びており、もはや口の割けた化物にしか見えない。
その癖妙に自信に満ち溢れた顔をしているのがハラが立つ。
控え目に言ってなお、それはこの世の者とは思えない程に…
「なんだこのブサイクな女はぁああああああああああああ!!!???」
ブサイクであった。
~一方そのころ~
「ちくしょー!!あのクソ勇者ー!!あたしの服を剥ぎ取った上に
お気に入りのお化粧道具まで持っていきやがってー!!くしゅんっ
ぜ、ぜってーぶっ殺してやるからな!!…へぇっくしゅん!」
女装の為に服を剥ぎ取られた蝙蝠女は
牢屋の中でロープでグルグル巻きにされていた。




