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【第2部開始】エレ レジストル〜最強悪魔と旅する生き残り少女の冒険録〜  作者: 月森 かれん
第2部 敗北者達の復讐編

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第72録 予兆

 一方、アンスタン大陸西に位置する町、キーゲン。

そこの酒場の隅で、一組の中年男女がヒソヒソと話していた。

 服を着替えた為に威厳が失われているが、ラングとリーザだ。


 「さて、上手く紛れ込めたのは良いですが……これからどうしますの?」


 「具体的には決まっておらん。

気が緩んだ隙を狙おうとは思っているが……」 


 「ちゃんと考えておいてくださる?やっぱり頭が固いですわね」


 「頭が固いは余計だ!そういうお前は何か考えがあるのか!?」


 眉をつり上げて言うラングに、リーザは動きを止めた。

そして気まずそうに目を泳がせる。


 「……ありませんわね。先程の発言は撤回いたしますわ」

 

 「フン……。少し会っていない間に非を認められるようになったか」

  

 「一応女帝でしたからねぇ。

 そういうあなたは良い噂をなかなか耳にしませんでしたけど?」


 「ワシのやっていたことは、全てが間違いではなかったからな。謝罪までは必要ない。

 さて、話が逸れたな。これから――」


 「お取り込み中のところ失礼」


 突然耳に響いた低い声に2人がハッとして顔を上げると、濃い紫のローブフードを纏った男が立っていた。

顔ははっきり見えないものの、フード下から覗くダークグリーンの目が妖しく光っている。


 「貴様……何者だ?」


 「そうだな……。お前達の野望に興味を持った者、とでも言っておこう。

面白そうな話をしているではないか」


 一切引けを取らない男の態度と、どこか好奇心を煽るような声に

ラングとリーザの額に汗が浮かんだ。


 「つまり、協力してくれるってことですの?」


 「ああ。

 もちろん、タダでとは言わないがな」


 「貴様の望みは何だ?」


 「それは外で話そう。

なにせ、こんな所で聞かれてよい話ではないからなぁ。

お前達も困るだろう?」


 ニヤリと笑う男に2人は顔を見合わせる。

そして立ち上がって会計を済ませると、緊張した面持ちで外に出た。




 男は町を出て人気のない林に2人を連れて来た。

数分進んだところで立ち止まって振り返る。


 「さて、この辺りでいいか」


 「……貴様、何者だ?」 


 「俺か?俺はアモンという」


 「何……!?」


 名を聞いたラングの顔が引きつった。

それもそのはず、アモンはベルゼブブ達と並ぶ大罪の悪魔だからだ。

 リーザが少し緊張した表情でラングに声をかける。

ライバルでもあるラングの顔がずっと引きつっているのを見るのは初めてだからだ。


 「知っていますの?」


 「知っているも何も……位の高い悪魔がなぜ彷徨いている?

貴様の言葉から察するに「契約」は結んでいないようだが」


 「ほう、そのことを知っているとは。ある程度悪魔に対して知識があるとみた。

 ちょっとした綻びがあったものでね。散歩がてら出てきたのだ」


 「あ、悪魔……?散歩がてら……?」


 リーザはラング達の会話を首を傾げながら聞いていた。

ただでさえ悪魔には疎いのに、どんどん話がややこしくなってきている。

アモンはそんなリーザを横目でチラリと見てからラングに向き直った。


 「それで、どうする?俺と「契約」を結ぶか?」


 「貴様は何ができる?」


 「俺は精神干渉が得意でな。コントロール魔法とも言うべきか。

弱い者なら一度に数千は支配下に置ける」


 「モンスターも操れるのか?」


 「無論だ」


 アモンは即答するとニヤリと口角を上げ、目を光らせる。

ラングは気味悪さを覚えながらもゆっくりと頷いた。


 「なるほど。それは心強いな。

 ワシ等の目的は祖国への復讐。手始めにモンスターにでも襲わせて混乱を招こうと思っている」


 「あら、それは初耳ですわね」


 「今思いついたのだ!」


 2人の会話をを聞きながらアモンは羊毛紙を宙に喚び出した。


 「よかろう。双方の同意は得た。「契約」を結ぼうではないか」


 アモンはラングに向けて羊毛紙を飛ばしたが、それは何かに弾かれるようにして空中で留まる。

ラングとリーザは少し目を見開き、アモンは小さく舌打ちした。


 「お前……すでに「契約済」だな」


 「確かにそうだ……。どうにかできないのか?」


 一瞬ラングの脳裏をベリアルがよぎった。

裏から魔力の底上げは行ってくれていたものの、それ以外の実績が思い浮かばない。

 コントロール魔法が得意だというアモンの方が魅力的に映った。


 アモンは嘲るように鼻で笑うとリーザに目を向ける。


 「隣の女は「未契約」のようだが?」


 「へ?(わたくし)?」


 獲物を見つけたに獣のように目を光らせるアモンを見て、ラングは咄嗟に口を開く。 


 「やめておけ。この女の魔力は低いぞ」

 

 「……言われてみればそうだな。平均よりも低い」


 「ちょっと!私をバカにしてます!?」


 「お前は悪魔について知らぬようだな。

この男は配慮しているのだ。魔力の低い者が無理に「契約」を結ぼうとすれば身体に影響が出るからなぁ」 


 「え?」


 アモンの言葉にリーザは緑色の目を丸くした。

まさかラングが自分を庇ってくれるとは思っていなかったからだ。

 見透かされたラングは不機嫌そうに眉を下げる。


 「余計なことを……、

それで、ワシが「契約」を結ぶことはできないのか?」


 「今の契約書を見せてみろ。俺より位が低ければ上書きできる」


 ラングは表情を変えずに丸められた契約書を差し出した。

アモンは一通り目を通すと不気味に笑う。


 「なるほど。そこそこの位だが俺より低い。

上書きできるぞ」


 「ならば上書きを頼む。お前の方が戦力になる」


 「……承知した」


 アモンが羊毛紙に手をかざすと複雑な文字列が消え、新たな文言が浮かび上がる。


 「最下部に署名を」

 

 ラングは言われるがまま羽根ペンを受け取り署名する。

確認したアモンは再びニヤリと口角を上げた。


 「よかろう。これで「契約成立」だ」


 羊毛紙をしまってクルリと背を向けたアモンにラングが訝しげに尋ねる。 


 「「契約」を結んだばかりだというのにどこへ行く?」


 「お前達が主犯だとバレないように動くだけだ。

それにここへ来る途中に懐かしい魔力を感じとったものでね。

うまくいけばソイツをひきこめるかもしれん」


 アモンはダークグリーンの目を不気味に光らせて笑うと、音もなく去っていった。




 



****



エベロス帝国領辺境。


アンナの治療を終え、

血液までしっかり回収したアザゼルは珍しく上機嫌だった。


「今日の採取……大収穫ッスよ……」


珍しくニヤついたその瞬間――

目の前に濃い紫色のローブフードの人物が音もなく立ち塞がる。


アザゼルは反射的に眉をひそめたが、相手のフード下から覗くダークグリーンの目に警戒を解いてしまった。


「お、アモン?久しぶり――」


しかし、その声が終わるより早くアザゼルの体がガクンと大きく崩れる。

生気のない赤い瞳には奇妙なダークグリーンの紋様が浮き上がり、不自然に光を帯びていた。


「………………」


アモンは勝ち誇ったように、口角を冷たく持ち上げた。


「フン、俺がコントロール魔法に特化していることを忘れたか。

ずいぶん平和ボケしたな、アザゼル」


アモンの嘲笑にもアザゼルは無反応だった。

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