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俺を殺せる者はいるか!  作者: Tkayuki 冬至
第二章 狙われた女神の分身体達《ヒロイン達》
36/47

ヒロイン⑦は、狂い戦う

御待たせしました。





「……どうして、こんなことになったんだろう」



私───いや、僕トゥールは頭を抱えながらこの状況から逃げ出したい思いで一杯だ。


僕の横には───女性になったかつての旦那様である篝さんが。そして目の前には僕のお母様とお母様専属の使用人がニコニコと僕達二人を見ている。


だってそうだろう。


部屋に入ってきたと思えば、男である僕と女になった篝さん。つまり、男女二人で寝室にいたのだ。お母様は恐らく───と、いうか……その表情からして───。



「あらあらまあまあ……まさか、トゥールに彼女さんが出来るなんて」


「うぅ……トゥールお坊っちゃま。漸く、お坊っちゃまに春が……このメイ・ドー。感激でありますっ!」


「誤解だって!」



だけども、二人は完全に恥ずかしがって隠そうとしている様にしか見えないのだろう。でも、実際はそういう関係ではないのです。いや、確かに前の時は夫婦でしたけど……。


この発端は、僕を出迎えてくれたメイド達。篝さんを女性だと思ったんだろうね。メイドからすれば初めて女性を連れて帰宅したんだ。けどね、篝さんは男だよ?篝さんを女性と勘違いして……はぁ。



「くぅ……くぅ……」


「かがりさぁん……」



篝さんは、横で座ったまま爆睡中です。


なんで……なんでこの状況で寝れるんです?


しかも寝る前に「終われば起こせ」だって。


……これが、罰なのですか?


この状況、どーすればいいんです?


篝さんも篝さんで、女性になったせいか、着崩した服装のせいで目のやり場に困っちゃうし……どうしよぅ。



「その方のお名前はなんて言うのかしら?」


「えっと───」


「"ホムラ"だ」



……起きたのね、篝さん。


起きてるんなら何とか言ってよ、もぅ。



「ホムラちゃんね?」


「そうだ、王妃殿。誤解が無いように言っておくが、この王子とはそういう関係ではない」


「そう、なの?残念ねぇ……ホムラちゃんならトゥールの奥さんになってほしかったんだけど」


「他をあたるんだな」



相変わらずだね、篝さん。


てか、一応お母様は王妃だからあんまりそういう無礼な発言とか───って、気にしないか。むしろお母様、何となく篝さん気に入ってるなー。



「きっ、緊急ですッ!!!」


「何事ですか?」



突然、やってきたのは騎士の1人。


それも大慌てで、しかも血相をかいている。


何かがあったのだろうか……?



「現在、ウォルタガ大国に何者かによって襲撃を受けたとの報告です!!!」


「何ですって?」



ウォルタガ大国!?


この国にとって、敵国である大国だ。


しかも、あの火の神殿を破壊させ『原初の火』を目覚めさせた大罪人リュテーの祖国。そして何度かこの国と戦争して、更には篝さんを殺せる程の強者共が蔓延る国だ。



「さ、更には───ウォルタガ大国の将軍三人が、討たれたと」


「……将軍が、しかも三人ですか。何者ですか」


「そこまでは……」



ウォルタガには将軍が七人いる。そしてその上に君臨するのは大将軍。将軍については現在この国の監獄に捕らえられたリュテー。そしてウォルタガ大国には残り将軍は六名。その半分が撃ち取られたなんて……。



「国王には報告してますね?」


「はっ!」


「ですが、何故です?何故そんな情報が我が国に?情報があまりにも速すぎでは」


「そ、それが……ウォルタガ大国は、その襲撃をこの国のものだと判断されてしまい……」



ウォルタガ大国はこの国が先に戦争を仕掛けてきた、と。そう主張してきたと騎士は語った。それを言うなら、リュテーの事はどうなるんですか!?


何かしら理由をつけて、戦争を吹っ掛けてきたのがあの国だからそれほど驚きはしない。そんな理由で?とかそれこの国に関係無いのに……と言ったトンでもレベルで戦争をしてくるのがあの頭のおかしい国ウォルタガである。


けど……横に座る篝さんは目をキラキラさせながら騎士の話を聴いている……。初めて面白そうな表情を見たかも。新しい玩具を見つけた様な、そんな子供の様な……。



「……よし。その戦争、俺も参加しよう」



……こんな戦闘狂になったのは、僕達のせいなんだろうね。


何度も馬鹿な事をしたけど、それを後悔して絶望してもあの時には戻れない。どれだけ願おうと、祈ろうと意味はないんだ。


僕が出来るのは、篝さんの邪魔をしないこと。


ただそれだけなんだ。


だからこそ、篝さんが戦争に行くと言うなら止める事は出来ない……本当は辞めて欲しいけど。


せめて、願うなら───今は男として、篝さんの友達としてだけで十分。



「(おいトゥール。貴様の力で何とかならんか?)」



もー、胸押し付けないでー。


前が女だったのに、今男だからこういうのされるのは困るんですーーー!!!




▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼




ウォルタガ大国、南西区。


そこには何千人もの国の戦士達が大地に伏して、亡骸となって道を埋め尽くしていた。



「アハハハハハハハ♪副将軍さん、討ち取ったり~♪」



その屍の山の中心に左目を布で隠した1人の忍服を纏うくノ一が君臨していた。その両手には首が分かれたウォルタガ大国の副将軍の女が絶望した表情で絶命している。それを確認したくノ一は飽きた様にそこらに放り投げてしまう。



「将軍三人、副将軍八名……まだまだイケるでござるよ♪そろそろ大将軍辺り着ても良さそうでござるが……?」



まるでポイントを稼ぐ様な感覚で地位の高い人間を狙う姿は、勇ましい。だが、その全身返り血によって赤く染められた身体はまさしく悪魔そのものだ。血を求める狂人者そのものである。



「副将軍ッ!?キサマ───」


「何でござるか?」



想い人であった副将軍が斬首された事に激情に刈られた一人の男の戦士が鞘から剣を抜き、くノ一である『アヤメ』を殺そうとする。だが、既にその男の戦士の背後を取ったアヤメは躊躇無く、背中から腕を槍の様にして突き刺したのだ。



「ぐふっ!?」


「剣を抜いたからには、こうなる事も覚悟の上でござんしょう?」



胸から生えた手を引き抜いたアヤメは何も出来ずに倒れる男を見下ろしていた。そのアヤメの目は、正常ではないのは誰から見てもわかるものである。



「勝てる訳がないでござるよ。拙者、これでも拙者の中にいた(・・・・・・・)女神と名乗る者の(・・・・・・・・)()を手に入れたでござるからね」



女神の力。


それは、かつてアヤメ(分身体)の中にいた女神マイアの事である。アヤメは己の力と己の左目が隠された布の中にある"ある右目"によって、中にいた女神マイアの力を奪ったのだ。肝心の女神マイアは殺されたと言っても、力を奪われて仮死状態。目覚める事は難しいだろう。



「これが、女神の力(・・・・)でござるッ!!!」



未だにアヤメを殺そうとする戦士達。そして外壁に設置された防衛兵器である大砲や機関銃等の武器が一斉に撃ち込まれていくのだ。


爆撃に爆音、そして衝撃波。


一人の人間を殺す為に、過剰すぎると思える攻撃だ。しかし、相手が単なる人間であれば、の話である。



「そんなチンケなもので、殺せるとお思いでござるか?」



その瞬間、爆煙の中から飛び出す様に巨大な樹木が南西区を根を張る様にして侵食していったのだ。その巨大な樹木は建物と戦士達のみに牙を向く。


建物を壊し、そして戦士達の身体を拘束・或いは身体を貫いたのだ。しかし、そんな力でも回避し押し切って強引に突撃してくる。


しかし、そんな強き戦士達がいるのはアヤメ自身も理解していた。何度も何度も、戦った国。そして愛しい人を殺した者達がいるのだ。だからこそ、こんな巨大な樹木だけで収まる筈がない。



「拙者、魔法は(・・・)使えぬでござる……が」



アヤメは空中に指で描く。


魔法陣(ルーン)を。



その魔法陣(ルーン)は3つ描くと、そのまま魔力を流し込む。まるで電気が通った機械の様に魔法陣(ルーン)は輝きだしたのだ。


その3つの魔法陣(ルーン)から、炎・水・風が吐き出される様に敵を蹂躙していく。



「うそだろっ、『五大魔法』の内3つも───」


「そ、そんな───」


「バケモノ───」



戦士達の戦意は消失出来る程の無情な事実をつけられてしまう。『五大魔法』の一つだけではなく、三つまで有するのはこの国でも二名しかいない。その二名も文字通りアヤメ同様バケモノである為、それを相手するのがどういう意味かも理解していたのだ。


しかし、その反応にアヤメは溜め息をついてしまう。



「はぁ……これは魔法ではなく、"魔術"。『五大魔法』よりかは格が落ちるでござる。……ま、女神の力は単なる"魔術"でも"魔法"に迫る、ということでござろうな」



炎は、身体を焼き付くし。水は、息の根を止めさせ溺れさせる。そして風は、身体を切り裂き肉片と化す。


この場は既にアヤメの独壇場である。殺しに来る戦士達の命は、アヤメの意思で思いのままに奪い、消し去れる様な状態だ。


しかし、ここでそれを止める者が現れる。が、その者は鼻から止めようとは思っていない。



「まさか、将軍三人も殺すとは」


「(来たかっ!)」



その場に異様な存在感を放つ大男が現れる。


上半身半裸な身長2メートルを越える野生の獣を連想させる大男。鍛えられた肉体は、戦いに特化させている為、比較的筋肉ダルマよりかは細く絞られていた。



「アルカイオス将軍だ!」


「おぉっ!!!」


「これなら───」



アルカイオス。


その名を忘れる筈がない。


何せ、この大男こそが九十九篝を何度も殺したのだから。目の前で、この男に殺された事は忘れもしない。



「やはり、出てきたでござるな。アルカイオス」


「名を知るであるか。忍の小娘よ」



アルカイオスは身の丈と同等の巨大な大剣を無造作に振り下ろすと、辺りに侵食していった樹木を切り飛ばしたのだ。その技量はまさしく達人を越えた超越者。やはりこの国最強とされる一角だ。



「小娘、只で済むと思うなよ」


「お前だけは、ここで始末するでござるッ!!!」


「ハッ!やってみろ、であるッ!!!」



アヤメとアルカイオスが衝突する。


その激戦は、約半日費やす程の殺し合い。


南西区の建造物は、両者の戦う余波によって全壊してしまい大地を抉る程のクレーターを何個も生み出すものであった。


この出来事の中、アヤメは『不死身のアルカイオス』と同等に恐れられる『黒き悪魔』と呼ばれ、その名は直ぐに九十九篝の耳に届くのであった。



次回は……どうしよぅ?

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