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俺を殺せる者はいるか!  作者: Tkayuki 冬至
第二章 狙われた女神の分身体達《ヒロイン達》
44/47

九十九篝は、一つと成る



 「―――――――むぅ………………ここは」



 九十九篝が目を覚ますとそこは、不思議な空間であった。


 例えるならば“宇宙空間”の様な場所。


 辺りに星々が輝く中、思わずビクッ!?とさせながら足元がない事に気付いた九十九。彼は頭の上にクエスチョンマークを幾つもの浮かび上がらせながらこの状況が何なのかを誰か教えてほしいと思った刹那、目の前に銀色の光が現れる。


 

 「な――――――」



 その銀色の光から現れたのは、黒騎士である。黒騎士は何故か――――――――コタツの中に入ってお茶を啜っていた。しかも兜を被ったまま……………どのような原理で啜っているのだろうか。



 「―――――――あ、お久しぶりです」


 「いや貴様、何故――――――」


 「立っているのもなんですから、コタツにどうぞ」


 「ぇ、ぁ、うん」



 意味不明な奴が、こんなよく分からない空間に、しかも何故かコタツがあることに――――――――とりあえず、九十九は考えるのを止めてコタツへ脚を入れる。



 「粗茶ですが」


 「……………うむ」


 「あ、煎餅ありますけど食べますか?それとも饅頭は――――」


 「おい」


 「ドーナッツですか?勿論ありますよ」


 「わーぃっ!ドーナッ…………………ゴホン。そうではない、何故貴様がいる、黒騎士」


 「黒騎士?何です、その厨ニ臭い名前。在り来りでつまらないですよ」


 「ごめ―――――――――ではないっ!!!」



 何故か黒騎士に流されかける九十九は、ただただこの現状を問い質す。黒騎士というイメージが脳内で崩壊しながら、九十九は最後に見た光景と状況を思い出していた。



 「さてさて。唐突ですが――――――――――先程まで居た世界は、崩壊しました(・・・・・・)。文字通り何もかも」


 「――――――――は?」


 「は?じゃないですよ。何もかも消滅しました(・・・・・・)。残ったのはボク達二人です。正確には――――――ボクだけ(・・・・)であり、君だけ(・・・)ですけどね」


 「意味がわからん。そもそも貴様は―――――――」


 「ボクの正体、ですよね。ちゃんと話します(・・・・・・・・)。ボクのこと、そしてボクが知る全て(・・・・・・・)を」



 そう言った黒騎士は、己の被っていた鎧の仮面を脱いだのだ。そして顕となったその素顔は――――――――――――――黒く煌めく骸骨の頭部であった。その空洞になった眼窩には揺らめく蒼き光が灯っている。



 「骸骨…………アンデットか。いや理性はあるからして―――――――」


 「あ、ごめんなさい。これ呪いみたい(・・・・・)なもの(・・・)で――――――――よっと!」



 本来の姿ではないらしく、黒騎士は己の身体から溢れ出す蒼きオーラを纏った刹那、蘇生したかの様に骸骨――――――骨だけの身体に肉体が蘇った。髪も爪も歯も、そして狐の耳(・・・)も。


 それこそが、黒騎士の真の姿。 


 しかし、その姿は九十九がよく知る姿であった。


 センター分けの少し長めの白髪に狐の耳を生やした、ある人物が(・・・・・)少し成長した姿(・・・・・・・)である。毛先は蒼っぽく、可愛いよりも綺麗や美しいという表現が似合う美人。今の九十九とは対照的な、礼儀正しくお人好しそうな雰囲気を漂う優しい姿――――――。



 「どう、いうことだ……………?」


 「無理もないですね。けれど、改めて――――――――はじめまして、もう一人のボク(・・・・・・・)



 黒騎士の正体は、紛れもなく少し成長した(・・・・・・)九十九篝(・・・・)であった。


 ドッペルゲンガー、と表現するには些か年齢と髪型に髪色が異なっている為に客観的には兄弟にも見えるだろう。しかし、二人は同一人物(・・・・)である。



 「オレ、なのか?」


 「はい。ボクも九十九篝です」


 「何故、いや、どういう…………」


 「順を追って説明しますね」



 黒騎士――――――大人の九十九は語る。


 本来は九十九篝は一人であった。


 しかし、幾つかのループをする際にそのループから抜け出そうと死ぬ直前に己の魂を(・・・・)二つに分けた(・・・・・・)のである。それをしようとしたのは、単なる検証だった。ループする心身。その魂が二つに分かれればどうなるか。片方はループし、もう片方はループから解き放たれるのか。


