表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を殺せる者はいるか!  作者: Tkayuki 冬至
第二章 狙われた女神の分身体達《ヒロイン達》
40/47

傍観する者達



 "怪王テュポーン"の第四子『ヒュドラー』・第六子『エトン』による学園襲撃に加え、"怪王テュポーン"の第一子『スキュラ』・その右腕『カリブディス』による王宮潜入された事に国中が混乱の渦に巻かれていた。

 

 突如現れた巨大なモンスターが暴れればそうなるのも仕方がなかった。しかし、そんな騒動の中に九十九篝の自宅にいた黒猫は窓から見えるその騒動の様子を眺めている。しかし、だた眺めている訳ではなかった。



 「なんや騒がしいと思ったら……怪物等が暴れとるんやなぁ。あんたのお仲間さんもいるけど、帰らんの?」


 

 黒猫は問う。


 この世の終わりとも言えそうな景色の中、呑気にも身籠った身体を丸めながら、同じくこの景色を眺める子供へ訪ねたのだ。


 

 「………」


 「どっちに付くか(・・・・・・・)は、明白やと思ってたんやけど、悩んどるん」


 「だって、あんなこと(・・・・・)はなちゃれると…………わからなくて」


 「あぁ、そうか。まあ、神はそんな事(・・・・・・)関係ないけどなぁ。無論、わっちも含めて」



 本来ならば、あの戦いに隻腕の幼女―――――ネメアも参戦する筈だった。例え足手まといになるとしても。



 「ほんとう、なのでしゅか?」


 「わっちが嘘をつくとでも思ったんか?まあ、ええわ。事実や(・・・)。どうせアイツら(・・・・)が隠してるんか、或いは本当に知らん(・・・・・・)愚神のどっちかやろうなぁ」



 一欠伸した黒猫は、身籠った身体を起き上がらせると身体から闇夜の粉塵が身に纏う。まるで夜空の闇の様に、しかし微かに光り輝く小さな星々の様な輝きの中、その黒猫の真の姿を顕現す。


 黒髪おかっぱの美少女、赤い衣のドレスを纏い。しかし、そのお腹は大きく膨れていた。そのままテレビでも見るかの様にバケモノが暴れ、それを阻止せんとする者達の攻防をその目(・・・)で視ていた。



 「どっちが勝とうが負けようが、結果は同じ(・・・・・)や。この世界は(・・・・・)あの子の為に(・・・・・・)創られた(・・・・)仮想(・・)現実(・・)―――――しかし、こんな手間掛けてどうするやろ。どの勢力(・・・・)も狙ってるみたいやけど、ほぼどこに付いた(・・・・・・)のかは決まってるもんやし。他の勢力は引き剥がそう(・・・・・・)としてるんわ、みっともない。けれど、面白くない(・・・・・)なぁ。篝はんの身体に入り込む(・・・・)なんてなぁ。しかも『ヒノカグヅチ』を利用するなんて、正気の沙汰じゃないわ」



 そう不満を述べながら椿こと―――――――女神セクメトは己のお腹を撫でつつも、真の勝者は時分だと確信していた。無論、そう意味ではなく、性的な意味でだ。



 「まあでも…………篝はん(アレ)はわっちのもんや。ま、あの(・・)神王(・・)の女(・・)だけは許そっか。不本意やけど、篝はんを助けてくれたんやし…………不本意やけど」


 「この戦い(・・・・)は、どうなるのでちょう」


 「結局は、どの勢力も目的は共通してる(・・・・・・・・)んや。これは戦い(・・)争い(・・)やないで。神々――――――いや、【神王】等は裏で結託(・・・・)しておるんやさかい。これは【神王(アイツ)】等のお遊戯(・・・)―――――厳選なる育成(・・・・・・)や。篝はんもその内の一人(・・・・・・)…………【神王】達が生み出した幾つもの異なる世界で、強者を生み出す(・・・・・・・)


 「なんで――――――――」


 「これは全て茶番(・・・・)や。エキドナもプロメテウスも、七姉妹の女神達も――――――――――【神王】等に都合良く動かされてるだけやからなぁ。敵対していても、その両者の頭が結託(・・・・・・・)なんて、アンタらからすれば笑えへん話やろ」



 それを告げるセクメトは悪びれもせずに淡々と述べる。本当は気付かぬフリをするつもりだが、やはり彼女は【神王】と同等の存在。話す道中からどうでも良くなったのだろう。



 「とーさまは」


 「【神王(アイツ)】等がどう思ってるかなど、わっちがわかるわけないわ。けれど、篝はんの立場は危うい(・・・・・・)。と、言うよりもう手遅れ(・・・・・)。ご愁傷様やなぁ、篝はん―――――いや、わっちの旦那さんやけど」



 手遅れ。


 その言葉に、妙な焦燥感が生まれてしまうネメアは外の景色に目を向ける。



 「想定外やったんわ、篝はんが神の名を(・・・・)冠した(・・・)力を――――――――ま、そんなこと【神王(アイツ)】等からすれば嬉しい誤算(・・・・・)やろ。それに、こんなんまだ始まっても(・・・・・・・)ない(・・)わ。これは序章(・・)、プロローグ。これからどうなるか観ものやけど――――――」



 彼女のお腹が微かに蠢く。それは命の鼓動であり、ある意味一つの【未完成でありながら(人であり)究極生命体(神である)】の産声、或いはその顕現である。【神王】達が意図的(・・・)に生み出した“勇者”或いは“英雄”と称される者たちと同格の存在になるであろう、子。


 神でもなく、人でもない。


 しかし、神でもあり、人である。



 「――――――――わからない。わからないでしゅ。なんで、こんなこと」


 「まあ、わからんけど単なる(・・・)戦力増強(・・・・)か。或いは――――――それ程のナニか(・・・・・・・)。あぁ、そう言えばや。篝はんは、どれくらい生きた(・・・・・・・・)んや?しかも、問題はその種族(・・・・・・・)。しかも、その力の象徴―――――――――――――――即ち、“太陽”。それを示すは、“黄金”…………………………それの対比が、アンタ(・・・)なんかなぁ?」


 「ッ!?」



 まるで最初からわかっていた。そしてその様に扱う様に背後にいる(・・・・・)月の神の名(・・・・・)を冠する(・・・・)銀の黒騎士は音も無く立っていた。


 ネメアは、セクメトの言葉に初めてそこに黒騎士がいることを確認したが、気配は全くである。まるで、蜃気楼の如く何かの未練に囚われた幽霊の様に。顔を真っ青にしたネメアは戦闘態勢に入ることすら忘れ、ただこの状況は詰んだと錯覚してしまっていた。



 「……………」


 「怒ってるん?それとも、泣いてはるん?」


 「ボクはただ、あるべき元へ(・・・・・・)。その時がくるまで待つ。ボクが(・・・)ボクに戻る為に(・・・・・・・)


 「それはアンタ、単なる帰巣本能(・・・・)ちゃうん?」


 「そう、かもしれませんね。ですが女神セクメト。その子(・・・)をどうするもつもりで」


 「なぁんもせぇへんよ?でもまぁ、アンタもすごいわぁ。改めて実感するなぁ。“英雄”・“勇者”、そんなもんをこういう風に(・・・・・・)造るん(・・・)やから」



 ただ、面白そうな表情で――――――――――しかし、その目は確かに怒りが込められていた。しかし、両者ともに刃は交えずただただ外の景色に起こる惨状をその目で見届けようとするのであった。





 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます 更新されていたのを 最近知りました スミマセン 今後もどうかよろしくお願いします
[一言] 待っていたぞ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