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第18録 ベルゼブブの憂鬱

 「だからなんでお前がいるんだよ」


 魔界に戻されたベルゼブブは当然のように隣にいるアザゼルを睨んでいた。破壊されたはずの魔法陣は再生しており、

ガッチリとベルゼブブの動きを封じている。

 アザゼルは表情を変えずに口を開いた。


 「今回はちゃんと理由がある。強行突破して地上に出たんだから、すり傷だけじゃなくて他にも悪いトコあるッス

よね?」


 「あったんだが……ここに戻されたら治っちまった」


 地上に出ていたときにできていたすり傷やローブの破れは

嘘のようになくなっていた。

 ベルゼブブの言葉を聞いたアザゼルはつまらなそうにため息をつく。


 「ちっ、戻り損ッス。せっかく世話させてもらえるかと

思ったのに。

 それはそうと、エリスの父親何者なんスか。受肉云々も

そうだが、魔界でも制限かけられるなんて聞いたことが

ない」

 

 「「契約」結ぶときに介入されて、都合のいいこと書き込まれたんだよ。2つともそれだ」


 「断ればよかったじゃないスか」


 「そうしようとしたんだけどな。そしたらアイツ何て言ったと思う?「悪魔の1、2を争う君がたったこれぐらいのことで

怒って「契約」を諦めるのか?」だとよ!思い出したら

腹立ってきたぜ」


 「あー、挑発にのったんスね」


 目を吊り上げて言うベルゼブブをアザゼルはどこか哀れみの表情で眺めた。


 「そりゃのるだろ!オレ様にもプライドがあるからな!」 


 「プライド……ないよりはある方がいいんでしょーねぇ。

 それにしてもタイチョーが素直に言うこと聞くなんて珍しいじゃないスか。無理言って暴れてるかと思った」


 「「契約」を守りきれば報酬が増えるからだ。

 オレ様は喚ばれることが滅多にないからな。それにお前みたいに簡単に地上に出れねぇし」


 アザゼルは意外そうに首を傾げる。


 「そーなんスか?タイチョーなら簡単に許可もらえる

でしょーよ。まあ、どーでもいいか。

 んで、話を戻すと、すでにもらってる報酬はエリスの両親の

タマシイ。追加報酬がエリスのタマシイってことスか」


 「ああ。父親は「足りなかったら「契約」終了後に持って

いっていい」と言っていたが、足りても足りなくても持ってくに決まってんだろ」


 「強欲ッスねぇ」


 「お前に言われたくねぇよ!

 そういや1つ気になってたんだが、お前、村でどうやって

アイツにコントロール魔法かけた?確か相手の目を見ないと

かけれなかったはずだろ?」


 ベルゼブブの言うことは最もで、アザゼルはその時ずっと

空中にいた。つまり、エリスとは1度も目を合わせていない。

 するとアザゼルは右手で自分の目を覆った。少しして外すと手の中央に小さめの模様がフワフワと浮かんでいるが、右目の模様が消えたわけではなく、しっかりと中心に浮かんでいる。

 ひと通り見ていたベルゼブブは怪訝そうに首を傾げた。


 「何だそれ?まさかそのちっさい方を相手に投げて操るとか言わねぇよな?」


 「いや?その通りッスよ?流石ッス」


 「マジかよ……」


 「だが、これはフツーにコントロールするよりも倍、魔力を使うんスよ。それに外したら最低でも半月はこの魔法を使えなくなるデメリットがある。オレにとっちゃ痛手ッス」


 淡々と解説するアザゼルをベルゼブブは理解できないという表情で耳を傾けている。


 「そこまでして操りたかったのか?」


 「操りたかったわけじゃないッスよ。ただ、あの人間2人が

あれぐらいの罰で済むのなら甘過ぎると判断したまで。実際

やって正解だったッスよ。

 まぁ、エリスを使うつもりはなかったんで、ちゃんと謝ってはおいたが、敵視されかけたッス」


 「他のヤツに対して1歩引いてるところはあるが、関係が

悪い方向に進むのは嫌なんだな、アイツ」


 「見に覚えのないことで悪くなるんなら誰だってそうだと

思うッスよ。

 でもよかったじゃないスか、タイチョー。大陸移動したら

常に出してもらえるんスから」


 「ああ。やっとこの拘束ともおさらばできる!」


 「タイチョーの振る舞いによってはまたここに戻る可能性もあるでしょーけどね。でも最低限のモラルは守ってほしいっス」


 こっそりガッツポーズをとっていたベルゼブブはすかさず

アザゼルにかみついた。


 「それぐらい守るぞ⁉誰これ構わず喧嘩売り買いしてるわけじゃねぇし⁉それに今のところアイツがオレ様を喚び出すのは困ったときぐらいだからな⁉」


 「なんでエリスは常に喚んでおかないんスか?」


 「……………………………」


 実はベルゼブブは受肉していない姿でも移動中にすれ違う人々の靴や服の裾をワザと踏んで転ばせていた。ベルゼブブの仕業だと周りから感づかれることはなかったが、困り果てたエリスはある時を境に困ったときにしか喚び出さなくなっていたのだ。


 「べ、別にアイツなりの理由があるんだろ。まあもし

オレ様が何かやったのが原因だったとしても、やらなければいいだけの話だ」


 「そうスか……。あ、タイチョー。ちょっと失礼」


 「は?イデッ⁉」


 アザゼルはベルゼブブの腕を取ると注射針を突き刺した。


 「何すんだよ!痛ぇだろうが!」


 「アレキサンドルからエリスを助けた分もらうの

忘れてたッス」


 「ノーカウントじゃないのかよ⁉確かに助けるたびに1本分とは言ってたがその後からだろ?」

 

 「どっちからでもいいじゃないスか。まぁ、タイチョーは

少し休んでてくださいよ」


 止血草を渡すとアザゼルはグッと身を屈めて地上に出る準備に入る。ベルゼブブが止血の若干の痛みに顔を歪めながら声をかけた。


 「どこ行くんだ?走り廻る(素材集め)のか?」


 「どこって、エリスのところッス。なんか胸騒ぎがする

んでね。それにタイチョーも言ってたじゃないスか。

動けないときは頼むって」


 「……採るなよ」


 「貰ったばかりッスからねぇ。ダイジョーブ」


 疑いの目で見てくるベルゼブブに対してアザゼルは薄ら笑いを浮かべて応えると地上に飛び上がっていった。

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