第22録 忍び寄る影
今回は文字数少ないです(950以上1000以下)
時間は少し遡り、エリスたちがアザゼルと別れていた頃、船着き場ではジョルジュ・アレキサンドルが1人で唸って
いた。右手には石のような物を握っており、鈍い赤い光を
放っている。
「うーん、反応はしてるんだけどな。やっぱりこっちに
来てたか。海に目をうばわれなければよかった。
いつから光っていたんだろう」
久しぶりの船でジョルジュはずっと海を眺めており、
エリスたちが乗船していたことに気づいていなかった。
「でもこの石すごいね。半信半疑だったんだけど」
父であり現国王のラング・アレキサンドルから渡された
魔法石の1種だ。入手経路は明かされなかったが、希少な物質でつくられており、魔力の高い者が近くにいると光りだす。
本格的にエリスの捜索が始まったときにジョルジュとその弟のグラドだけに渡されていた。
「歩いて探し回るしかないかな。こっちのルールはわからないけど、むやみに魔法は使わない方がいいだろうし」
リヤン大陸の住民は平和主義だ。ケンカや騒ぎが起きて
どうにもならなくなった場合は周囲で団結して制圧にかかり、騒ぎを起こした者を処罰する。
魔法石を光の通さない特殊な布袋に入れて顔を上げた
ジョルジュは行き交う人々を見て動きを止めた。
「相変わらず種族が多いね。エルフ、ドワーフ、
コロボックルもいる?
こっちは人が1番多いからなあ。どうやったら来てくれるようになるんだろう」
アレキサンドルとエベロスの対立が影響して、アンスタン
大陸からリヤン大陸に行く人はいるが、逆は僅かだった。
「やっぱりエベロスとの問題を解決しないと始まらないか。そのためにはテオドールの力を借りないといけない。
あまり時間をかけるわけにもいかないし、少しだけ魔法を
使わせてもらおう。《トラッキング・レイ》」
ジョルジュが呪文を唱えると一筋の光が隅の方に伸びた。
それを確認するとすぐに解除して歩き出す。
「あっちか。パッカツで追跡魔法をかけておいてよかった。後は石に頼ろう。連れはいないけど、話を聞いてくれるかな?」
ある店の前で石が一層強く光り始めた。ジョルジュは驚いて足を止めるとゆっくりと建物を見上げる。
看板には薬屋と書かれていた。
「テオドール……ここに居るのかい?」