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第8録 行き先

 「そういえば1つ意見がほしい事柄があるんだけど」


 エリスが悪魔2人の視線を受けながら遠慮がちに

話し出す。


 「パッカツで白い魔法使いに私を追ってきた理由がアレキサンドルで高難易度の魔法を使ったからだって言われたの。それで、その場面を写し撮った水晶玉を見せてくれたんだけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 「そりゃおかしいな。召喚魔法アンヴォカシオンは高難易度じゃねぇ。「契約」した悪魔や使い魔によって魔力の消費量は変わってくるが、フツーのヤツでも唱えられる」


 すかさずベルゼブブが口を挟んだ。エリスはそれを見て確信したように頷く。


 「やっぱり……。だから魔導具が反応したのは

ベルゼブブのタイムストップだと思ってて」


 「そうだろうよ。だが、オレ様が町のヤツラの記憶を

消した。いくら写し撮る魔法とはいえ、|周囲のヤツラの記憶を元にする《・・・・・・・・・・・・・・》からな。

 クズ共の騒動は無かったことにしてあるから、お前の

召喚魔法が写し撮られたワケだ」


 「記憶、消してたのね」


 「ああ。悪ぃかよ?」


 「悪くない。逆に助かったわ。……ありがとう」


 少し頬を緩めながら言うエリスをベルゼブブは得意げに

見下ろした。


 「フン。もっと感謝してもいいぜ?」


 「今の1回で充分」


 「あ?日頃から感謝が足りてねぇんだよ、お前」


 「はいはい、ケンカするなら話し終わってからにして

ほしいッス」


 再び険悪なムードになりそうなところをボサボサ男に

なだめられて、2人は渋々引き下がる。その様子を見て

ボサボサ男は小さなため息をつくと口を開いた。


 「それより、その白い魔法使いは何も思わなかった

んスかねぇ」


 「わからない。その人、名前は控えるって言ってたけど

たぶんアレキサンドル家だと思う。着ているローブの質が

違ったもの。少なくとも私のよりも上」


 エリスは指先でローブの袖を触りながら言った。カシミアで作られており、簡単に手に入る物だ。


 「ほー、アレキサンドル直々ねぇ。おもしろいじゃないスか。

 現国王ラング・アレキサンドルは恐怖政治してるってのに

よく帰ってこれたッスね」

 

 「彼からは凶暴性は感じ取れなくて、終始穏やか

だった。私が頭痛で倒れた時も看病してくれたみたい

で……」


 「上辺だけじゃねぇのか?お前をテオドールだと疑ってる

んだから、ヒドい扱いはできねぇだろ」


 「でも……」


 どこか納得のいっていない表情でエリスは言い返そうとしたが口を閉じた。しかしすぐに話し出す。


 「とりあえず、これからの行き先を考えないと。私の護送に失敗したのがそのうちアレキサンドルにも伝わるだろうから、今まで以上に目立った行動はできない」


 「もしアレキサンドルにバレたら国を挙げて

お嬢さんを探し回るのか?」


 「たぶん……」

 

 「フーン。くだらねぇ……」


 吐き捨てたボサボサ男をベルゼブブが軽く睨みながら口を開いた。


 「今回の件で、お前の家柄がバレた可能性が高い。

位が高くなきゃわざわざ攫うなんてことしねぇからな、

フツーは」


 「そうね……。そもそも今までいろいろな町村で薬を売ってきたけど、絡まれたのは初めてだった」


 「確かに。運が悪かったな」


 ベルゼブブの言葉を聞きながらエリスが怪訝そうに呟く。


 「今から言うことは推測だけど、もしかしたら絡まれたのも誰かの策だったのかもしれない」


 「金か何か積ませたってことか?」


 「うん。私の魔力が平均より多いのは隠しきれてないはず

だから……」


 テオドールやアレキサンドルのように強い魔力を持って 生を受けると、体内に収まりきれずにオーラとして外に放出される。そのため、高家出身の者は歩いているだけでも普通とは違うと捉えられることが多かった。

 

 「それでよく今まで追いかけられなかったッスね」


 「まさかテオドールが生きているなんて誰も思わなかったでしょうし。この辺りでは私達しかいなかったみたいだから、余計に」


 「率直な疑問なんスけど、どーしてアレキサンドルは

お嬢さんを欲しがる?」


 「アレキサンドルとエベロス帝国が長年争っているの。かれこれ8年ぐらい。最近は大きな戦いは起こっていないみたいだけど、いつ起きてもおかしくない状態で……」


 エベロス帝国はアレキサンドルの南に位置している。

そこを治めるエベロス家は武器――特に剣の扱いに長けている

一族だ。アレキサンドルとはいつからか雲行きが怪しくなり、冷戦状態が続いている。


 「国同士の争いねぇ……。だからやたらエベロスエベロス

言ってたんスか騎士共は。躍起になりすぎだろ」


 嫌悪感を示しているボサボサ男をエリスは引いた目で見ると質問を投げかけた。

 

 「話は全く変わるけど、今、私達はどの辺にいるの?」


 「アレキサンドル領内にいる事は間違いないッスね。

少し移動したんで、パッカツの南東辺りか」


 「そう……」


 「迷ってるんならアレキサンドルの南、シーポルトに

行ってリヤン大陸に行くのは?」


 ボサボサ男の提案を聞いたベルゼブブとエリスは目を丸くする。


 「シーポルト?」


 「港町よ。船が出るのは知ってたけど大陸間を行き来しているのは知らなかった。シーボルトで薬を売るのは

避けてたし」


 「そういやそうだな。何でだ?」


 「人の行き交いが多いから高家とまではいかなくても魔力に詳しい人がいれば、一目で私が普通ではないことがわかるからよ。

 せっかくの提案だけどこのままの姿だとバレるから、

こっちで隠れながら過ごすしか……あ!」


 突然声を上げたエリスに再び悪魔2人の視線が集まる。


 「なんだよ?いきなり声張り上げやがって」


 「イカナ村のこと思い出した。染織をやってて髪も染めれるって。だから、見た目を変えてからシーボルトに行く」


 「あっそう。お嬢さんがそうしたいならそうするといい」


 提案が受け入れられなかったことを不満に思ったのか、

ボサボサ男は素っ気なく言うと呪文を唱えて宙に浮いた。


 「オレは失礼するッスよ。もうダイジョーブだろうし。

とはいえ、ちょくちょく会うことにはなるが」


 「う、うん……?」


 ボサボサ男は2人見て少し口角を上げるとその場を去って

いった。エリスは首をひねりながらベルゼブブに尋ねる。


 「さっきの意味どういうこと?」


 「そのうちわかる」


 「知ってるなら教えて」


 「やなこった。嫌でもわかるから大人しく待っとけ」


 抗議しようとしたエリスはさっき2度もなだめられたことを思い出したのか、諦めたように口を閉じる。

 

 「村に行くんだろ?とっとと行こうぜ」


 先に歩き始めたベルゼブブを睨みながら

エリスは夜道を急いだ。

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