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過去からの贈物
間違った駅に降り立ってしまった。仕方なく、新しい切符を購入しようとホームを眺めているときに、小さな駅には不釣り合いな、行列を見つけた。何か名店でもあるのかと近づいて見ると、行列の先にはひとつの公衆電話があるのみだった。何の変哲もない電話ボックスは古くさくて、その意味では珍しい。
「この電話では、過去の通話を聴けるんです。昔、この電話を使った人の会話を」
行列に並ぶ人が教えてくれる。
「それを知っている人は、一生に一度、親しい人に、ここから電話をかけるんですよ。そして、かけられた人は、その相手を懐かしく思ったとき、ここに来るんです」
過去から届けられる贈物なんですよ、と、その人は涙ぐんだ。