第19-2話 ニュースリリースができました
先日、ついに二人目の聖女が現れたという御触れが発表された。
肝心の聖女を選ぶ方法についてはまだ触れられなかったものの、どちらか一方が大聖女に決まるという点は明かされており、巷ではその話で持ちきりなのだという。
身分を隠して視察に行ったジャンの話によると、
「で? どっちがどっちなんだ?」
「名前が長くてわかんねーな」
「一人は平民で、一人はお貴族さまだって話は聞いたわよ」
「なら平民の方を応援しようかしらねえ。私たちのこともわかってくれそうだわ」
と、一般市民の反応は概ねコーデリアの予想通りだったらしい。
(でも、ひなが一般市民のことをわかってくれているなんて考えるのは大間違いよ……。あの子こそ、『パンがないならお菓子を食べればいいじゃない』マインドで生きている子なんだから)
ひなの実態を知らずに噂している人たちの事を思うと、乾いた笑いが出てしまう。
そんなコーデリアを回想から引き戻すように、アイザックが口を開いた。彼は彼で、日々密偵を使って貴族たちの動向を探ってくれているのだ。
「現状、まだほとんどの貴族が様子見を決め込んでいる状態だ。一部野心のある者たちは早々にヒナ派に回ったが、残りは条件次第でこちら側に引き込める可能性が高い」
「でしたらやはり、後は努力するのみですわね」
コーデリアは拳を握って気合を入れた。努力だったら、こちらには女神さまがくれたチートスキルがついている(はず)なのだ。
「それに、ヒナ派にはもう一つ弱点が存在している」
「弱点?」
アイザックの言葉にコーデリアが不思議そうに問い返す。
「聖女に決まった“後”だ。今は君という敵を前にヒナ派の貴族たちが団結しているが、仮に聖女がヒナ殿に決まった場合、味方だった貴族たちはあっという間に王位を奪い合う敵に変わるだろう。もちろん私たちにも言えたことではあるが、ヒナ派はさらに顕著。既に、牽制や腹の探り合いが行われていると聞く」
「うっ……。嫌ですわね、今の味方が後の敵かもというのは」
(そんな人たちに囲まれるひなも、大変そうですわ……)
聖獣が暴走した事件から一ヶ月ほど経つ。ひなは元気にしているのだろうか。最後に見た、呆然とした顔は未だ忘れられない。
「あの……殿下。つかぬことをお聞きしても?」
「何だ」
「ひなは、元気にしていますの?」
おずおずとその名を口に出すと、彼は一瞬面食らったようだった。それからゆっくりと口を開く。
「……調子は取り戻したみたいで、相変わらず元気そうではある。最近はラヴォリ伯爵家の嫡男といつも行動を共にしていると聞くが――会いに行くか?」
「あっいえ! お話だけで十分です。元気にしているならいいんですの」
コーデリアは慌てて手を振った。気にしておいて何だが、今ひなに会っても、何をどうすればいいのかさっぱりわからない。
(それにしてもラヴォリ家の嫡男……。ヒーローの立ち位置にいてもおかしくないはずなんだけど、全然思い出せないわ)
必死に記憶を探ってみるが、残念ながら何も情報がなかった。どこぞの陰気な男のように、後から追加されたタイプかもしれない。
(それより! 今は新聞を配る準備をしなくては)
二人目の聖女発表の流れに乗るため、今ケントニスとスフィーダの二社には大急ぎで配布の準備をしてもらっている。最初の告知新聞は王都のみの配布とは言え、部数を用意するだけでも結構大変なのだ。
(印刷をしてくださっている間に、私も早くあれを仕入れなければ。それをつけてこそ、完成ですものね)
コーデリアは早速、目的の物を仕入れるために出かける準備を始めた。




