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迷宮掌編集  作者: tei
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近いうちに会いましょう

 眠れない夜には出鱈目な言葉で検索をかけて、ヒットした個人ブログを読むことにしている。

「雪の中で眠る」というワードで知ったそのブログは一見するとただの日記だったが、注意深く読むと何気ない記述の中に幻が混ざり込んでいた。焼くと生き返る炎の魚や、一度も地上に降りず羽ばたき続ける小鳥。足跡が決して消えない雪の原。てんでばらばらに欠けたり満ちたり忙しい月。読む端からページが増えてゆく本。必ず誰かを攫い、誰かを返す、海の波。

 創作なのか、妄想なのか。私は毎晩、夢中で読んだ。

 しかしある日を境に更新は止まった。

 最後の記事には、白い地面に残された足跡がどこかへ点々と続いてゆく写真が添付されていた。

 私はそれからも毎晩そのサイトを開いてみたが、半年以上も更新されなかったので、やがてその存在を忘れていった。

 思い出したのは、それから何年も経ってからだ。

 古本屋で、ふと目についた文庫本を手に取ったのだった。全く聞いたことのない作者名とタイトルが、非常に美しい想像上の花の絵の中に、巧妙に隠されていた。ぱらぱらめくっていた指が、あるページで止まった。

 余白の多いページだった。

 そこには不死の魚、飛び続ける小鳥、溶けぬ雪原、ばらばらに欠ける月、自分で自分を書き増やす本、寂しがり屋の海が書かれていた。


 余白には、見覚えのある足跡があった。


 何かの汚れかと思って、持っていたティッシュで擦ってみたが、消えないしティッシュについたり掠れたりもしない。汚れではない。

 目を凝らして、何度も見てみた。何度見てもそれは足跡で、あのサイトで何遍も確認したものと同じなのだった。

 私はようやく納得し、文庫本一冊分の重みを増したリュックを背負い、店を出た。

 恐らく近いうちに会えるであろう、あのサイトの管理人のことを考えながら、真ん中に穴の開いた月を見上げた。

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