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第53録 集結

 「あなたは、ラング・アレキサンドルですね?」


 「それ以外に誰に見えるというのだ」


 緊張で顔に汗を浮かべて尋ねたエリスにラング王は低い声で答える。

 しかし彼ははアンナを見ると眉間にシワを寄せて、目に怒りを含ませた。


 「エベロス。その紫髪、忘れもせぬ……」


 「ラング王……。私達が何をしたと言うのですか?」


 「惚けるな!貴様等は巧妙な手口で我が妻メリアの命を奪ったのだ!」


 「メリア……さん?」


 エリスとアンナは顔を見合わせて瞬きする。ラング王がはますます眉間のシワを増やした。


 「忘れたとは言わせんぞ!10年の月日を経てもワシは片時とも忘れたことはない!」


 「し、しかし、私達にはそのような事件があったと報告は――」


 「まだシラを切るか!《炎剣(ブレイズブレード)》!!」


 ラング王は創造した剣を手に取るとアンナに向けて振り下ろす。

 咄嗟にエリスがバリアを張り、その中にアンナを引っ張った。


 「ぬぅ!テオドール!どのようにして洗脳を解いたかは知らぬが、小賢しい!」


 「相棒に助けてもらいました。私達はあなたを止めにきたのです」


 「ワシを止めるだと!?何を思っての発言だ!もう貴様らの顔も見たくない!」


 まくしたてるように言うとランク王は一呼吸置いて、少しだけ冷静さを取り戻す。


 「だが、ここまできたことは褒めてやろう!滅多に体験できない魔法で葬ってやる!

  出て来い!ベリアル!」


 再びラング王が怒りを含んだ声で叫ぶと彼の隣に赤紫色の霧が現れ、そこから霧と同じ色の髪をした女が姿を見せる。


 「彼女が……ベリアル……」


 「べ、べりある?」


 「ハーァイ、オーサマ。出番ってわけね」

 

 ベリアルはエリスとアンナを品定めするようにジックリと眺めた。


 「ふ~ん、そっちのオレンジの髪の子がテオドールね。確かに魔力高いじゃん」


 「ベリアル、貴様がやれ」


 「あれ?オーサマがトドメ刺すんじゃないの?」


 「良い。顔も見たくない!」


 「了解!

  じゃあ、アンタ達に恨みはないけど、悪いわねっ!《闇の針(ダークニードル)》!!」



 2人の上空に赤黒い気を纏った巨大な針が複数が現れ、落下する。アンナは歯を食いしばるとエリスに声をかけた。 


 「移動するぞ、テオドール!」


 「はいっ!」


 「アハハッ、アタシの針から逃げられるわけないじゃん!」


 ベリアルは落下しているのとは別に針を喚び出し、エリス達に向けて放ったのだ。ベリアルの周りに現れた無数の赤紫色の針は容赦なく飛んでゆく。


 「くっ、《聖なる障壁(ホーリーバリア)》!!」


 エリスのバリアは次々と飛んでくるベリアルの針を受け止めた。しかし休みなく飛んでくるそれらに押され、ヒビが入リ始める。


 「ヒビが……でもまだっ……!」


 「テオドール!無理はするな!」


 額に汗を浮かべながらもバリアを強化するエリスにアンナは体調を案じた。

しかしエリスの必死の努力も甲斐なくバリアは破壊され、針は無防備になった2人に鋭い先端を向けて襲いかかる。


 「しまっ――」


 突如、2人を覆うように紫色のバリアが張られ、それに触れた針は音もなく消滅してゆく。

 予想外の展開にベリアルが困惑した。


 「へ……?」


 「オレ様が黙って見てるわけねぇだろ」


 エリス達とベリアルの間にベルゼブブが降り立った。

 ベリアルはますます困惑する。


 「よぉ、久しぶりだな、部下2号」


 「は……ボス!?え、何で!?」


 「何でってお前ならわかるだろ」

 

 「ま、まさかテオドールと「契約」してるっていうの!?」


 ベリアルの言葉にラング王が反応しピクリと眉を動かした。


 「上級使い魔ではなかったのか?」


 「違う!オーサマ!ボスは正真正銘、悪魔!使い魔とか比にならないって!」


 「フン、どういう話してたか知らねぇが、オレ様は使い魔なんかじゃねぇよ。「契約」じゃなかったらこんな所にいねぇ」


 「あー、そ、そうよねー」


 途端にベリアルの様子が変わった。落ち着きを失って気まずそうに目を泳がせている。

 その隙にエリスは耳を傾けながらバリアを張り直した。

 ラング王はベリアルを睨むと声を荒げる。


 「ベリアル!まさか戦えぬと言うのではないだろうな!?」


 「駄目……?」


 「貴様に拒否権があると思うか!?」


 「ぐっ……。だったらまとめてやるしかないじゃん!《濃闇(ダークネス)――」


 「楽しそうッスね、ベリアル」


 頭上から降ってきた声にベリアルの詠唱が止まった。現れようとしていた赤紫色の霧も消え去り、手を伸ばしたまま大きく目を見開いている。ベルゼブブの隣にアザゼルが降り立ったのだ。


 「ゲッ、ゼルゼル!?アンタまでいんの!?どーなってんのよ!?」


 「オレはタイチョーについて回ってるだけッスよ」


 「ちょっ……無理無理無理無理!!ボスだけでもダメなのに、ゼルゼルもとか命がいくつあっても足りないんですけど!」


 「……じゃあ、オレとサシは?」


 アザゼルの提案にベリアルは少しの間固まっていたが、徐々にニンマリと口角を上げてゆく。


 「いいじゃない。どーいうつもりか知らないけどさ!」


 「個人的にケリつけたいだけッスよ」


 「ふ~ん。なら、場所移動しようよ。ここじゃ邪魔になるし?」


 「ああ」


 ベリアルは勢いをつけて飛び上がるとそのまま空に消えた。続こうとしたアザゼルをベルゼブブが止める。


 「何スか、タイチョー?」


 「アイツのことは任せたぞ」


 「リョーカイッス。タイチョーもな?」


 「フン、言われるまでもねぇ」


 言い切ったベルゼブブを見てアザゼルはほくそ笑むとベリアルと同じようにして離脱した。

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