 結果は、片方がループすれば同じ魂の片割れもループしてしまう。その検証は分ったものの、問題が起こってしまった。


 二つに分かれた魂の片割れが、魂が分かれた事自体欠落していた(・・・・・・)のだ。加えて今までの記憶が断片的に消えている(・・・・・・・・・)


 その片割れこそが、九十九篝であった。


 しかし、その片割れはまるで洗脳された(・・・・・)かの様に疑問に思わなかった(・・・・・・・・・)逃げなかった(・・・・・・)使命かの様に(・・・・・・)ループを受け入れていたのだ。



 「―――――――と、いうより途中からゲーム感覚で攻略し始めたと思いきや次は戦闘狂になるなんて予想外でしたよ」


 「む、むぅ」


 「けれど、その戦闘狂が功を成しました。恐らくボクは兎も角、君は洗脳されにくい(・・・・・・・)んでしょうね。洗脳も中途半端な為にこんなおバカなことを――――」


 「バカだと?」


 「普通に考えればこの世界の“主人公的な存在()”を殺せば良いはずなのに――――――」


 「戯けが。それが解らぬからだろう」


 「……………………ああ、そうでしたか。忘れてるんでしたね黒幕の正体(・・・・・)


 「黒幕の正体、だと?」



 大人の九十九が放った言葉に、思わず訝しめる九十九。それもその筈、“主人公は別々”だ。それ故に“黒幕の正体”の意味が分からなかった。が、その思い当たる節はある。



 「ゼウス、か?」


 「違います。ゼウスでもテュポーンでも、女神でもない(・・・・・・)。ましてやあの怪物達でもない(・・・・・・・・・)


 「それでは――――――――」

 

 「黒幕の正体は――――――」



 大人な九十九がその先を言おうとした刹那、大人な九十九の背後から巨大な骸骨の頭部が現れたのだ。まるで漆黒の沼から這い出てきた身の毛がよだつ恐ろしいバケモノ。



 ―――――――嗚呼、ダメよ。それは(・・・)美しくないわ。綺麗な綺麗なアナタの煌めく黒き骸(美しい)姿を、魅せて。


 「っ、と。今はお止めください【オルクス(・・・・)】様。今は取り込み中で」



 更には巨大な両腕の腕を闇の沼から這い出てる骸骨は、声からして女性なのはわかる。更にはタダでさえ巨大だけではなくバケモノ地味た存在感と隠す気も微塵もない冷気の様に這い出す力は、流石の九十九も一筋ではいかないと瞬時に察してしまう程、戦慄をしていた。


 が、大人な九十九は顔色を変えず困った表情をしているだけ。その巨大な骸骨はその両手で壊れ物を扱う様に大人な九十九を包み込む。



 「【オルクス(・・・・)】、だと?」



 何処かで聞いた名だと九十九は思ったが、一方大人な九十九はそれどころではない。



 ―――――――嫌よ嫌よ。ワタシはそんな肉体がある(醜い)姿なんて見ていられないわ、耐えられないの。嗚呼、其処のは……………嗚呼、嗚呼、なんていうことなの。深く、深く眠っているけれどわかる。太陽の様な、それは…………けれど、アナタもアナタ(・・・・・・・)。もう一人のアナタ、紅蓮の様な骸なのかしら。嗚呼嗚呼、アナタの(美しい)姿が見たいわ。だって、アナタの片割れですもの。



 「止めてください、オルクス様」



 ――――――ッ!嗚呼嗚呼ごめんなさいッ!けれど、アナタのその姿見ていられないのッ!せめて、せめて右腕(・・)を…………。


 

 「……………わかりました」



 渋々といった感じに大人な九十九は己の右腕を掲げた刹那、纏っていた右腕の鎧が弾き飛び布一つ無い肌が露わとなってしまう。だが、肩に不吉な黒き炎の様な靄が灯ったかと思うとその右肩から右手に異変が起こる。


