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迷宮掌編集  作者: tei
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約束の針

 小さな頃から、胸を針で刺されるような痛みを感じてきた。本当に些細な痛みで、一瞬で過ぎてしまうから、我慢しているうちに慣れてしまった。そんな、慣れっこになった痛みのことを不意に思い出して、定期検診の時、お医者様に話してみた。

「何か、約束をなさっていたでしょう」

 冷静な表情で、お医者様は言った。私は首を傾げる。

「あなたはその約束を忘れておいでなのです」

「そうかもしれません」

 言われてみれば、そんな気がしてくる。小さな頃、約束という概念を知ったばかりの頃、誰かと何かを約束したような、そんな気が。

「約束を忘れるというのは、辛いことです。その辛さに、あなたの心が痛むのです。思い出すしか、方法はありません」

 病院を後にして、忘れてしまった約束について考えた。私はそれを守れたのだろうか。

 ちり、と、また胸が痛んだ。心臓が鼓動を打つのを意識したりしないように、もうずっと忘れていた僅かな痛み。それは既に私の身体そのものだ。

 その約束を思い出したいとは思わなかった。ただ、意味の分かった痛みが愛おしくて、私はそっと胸に手を当てた。

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