【コント】魔王城の医者
医者「はぁ、魔王城の専門医になって五年かあ。そろそろサキュバスの看護師と一発できねえかなあ」
患者「ごめんくださあい」
医者「あ、スケルトンの山田さんこんにちは。今日はどうされましたか?」
スケ「最近ね地下で戦ってるとどうも背中とか腰が痛くてね。どうしちゃったのかなあって」
医者「そうなんですか。山田さんっておいくつでしたっけ」
スケ「356歳だよ」
医者「人の年齢にすると、88歳ですね。それは確かにおきついですね。他に変わったことありませんか?」
スケ「剣とか弓をね棚の上に置いてるんだけど、前は届いたのに最近は脚立使わないと届かなかったりね。あと、鍔迫り合いで骨にヒビが入ることが多くなったねえ」
医者「そうですか。いったんレントゲン取りましょう」
暗転
医者「レントゲンの結果ですね、おそらく骨粗しょう症です」
スケ「骨粗しょう症?!」
医者「ええ。この背骨のとこなんですがね、ぽっかり黒くなってるでしょ」
スケ「ほんとだ。これって?」
医者「穴ですね。外見はどこにも異常なしに見られるんですが、ちょうど背骨の……ここ、三つ目の関節部分。それと、腕もこれ竹のように空洞になってますよ」
スケ「た、竹かぁ。三か月後にまた勇者たちと戦う予定となんだけど」
医者「おそらく粉砕骨折ですね」
スケ「粉砕骨折?! それだけは何としても避けたい。どうにかできないかねえ」
医者「牛乳や煮干しを食べてください」
スケ「あのぉ、胃袋ないんだけど……」
医者「それは失敬。では応急処置ですが、石灰の投与をしましょう。美麗さん山田さんに石灰注射を……そしたら、石灰が完全に固まったか見るので、一週間後にまた来てください」
スケ「先生ありがとうね」
医者「はい。お大事になさってください。……デュラハンの鈴木さん。鈴木さん。一番室へどうぞ」
デュラ「ぶあっくしゅん! ……はぁ。こんにちはぁ」
医者「あ、こんにちは。今日もフルアーマーですね」
デュラ「そうですよ。デュラハンはいつどこでも戦闘ができるように心がけていますから」
医者「一度くらい脱いではどうですか? 鈴木さんの素顔見てみたいですし」
デュラ「はっくしゅん! ……やめてください、恥ずかしい。デュラハンはみんなシャイなんですから。素顔見せてなんていうのは、イスラム教の女性に、ニカーブを取ってっていうようなものですよ」
医者「そういうものなんですねぇ。……あれところで鈴木さん。今日はどういったことで?」
デュラ「今朝気づいたら頭が取れなくなってしまって」
医者「本当ですね。でもそもそも頭って取れてた方がいいんですか? 片手が塞がって邪魔だと思うんですけど」
デュラ「何言ってるんですか! 頭で片手を塞いで、片手で振れそうもない大剣を振り回して戦うというハンディキャップが、めちゃくちゃカッコいいじゃないですか! 頭の付いたデュラハンなんてね、毛布を持っていないライナスと同じですよ!」
医者「いや何言ってるかわからないですけど。とりあえず、異世界をスヌーピーのキャラで例えないでください。まぁ、それは置いといて。直近でどこかに出かけましたか?」
デュラ「へくしゅん! ズズ……昨日ジュラ砂漠に。魔王城に攻め込まれる前に、貧弱な冒険者たちを排除しようと思いましてね」
医者「バリサボテンがうっそうと茂る、あのジュラ砂漠ですか」
デュラ「ええ。何もしてないのに、俺の攻撃をかわそうとするだけで、グングニルくらい長い棘を持つバリサボテンに次々と串刺しにされる冒険者たちを見ると、とても不憫になりましたよ」
医者「しれっと胸糞悪いこと言わないで」
デュラ「俺も攻撃しようとしたんですけど、サボテンがうざったいから切り刻んでいたら、打ち上げた棘がめちゃくちゃ刺さっったんですよ。冒険者を倒すより、夜中家で棘を抜く方が時間かかりましたよ」
医者「なるほど。そしたら花粉症ですね」
デュラ「へ?」
医者「だから花粉症です」
デュラ「何が?」
医者「ですから、頭が取れなくなったのもバリサボテンアレルギーの花粉症です」
デュラ「ええ?! そうなの?」
医者「そうです。夏はバリサボテンの繁殖時期で、花粉が砂漠中に蔓延してるんですよ。ブタクサみたいなもんです」
デュラ「いやブタクサとは比べ物にならないと思うんですけど」
医者「あと人には害はないですけど、アンデット系は時々花粉症になる人がいますね」
デュラ「例えばどんな?」
医者「例えば、ヴァンパイアの高野さんだったら、血を飲むと吐き出しちゃうとか」
デュラ「ヴァンパイアなのに?!」
医者「グールの高橋さんだったら、この時期は人肉より野菜中心の生活です」
デュラ「ベジタリアンのグールとか聞いたことないぞ」
医者「とりあえず一か月薬を出しておくので、それで頭が取れない場合はまた来てください」
デュラ「分かりました。あと、くしゃみもひどいんですけど、これも花粉症ですか?」
医者「いえそれは夏風邪です」
デュラ「夏風邪かい!」