 一瞬だ。


 一瞬で、右肩から右手までその黒い靄に覆われたかと思えば大人な九十九の右腕が骨だけになっていたのである。しかし、頭部と同様に煌めく黒き骨。まるで黒曜石で彫刻された骨は美術館で飾られても誰も芸術の一言で済ましてしまう程の美しさ。だが同時に不気味さもあるのは確かである。



 「―――――――これでいいですか」


 ――――――――嗚呼、素晴らしいわ。アナタのその利き腕、惚れ惚れするほどにため息が出てしまう程美しい……………。


 「【オルクス】様、暫くそこに居てください。紹介しますので」


 ―――――――――えぇ、わかりましたとも。嗚呼楽しみだわ………………アナタが元の一つになる(・・・・・・・)瞬間を。



 そんな意味深な言葉を言いながら大人な九十九の後ろに上半身だけ漆黒の沼から這い出ている巨大骸骨。敵意は無いものの、不気味な雰囲気を九十九を警戒心を植え付けさせてしまう。



 「彼女は【オルクス】。“冥府の神”、その一柱です。彼女のお陰でボクは自由に行動できた恩人でもあるんですけど――――――」


 「恩人、なのかアレが」


 「はい。ボクが女神達に気付かれなかったのも、この鎧のお蔭ですから………………その代わり、装着時は【オルクス】様の加護で肉体を失い骨だけになるんですけどね」


 

 話を聞くに大人な九十九は、片割れになった時には何時もの場所ではなく身に覚えがない場所にポツンと立たされていた。その場所は、何処かの洞窟。ユラユラと霊気が漂う悪寒も追加に蔓延している場所であった。


 そして、目の前には巨大な骸骨が――――――――。



 「ほんと、怖かったんですから」


 「そ、そうか」


 「それが【オルクス】様だったんですけど」



 【オルクス】との唐突な戦闘になってしまったが―――――――大人九十九は、間一髪で勝利したのである。当時の九十九と戦力は変わらなかったが、相性的に【オルクス】を降した………のだが、【オルクス】は本気ではなかったらしく、その後彼女は大人九十九を己の領域に監禁した、とのこと。


 監禁中は、その領域内の影響か空腹にもならず更には眠気も無い。することが無かった為に【オルクス】と会話する中でゼウスやテュポーン、女神姉妹に怪物などの話を聞いたのだ。恐らく【オルクス】程の存在になるとかなりの情報を有しており、更にそれを探る為に条件付きで監禁から開放されたのだ。


 その条件こそが【オルクス】特製の鎧を常に纏い、更には【オルクス(彼女)】の加護を受け入れることであった。加えて四六時中背後からストーカーもされることも………………。

 


 「………………そうか」


 「君の所のヒノカグツチみたいなものですね。世界が崩壊しても寝ているみたいですけど……………」


 「基本、オレが女の時にしか反応はせん。例え世界が滅亡しようとな」


 「あ〜~~……………」


 

 ヒノカグツチにオルクス。


 両者共に桁外れな存在であり、九十九も大人な九十九にとって加護や祝福、寵愛、或いは――――――呪い。それを身に宿し、或いは寵愛された事はやはり同一人物だから故か。



 「して、一つに戻るとはなんだ」


 「簡潔に言うと、ここはボク達の精神世界。そして今現在、ボク達は元の一つに戻っている真っ最中なんです」


 「なに?」


 「元々ボク達は共鳴し(・・・)引き寄せられる(・・・・・・・)体質です。同一人物が故にですね。現に二度、ボクは君に引き寄せられてるんです」



 一度目はシャルロットとの闘技場。二度目は女神と成ったリベリアと皇との戦闘だ。どちらもヒロイン相手だが、基本九十九の精神状態に関係しているのだろう。大人な九十九曰く、最初は身体が暴走したらしくそれ以降は自制していたとのこと。だが、女神二柱相手の際は九十九の精神状態が狂い暴走していた。そのため、それを止める為にわざと引き寄せられたらしい。



 「――――――まあいい。で、黒幕は」


 「ボクも正体までは辿り着けませんでしたが、あくまで可能性として一つ」


 「むぅ、なんだ」


 「黒幕は、ボク達のこと(・・・・・・)を知っている(・・・・・・)


