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迷宮掌編集  作者: tei
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ケモノは風を待つ

 ケモノは歩みを止めた。

 ポリ塩化ビニル製の生物形態は、自らの脳の働きにより、停止を判断したのだ。十一本の大パイプから成る彼の体躯は、それらを連結して稼働する小パイプとともに、整然と砂浜に(たたず)んでいる。

 風が止んだのだった。

 風の力に押されて長いこと旅を続けてきたケモノは久方ぶりに、本格的な停止を体験していた。彼の身体のどこにあると明言できない彼の脳は、旅の各場面を反芻(はんすう)し始める。

 風がこんなに長く止んだのは、最初のころ彼のそばに必ずいた、彼とは似ても似つかぬ生物と別れてから、初めてだ。その生物は、彼に風を送ったり、歩く彼のそばについて歩いたりした。彼はその生物のことを漠然と好んでいたのだが、気がついたときには、その生物は消えてしまっていた。

 ひとつの大パイプから伸びたふたつの小パイプを器用に使って歩く、その生物が、また彼の背中を押してくれるような気がして、海の果てを眺めながら、ケモノは不思議と幸せだった。

ストランドビーストから着想しています。

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