ばけものの手袋屋さん
『ばけものの手袋屋さん』は今日も大忙し。これから冬が深まるのに向けて、毎日注文が入っているのです。店には店長含めて三人しか従業員がいないので、朝から晩まで、せっせと編み棒を動かし続けます。
一つの掌から五十本の指が生えているばけものの手袋を作り終えたかと思うと、一つの掌から五本の指が生え、各指から更にまた五本の指が枝分かれし……、という気の遠くなるような手を持ったばけものの手袋に取り掛からねばなりません。ばけものはそれこそ無数。彼らの手となると、正に千差万別です。全てにおいて、編み図を作るところからスタートしなくてはなりません。
夜になると、従業員達は頭も腕も目も疲れ果ててしまいます。やはりばけものである彼らは、例えば両体側から八本ずつ腕が伸びていたり、指の先にも小さな眼球が付いていたりするので、作業効率は極めて高いのですが、集中するので非常に体力を使うのです。仕事を終えて、彼らは帰宅します。しかし店長だけは一人残り、新規に注文の入った商品の作成に取り掛かりました。
だいぶ夜も更けた頃、店の戸を叩く音がしたので、店長は何の用だね、と尋ねました。手袋を作っていただきたいのです、とか細い声が聞こえ、小さく戸が開きました。そこからにょきっと覗いた手を見て店長は吃驚仰天、慌てて、それ以上戸を開けないようにと言いつけました。それは世にも珍しい、五本指の人間の手、それも小さな子どもの手だったのです。
店長は姿を見られないように注意して手の寸法を測り、今までに無いような早業で、人間の子どもの手袋を仕上げました。ついでに、迷わずに人間の世界へ帰ることのできる道筋も教えてやりました。
お代は、と尋ねる子どもの声に、店長は一瞬考えて、記念の握手を頼むことにしました。




