プロローグ
この小説は拙作『薬売りと魔王』の改稿作になります。
全体的なストーリーの流れに変更はありません。
世界観や用語の説明、話数などボリュームアップしていく予定ですので、よろしくお願い致します。
小高い丘に建てられた木屋の前で男女2人と少女が向かい合っていた。
3人とも目はオレンジ色で家族のようだが両親の髪はオレンジ色に対し、少女の髪は水色だった。
わけあって染めたのだろう。
「本当にお母さんの言うとおりになっちゃうの?」
声を震わせながら少女が言う。母親は悲しそうに目を伏せてゆっくりと首を縦に振った。
「ええ。残念なことだけどね。……いい?エリス、私達との『約束』守れそう?」
「頑張る……」
「最後まで一緒に居てやれなくてごめんな、エリス。
許してくれなくてもいい。
ただ、お父さんとお母さんはいつまでもエリスのこと大好きだからな」
「うん……」
両親はそれぞれ少女を力強く抱きしめて、名残惜しそうに離す。
少女は何度も振り返りながら丘を下っていった。
その日の夜、木屋を騎士や魔法使い達が包囲した。どこかの国軍のようで紋章が入れられたマントを羽織っており、
いつでも戦闘になって良いように武器を構えている。
騎士隊長らしき者が一歩前に出て叫んだ。
「テオドール!居るのはわかっているんだ!
降伏すれば命は助けてやる!」
すると扉が音を立てて開いて、男が姿を現した。
戦意はないと両手を上げている。
「どこの国の軍かはわからないが、従おう。
ただ、その前にこの家に最後の別れをさせてくれないか?」
「家に別れだと?」
「思い出があるんだ。もう2度と帰って来れないだろうからな。頼む」
騎士隊長は唸っていたが、目を逸らさない男を見て大きなため息を吐いた。
「わかった。手短に済ませるんだぞ」
「悪いな……」
男は一瞬不敵な笑みを浮かべ、騎士隊長に頭を下げると家の中に入った。
中には女が木のイスに座っていたが、男を見ると立ち上がって駆け寄る。
そして悲しそうに口を開いた。
「……やっぱり来てしまったのね」
「ああ。君の予知通りだ。本当にスゴイな」
「感心されても困るわ。それで、私達は生け捕りかしら?」
「そのようだ。相手は臨戦態勢だがな。少しだけ話したが、攻撃はされなかった。
降伏したら命は助けてやるってさ」
女は諦めたように息を吐くと少しだけ笑った。
「でも、従う気はないのでしょう?」
「もちろん」
「そう。……でもごめんなさい、エリスに魔力を渡してしまってほとんど無いの」
女の言葉を聞くと男が豪快に笑いだした。
「ハッハッハ!俺達は最後まで気が合うな。俺も同じさ。
自爆する分しか残ってない」
「ふふふ、テオドールの魔力を国の思うように使わせてやるものですか!」
「ああ!」
男が女に手を差し伸べる。女は微笑みながらその手を取ったが、頬には涙が伝っていた。
「さようなら、エリス」
「後は頼んだぞ。…………いくぞ、アルティメット・クリメイション!!」
2人の体から凄まじい炎と光が放たれ、丘を覆った。