表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/67

第12-1話 悪役令嬢、もとい、聖女

 多少土埃に塗れてはいたが、背筋をまっすぐ伸ばしたフェンリルは艶やかな毛並みをなびかせ、悠然とその場に佇んでいた。闇色だったはずの澱んだ瞳は消え去り、あるのは冴え冴えと澄み渡った、全てを見透かすかのような金色の瞳だけ。


 先ほどとは打って変わって神々しくなった姿に、その場の誰もがぽかんと我を忘れてフェンリルに見入る。


「いっ……!」


 静寂を打ち破るように聞こえてきたのはアイザックの声。

 どうやら他の人たちと同じく見惚れてしまった水魔法使いたちが、アイザックの治療を止めてしまったらしい。傷口からは再び勢いよく血が噴き出しており、水魔法使いたちが慌てて治療を再開している。


 フェンリルはその様子を見ながら、こっくりと首を傾げ、空気を震わせる低い声で言った。


『ほう……? 今世の聖女はお主か。なかなか気合の入った呼び出し方をするが、たまにはこういうのもありだろう』


(えっ? 誰に言っているのかしら?)


 周りを見渡してみても、皆は「お前だ」とでも言うようにコーデリアの方を黙って見つめるばかり。


(私? だとしたら見当違いですわよ。こちとら聖女どころか真逆の闇魔法使いなんですから)


 何やら盛大な勘違いをしているらしい聖獣に向かって、コーデリアはおほんと咳払いをした。失礼にならないよう、ドレスの土埃をパンパンとはたき落としてすっくと立ち上がる。


「あの……フェンリルさま」


 今のフェンリルには、思わず“さま”を付けずにはいられないような威厳があった。


「恐れながら、私ではありませんわ。聖女はあちら。私はただの闇魔法使いです」


 すっと手を掲げてひなを指し示せば、フェンリルの細長い面も、釣られるようにひなを見る。


 そのまましばしの時が流れ。


『……どうなっておる? 確かに言われてみれば彼の者に呼び起こされた記憶もあるが……しかしお主にも聖女の力が備わっているではないか』

「へっ!?」


 思わず変な声が出てしまった。


「な、何をおっしゃっていますの! さっきから言っているでしょう、私は闇魔法使いだと……」

『いいや、備わっている。試しにそこの小僧の怪我を治してみろ。できるはずだ』

「えっ!? そんなことできますの!?」


 すぐさまコーデリアはアイザックの元に飛びついた。治療の甲斐があって右腕の出血はやや控えめにはなっていたが、相変わらず止まる気配がない。


 その傷口にコーデリアは手を掲げ――再度フェンリルの方を見た。


「あの、やり方を教えて頂いても?」


 金色の瞳がめんどくさそうに歪められる。


『お主は今までどうやって魔法を使っていたのだ?』

「それは、えっと、体の中の魔力を手繰り寄せて……」

『ならそれをやればいい』


(んもう。だから、私は闇魔法しか使えないと先ほどから……あら?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆ 広報部出身の悪役令嬢ですが~ 12/28発売! ◆
広報部書影
― 新着の感想 ―
[一言] 闇属性魔法の真の特性は吸収で聖属性をドレインした、とか? それとも、元々魂辺りが持っていたのか… ひなの方は逆に闇っぽかったけど
[一言] Σ(・艸・*)エェ!! コーデリアも聖属性魔法使えるの?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