 「?何を当然な――――――」


 「前世の(・・・)、ですよ」


 「………………ほぅ」



 大人な九十九は、黒幕の正体は前世の自分達を知る存在。しかし、具体的には分からない。あくまでそう考え辿り着いたのは大人な九十九の一意見だ。しかし、彼にはあくまで可能性

――――――とは言ってはいるもののその言葉には確かな確信はあった。



 「何故?」


 「ま、一つになれば(・・・・・・)わかります(・・・・・)。ボクが黒幕だと思う人物に」


 「……………ふむ。では最後に質問だが――――――――オレと貴様。一つに成ればどうなる」


 「単なる足し算になるか、掛け算となるか。それはその時になればわかるでしょう」


 「力の問題ではない」


 「ああ、なるほど。それに関してはわかりません(・・・・・・)。ボクの内面になるか、君の内面になるか。或いは新たな人格が生まれるのかもしれません。ですが、君の中に眠る【ヒノカグツチ】、そしてボクを纏う(・・)【オルクス】様は必ず共にいるでしょうね。それこそ、身体の一部の様に」


 ―――――――嗚呼、嗚呼。当たり前よ。一つに成ったとしても共にいるわ。


 「…………………とのことです」


 「左様か」



 恐らくそれは確定事項なのだろう。それ以外の例外は認められない、というまさしく呪い。そして九十九と大人な九十九が一つに成るのだが、どうなるかは不明瞭。


 単なるバケモノに成り下がるか否か。



 「――――――なるようにしかならん、か。仕方があるまい」


 「理解が早くて助かるよ、もう一人のボク。と、時間は少ない(・・・・・・)様です」


 「ふんっ!どうやらその様だ(・・・・)。どうも外野が騒がしい(・・・・・・・)


 「流石に バレます(・・・・)よね」



 やはり精神世界。しかも大人な九十九の精神世界ではあるが、同時に九十九の精神世界でもある。2つに分かれた魂が一つになる状態が故に互いに外の世界からの雑音を感じ取れる。この事態(・・・・)は【神王】等からすれば予想外か。或いは――――――――。


 互いの身体が混じり合う中、大人な九十九は言う。



 「他にも色々ありますが、一つになれば自動的にわかります。ですが―――――――――」


 「なんだ」


 「お願いがあるんですよ」



 神妙な顔付きに九十九は、どうせ一つになるのに何のお願いがあるのかと疑問に思った。何か重要なのかと最後に聞こうとするのだが―――――――。



 「女性になってくれませんか?」


 「………………は?」


 「いえ、せめて一つになるなら男同士よりも相手が異性の方が気分的に」


 「いやオレだぞ」


 「正直に言いましょう。女性のボク、結構好みなんです」


 「はぁ?」



 どうやら大人な九十九は、九十九に女体化してほしいとのこと。一つに成るというのは別にそういう意(・・・・・)味ではなく(・・・・・)、単純に欠けたピースを埋め合わせるようなもの。   



 「ほらほらっ!」


 「…………む、やらんが?」


 「え……………っと、そう言うと思ってましたので―――――はいっ」


 「ぬ………………ぇ?」



 大人な九十九は指を鳴らした刹那、九十九はいつの間にか大人な九十九の膝の上に座っていた。しかも性別も変わり、女性となってしまっている。



 「まさか女体化したボクがこんなに――――――」


 「き、キサマ!気色悪いっ!ひっつくなッ!!!触るなぁっ!!!」


 「いいじゃないですか〜、だってボクですし」


 「いぎゃぁぁぁぁぁあ!!!」


 《誰だ、我が妻を手出しする輩は――――――》


 ――――――嗚呼嗚呼。女性の、もう一人のアナタも嘸かし(美しい)姿を―――――――。



 大人な九十九は、女体化した九十九を綺麗な容姿をしているのにも関わらず気色悪い位に抱き締めたりするなどをし、そして目覚めたヒノカグツチはその光景に怒り、オルクスは女体化した九十九の骸姿を想像しながらうっとりするという情報量が多い状況になってしまうのであった。


 だが、外部―――――つまり【神王】等はこの異常事態(・・・・)を捉え新たな問題として対処しているのであった。が、しかし【神王】等にとってこれも(・・・)嬉しい誤算であるのは九十九等は知る由もない。


次回の次回?には新章を予定です。


また、まだ出てないキャラとかその他諸々は?と疑問はあるかもですが出す予定です。

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